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草食系男子に教えられたこと
運命の恋だった。
彼の物静かで、何を考えているのか分からないところに魅かれた。
私が「付き合って」と言えば、彼はこくりと頷いてくれた。幸せだった。
恋は、男女が手をとりあって踊るダンスだという。
ならばあの恋はポールダンスだった。
動かない彼のまわりをひたすら一人で踊る、哀しい道化。
一人で笑い、一人で怒り、一人で泣き、やがて疲弊した。
別れを切り出したのは半年後、昼下がりのカフェで。
彼はサンドイッチと珈琲、私はアールグレイ。
別れましょう、と言えば、彼はこくりと頷いた。告白したときと同じように。
私は両手で顔を覆い、彼に質問をした。
「あなたは今、何を考えているの?」
彼はサンドイッチを見つめ、こう答えた。
「何も……。そういえばサンドイッチって、サンドイッチ伯爵が作ったからサンドイッチっていうらしいよ。知ってた?」
草食系男子に教えられたことはいくつかある。
一人相撲の空しさ、癒えぬ傷心、自分の愚かさ、そしてサンドイッチを作ったのは、サンドイッチ伯爵。
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