(70)みつばちマーヤの羽
先週、カリメロのブローチをご紹介しましたので、このタイミングで「みつばちマーヤ」のブローチもご紹介しておきますね。
リア・スタンが版権を取得してブローチにしました。
「みつばちマーヤの冒険」は、原作はドイツの作家ワルデマル・ボンゼルスによるものですが、アニメーションは実は日本発。
1975年に制作され44カ国語に吹き替えられて世界中で放映されました。
好奇心旺盛で行動的、冒険の後に自分の使命を見つけるマーヤの個性は、幼い頃お転婆だったリア自身のものでもあります。
ブランド「リア・スタン」は、大人も子供も大好きなこのキャラクターの制作を多いに楽しみました。
先週ご紹介したカリメロのブローチは、白い卵と黒い身体、という基本の配色に留まらず、オレンジ・ブルー・黄色様々な色遊びを試みています。
一方マーヤは、全体はオレンジのトーンに揃え、キャラクターのイメージは崩していません。
ただ、よく見ていただくとわかるのですが、羽の部分は白地のものと、レースを織り込んだ透明なものの2パターンあります。
口の開き方と押さえ方も一つ一つ微妙に異なります。
手仕事ならではの個性の出方ですね。
以前サロン・デュ・ショコラで、蜂蜜を使ったショコラを紹介していたパティシエにも気に入っていただきました。
今もつけていてくれるかしら。
大人がキャラクターのブローチをつけるのは、彼のように理由がないと難しいと思い、それほど多くの数を買い付けたことはありませんでした。
が、これまた意外、みつばちがキリスト教図像学において、活動力や勤勉さ、労働や秩序の象徴であることからお気に召していただき、ご購入いただいたことがあります。同様に、蜜がキリストの象徴であることから、みつばちは聖母マリアの象徴になるそうで、クリスチャンの方にお求めいただいたこともあります。
この写真は、リア・スタンのみつばちのブローチ。
みつばちはナポレオンの紋章にもなっています。
みつばちが上記の象徴であることを踏まえて、良い統治者になるという強い意志の下選ばれたものと言われています。
着目していただいた理由も勿論ですが、やはりブローチそのものが意匠を凝らしてあるという要因も大きいと思います。
(下の写真は、同じく、ある会社のノベルティグッズとして制作を依頼されたマーヤのブローチ)
リアと夫フェルナンは素材選びに非常にこだわりがあるのはお話ししてきましたが、特に羽を持つ、蝶・妖精など、空中を飛んでいる羽の質感を出すために、相当の試行錯誤を繰り返してきました。
この妖精のブローチの羽の部分は、セルロースアセテートに敢えて色素を混ぜることはせず、透明な板状にして間にレースを織り込んでいます。
ふわふわと儚げであったり、好奇心旺盛に元気に空を飛びまわったり、何パターンものレースでそれぞれの個性を出しています。
4枚の羽を持つ「移り気な妖精」と名付けられたブローチ。
確かに、あちこち気分のままに飛んでいってしまいそう。(笑)
比較してみると、2枚羽の妖精の方は、物思いにふけりながら宙を漂っているように見えてくるのは不思議ですね。
以前、リアとの娘キャロルと、出張で長い時間を一緒に過ごした時、キャロルが苦笑しながら話してくれたことがあります。
「フェルナン・スタンという人は天才なの。リア・スタンがデザインした作品をイメージ通り形にする根気と技術を持っている。
でも、その為に、機械を次々と買ってしまって、私達家族は振り回されたけどね(笑)」、と。
1950年代から黙々とアトリエで素材と向き合い、一つの道を究めてきたフェルナンにはやはり一家言あります。
「ずっと同じ穴を掘り続けていると、ある時、ふっと金をみつけることができるんだ」
「命ある限り作り続けたい。なぜなら『作ることは』美しいから」
by Ferenad
色も形も持たない感動のエネルギーを、デザインの中に落とし込めるリア。
それを具象化できるフェルナン。
泣き笑いの二人三脚の結晶が、今、ファンの胸元にドキドキとワクワクを届けてくれています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?