ただじっとしているだけでも 大粒の汗が噴き出してくる。 熟れすぎたフルーツのように 微かにすえたような香りを含む熱帯の空気は 煽情的で息をするのも苦しくなる。 汗に濡れた彼の筋肉が太陽に照らされ きらきらと輝いている。 彼の胸に頭を載せ太ももに脚を絡める。 インドネシア諸島に吹き込む貿易風が いつの間にかビーチコテージにも流れこんでくる。 一ミリの隙間もないくらいわたしの体を 密着させているにもかかわらず 愛し合った後の二人の体液が少しずつ乾き始め 気化熱が次第に
いつもの朝とは違った静寂とカーテンの隙間から覗く光の白さの中、僕は目覚める。夕べから降り始めた雪が積もったのだろう、と思う。 夜、雪になったことを喜んだ君は、隣でまだすやすやと寝息をたてながら眠っている。 ベッドの中は二人の体温で温められている。 しかし、君はもっと温まりたいのか…、横向きになって僕の脚に太ももから絡みついてくる。 僕もその柔らかい太ももを掴み、君を引き寄せる。そんなことを何度か繰り返しながらお互いの落ち着くポジションにたどり着く。君の頭頂部が僕の顎の下に収
駅のホームから眺める街の風景は、今まで見たこともないような紅い色に染まっていた。 それはまるで、画家が絵具の調合を間違え偶然発見されたような、画家の意図を超越したような紅い色だった。 画家はその紅い色を使って、画家のすべての情熱とともにその一瞬をカンバスに描きとる。その作品が世の中に出ることもなく、ひっそりと消えてゆく運命にあることを知りつつも。 わたしがあなたを最初に見かけたのは、駅の踏み切りの向こうに、真っ赤な夕日が沈みゆく時だった。 そのときのあなたは、大きなバッグ
間接照明がともるベッドの中で僕は君の上に重なり、肘で自分の体重を支え君をすっぽりと包みこんだまま、もう一時間以上は同じ体制でいる。 君は何度も達した後、定期的な震えを露わにし、僕にしがみつこうとする。ある時、それがフッと途切れたかと思うと、軽い寝息が僕の耳に届く。 君を起こさないように静かに僕の体制をほんの少しずらすと、シーツのこすれる音が際立つ。しかし、君は既に深い眠りについているようで、それくらいのことでは目を覚まさない。 オレンジ色の照明に照らされて眠る君の寝顔は、天
バスルームから出てくると、空調の冷気に包みこまれ生き返ったような気持ちになる。 ドレッサーの照明をつけ、セットされているCDをかけると、エリス・レジーナ・ジョビンのメローなボサノバが流れはじめた。 ショートバスローブの裾を開き、ベッドエンドのスツールの上に片方の足を乗せ、両手を使ってローズヒップローションを丹念に滑らせてゆく。 ローションで滑らかになった手の動きは、なんのためらいもなく、大きく円を描きながら太腿からヒップへと移動していく。そして再び太腿へと戻り、そのまま真っす
駅のホームで電車が来るのを待つ間、私は、サンダルから覗いている足の指を動かして、無意味に遊んでみる。ダークワインカラーのペディキュアが塗られているその指を見ていると、我ながらいい形だと思う。そして…、そうやって遊んでいるうちに、ついさっきまで彼と愛し合っていた光景が蘇ってくる。 彼も私の指がとても気に入っているようだ…。 ……、私の足はたっぷりと唾液をたたえた彼の口の中に包まれる。足の指に温かさを感じられる時なんてめったにない。指を広げられ、その唾液を絡ませた舌で指の股を丹念