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祖父

私が1歳になる前
母方の
祖父母が
斜面地に
2世帯住宅を建てた

祖父母と
私たち家族とが
一緒に暮らせるように

母も
紆余曲折あって
一人娘だったし

父は
遠洋漁業の船に
乗っていたから

仕事に出ると
何ヵ月も帰って来ない

そういったこともあっての
ことだったんだと思う

父が居ない生活は
日常だったし

寂しいという感情も無くて

祖父が
穴埋めを
してくれていた

祖父は
大工だった

2世帯住宅は
某ハウスメーカーのもので
祖父が建てたわけでは無かったけど

庭の倉庫に
大工道具があって
時々
作業をしていることもあった

木材を
鉋・カンナで削ると
丸まった薄いカスが
出てきたり

墨壺から糸を張って
ピンと弾くと
木材に
黒い線が入る

そんな
いろんな道具や工程を
見ているのが楽しかった


散歩に行こうか

祖父と
手を繋いで
うちから
道路まで
階段を登って

近くのバス停の側にある
山崎商店へ行く

祖父は
店の外にある
自販機で
水色のパッケージの
煙草を買い

私は
店の中で
おやつを買ってもらう

煙草もだけど
お酒も好きだった祖父

ツマミは
フライビーンズ

祖父の部屋で
新聞紙を広げ

油紙のような
透け感のある薄い殻を剥く

私も真似するけど
殻が刺さったりして痛くて
上手く剥けない

祖父の
硬く無骨な指

フライビーンズと
同化して見えた

今思えば
アルコール依存症気味
だったんだと思う

祖母が
一升瓶を隠したり
水で薄めたりしていた

祖母との折り合いは悪く
間もなく離婚

そして
自らの命を
絶ってしまったけど

このあたりのことは 「闇」 に記しています


私にとっては
ただただ
優しい
大好きな
おじいちゃんだった

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