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㊱百貨店の醍醐味

(パリ クリスマス時期のプランタン)

「ティファニーで朝食を」の有名な冒頭のシーン。

朝帰りのタクシー、まだ街頭の消えない人気のない通り。
ニューヨーク老舗宝飾店ティファニーの前で降りる主人公。
背中の開いたブラックドレスには不釣り合いな紙袋から
コーヒーを取り出し、クロワッサンをかじる。
視線の先はジュエリーを並べたショーウインドウ・・・

私は、1980年代に社会人になり、
丸の内界隈や日本橋別館に通勤していましたので、
この往年の映画とは
シチュエーションと背景こそ違え、
昼休みもしくは終業後にのぞく日本橋界隈の百貨店は
無聊を慰めてくれる場所でした。

具体的に欲しいものがあって立ち寄っていた、というより、
四角いオフィスの中で一日の大部分を過ごしていた自分に、
ともすれば、しぼんでしまいそうな好奇心に
水を注いでもらいに行っていたように思います。

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(パリ ギャラリーラファイエットのクリスマスディスプレイ)

戦前、「今日は帝劇、明日は三越」という言葉があったそうで、
百貨店は衣食住、文化、娯楽の大きな発信地の一つでした。

三越さんの、上層階に劇場を持つ荘厳な店構えも好きでしたし、
高島屋さんの、当時4階にあった森瑶子さんプロデュースの、
彼女の審美眼にあったアクセサリーや小物を並べたMy collectionコーナーは
そう年に何回も渡航できなかった当時、
まさに異国情緒を垣間見せてくれる扉のような場所でした。

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(日本橋高島屋 森瑶子さんのマイ・コレクションで買って、
まだ大切に使っているオーガンジーのストール
My collectionのタグが付いています)

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(パリ ボン・マルシェのクリスマス ディスプレイ)

ロンドンのハロッズ、セルフリッジ、
パリの世界最古の百貨店ボン・マルシェ、
(その昔、遠方よりボン・マルシェに来る人のために建てられたという向かいのホテル・ルテシアも含めて)
ギャラリーラファイエット、プランタンに
在住者だった時も、時折訪れていたのは、
物欲というより
現地の生活・文化を感じたかったのだと思います。

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My collectionで購入した琥珀のチョーカー 今でも時々冬のセーターに合わせたりします。)

現在、自分が選んだものを、
かつて自分がインスピレーションをいただいた場所で
紹介できるのは感慨深いものがあります。

元々この仕事を志していたわけではなく、
偶然が重なって今に至っているわけですが、

百貨店という舞台で、
みずから選んだ商品の紹介役としてお客様と会話し
一人一人のお客様から
様々な人生や世界を垣間見せていただけるのも、
(どちらかというと大勢の中にいるのが苦手だった私にとって
なにやら不思議な気はしますが、)
この仕事のモチベーションの一つになっています。

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私も、出会ったお客様にちょっとした幸せをお届けできているのかな・・・
そんなことができていたら、とても嬉しいです。

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