(88)本物であること
私が扱っているリア・スタン他、刺繍アクセサリーのイマナパリさんもブローチのコピー品が出回っています。
(リア・スタンのブローチは後ろのV字の留め金に「LEA STEIN PARIS]の刻印が入っています。
刻印なし、もしくはLEA STEIN STYLEなどの別名称はリア・スタン ブランドの作品ではありません)
模倣品が出回るというのは知名度があがってきた証であり、それが売れるものと認知されたことにはなるのですが、情熱をかけ苦労した作り手からすれば、ショックで怒り心頭に発することです。
安価の似て非なるものは、時に本物を売上の面から凌駕することもあり、実際リア・スタンもボタンの大量のコピー品が出回り、一度会社が倒産に陥っています。
コピー品を法的に訴えることができるケースは別として、多くの場合モグラたたきゲームのように対処しきれません。
相手に注意喚起を促すよう直接コンタクトしたとしても、気持ちの良い解決方法が見つかるとも思えません。
作品を世に出すときの思いや姿勢が異なる相手とネガティブに対峙することも得策でないでしょう。
そこで考えるに、紹介者である私ができることは、
まずは作家の思いを丁寧に受け止め理解すること、
そして正しくその価値を紹介すること、です。
そこで考えるに、紹介者である私ができることは、
まずは作家の思いを丁寧に受け止め理解すること、
そして正しくその価値を紹介すること、です。
ある百貨店のフランス展でリア・スタンの妖精のブローチを見つけ、吸い込まれるようにブースにいらしたお客様がいらっしゃいました。
前日に上の写真のブローチの可愛らしさに惹かれ思わず購入したそうです。
が、翌日本物の妖精のブローチを目にして、本来は更に美しく意匠性があるのだと知り、この写真の配色違いの作品をご購入、すっかりリア・スタンファンになってくれました。
ただ単に伝えるだけでなく、その作品の時代背景、そのジャンルの作家の位置づけと個性を正しい語彙で美しく紹介することが肝要であり、努力のし甲斐があり個性の出しどころだと思っています。
リア・スタンを紹介するにあたっては、まずは彼らが生まれた1930年代、アールデコの時代をおさらいし、コスチューム・ジュエリーの資料を集めることから始めました。
催事でのディスプレイのこだわりや紹介冊子を制作したのもその志からです。
歴史・時事の知識に厚みを持たせること、語彙を増やすことをはじめ、私自身が心身ともに健康であること等々、課題はたくさんありますが、「紹介者として本物になること」も、この仕事においてのモチベーションになっています。
本日の追記 (78)母のこと
今日は母の92回目の誕生日でした。
なんやかやで日を改めて会いに行くことになりましたが、あと何回お祝いすることができるのだろうという考えがよぎるだけで、いい歳をして涙があふれてきます。
コップに水が半分はいっているとして、「半分しかない」と捉えるよりは、「半分も入っている」ことにフォーカスし、そこからなんとかしようとする性分は、両親に深い健全な愛情で育ててもらったお陰だと感謝しています。
その世代の人の持つ母性なのか、母自身の個性なのか、とにもかくにも無条件に見守っていてくれた存在があったことは、私を性善説の極楽トンボで居続けさせてくれました。
あるがままに物事や人を受け入れ、(時に傷つくことがあっても)私の人生の幅を広げてくれました。
私を必要としてくれる人に、仕事であれ人としてであれ、この鷹揚さを包容力という形に昇華していけたら、それがきっと母も望む「母に報いること」なのだと思っています。