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「低い」=thấp【湿】から連想するハノイの地勢

写真は、ハノイ市内のカウザイ公園(công viên Cầu Giấy)からの眺めだ。背後にはIT関連の新しいビルが建ち並ぶ。僕が勤め先からの帰り道に撮ったものだ(※現在はコロナの社会的隔離措置により出勤停止中)。

ハノイ市内には大小の湖(池・沼)が無数存在し、その由来は河川氾濫の名残りだということは、以前の記事に書いた通りである。
【ホン川の支川がハノイ付近で分かれることから、「○○デルタ」と呼ばれる経済圏の強みを考えた。】https://note.com/makinhanoi/n/n338a8692973

代表的なホアンキエム湖(Hồ Hoàn kiếm) にしかり、これら湖沼の周辺は公園が整備されることでキレイな景観がうまれ、憩いの場として市民の生活に潤いを与えている。

ところで、最近ベトナム語で”thấp”という言葉を知った。「低い」という意味だ。ベトナム語は漢字(漢越語)由来のものがあり、その漢字を知ることで意味を捉えやすいため、僕も気になる言葉は調べることがある。すると、”thấp”は【湿】だというではないか。反意語の"cao"(高い)の漢越語は【高】であるのに対して【湿】だとは面くらった。パターンからすれば、そのまま【低】の字に由来するのが自然かと思うのだが。もっとも、【低】を由来とするなら、発音も中国語や日本語の音読みに近いものなるので、例えば(勝手に作ると)"đỉ"とかが適当…

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水郷から水都へ

こちらの写真は、ハノイ市街地の西側を流れるトリッ川(Sông Tô Lịch)をカウザイ通り(Đường Cầu Giấy)の橋付近から下流側を望んだもの。注目すべきはその茶色い水質ではなく、鏡面のように空を映し出す流れのない川面だ。河口付近で見られる、潮汐の状況により海水が流れ込む汽水域の装いである。河口から100km以上も内陸でありながら標高は10m前後という低く平坦な地勢によるものだろうか(※)。

ホン川(Sông Hồng)三角州の始まりであるハノイ一帯の地域は、「低く」て「水が多く」て正に”thấp”【湿】の語がしっくりくる。

低湿地というと往々にして洪水、水害といったネガティブな特性が連想されるかもしれない。しかし、計画都市として乾いた高台に造られた「高みの見物」的なdryな都市ではなく、豊穣な農地に囲まれ、水運の便を擁したプレイヤーとして発展してきたwetな都市だからこそ今のハノイ(河内)の繁栄がある。水郷に築かれ、水都へと成長したハノイにとって”thấp”(低・湿)は必要な条件だったのだろう。

あくまで僕個人的なハナシではあるが、”thấp”の単語は、良い意味でハノイを思い起こさせるのである。


※トリッ川:衛星画像で確認すると、上流側はタイ湖(Hồ Tây)の南側辺りに端を発し、下流側は分流して一部はホン川に合流。ホン川合流手前に水門らしき構造物が確認できるため、水流の無さは、これが原因かとも考えらえる。規制解除で自由に行動できるようになったら、こういった箇所も視察したいと思う。

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