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嵐の夜に

風は
あらゆるものと音を立てて騒いで
雨も仲間に付けて
恐怖を煽る

普段
外で暮らす愛犬も
玄関で待機

彼女もまた
恐怖とストレスとで
狂っていて
古い我が家の
ベニヤ板の壁を
ガシガシと前足で傷を入れ
ミシミシと
歯で噛みちぎっている

そうしたら
飼い主が
電気を点けて
自分の相手をしてくれると
思っているんだな

そんな心理に似た感覚が
その昔
自分にもあった気がして
ぼんやりとした記憶を
思い返す

子どもみたいなこと

未だにやってるし
むしろ
そっちに寄ってたりする

情けない

時々
客観視できるだけでも
マシかな?

巻き込んで
迷惑をかけてたら
ごめんなさい


夜、眠れないことが
度々あった幼少期

嵐の夜は
大人たちが
ろうそくに火を灯して
起きてくれていて
その暖かな光と
安心感の中で
ゆっくり眠れたりもした

水害の夜
あの日は、父も居た

祖父のお通夜の晩も
そうだった

怖い夜
悲しい夜なのに
安眠してしまう矛盾

そんな違和感にも
気付いていた

嵐より
孤独が怖かったんだ


連想も
想い出も
人それぞれ

それでも
感情の色や温度は
共有できることもあって

目を閉じれば
イメージの中では
一緒に
傍に居るような
そんな瞬間が
あったりする

そんなことを
考えながら
無音の朝を迎えて
少し
ほっとしたのは束の間

吹き返しの風で
裏の木々がまた
ざわめきだした

風もまた
寂しがり屋さんなのかもね

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