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Photo by
15aya
宝くじ魔法学校
男はなけなしの三千円を握りしめ、冬空の下を千鳥足で歩いていた。
『これで宝くじでも買うか』
ギャンブルと酒に頭まで浸り、一攫千金のことしか考えられない。
ふと路傍の電信柱に赤いチラシがみえた。
そこには『宝くじ魔法学校 入學生募集中! 魔法を学んであなたも高額当選! 授業料は寿命の半分のみ』と書かれており、チラシの下半分には奇妙な手形が描かれていた。
男は高額当選の文字にひきよせられるようにその手形に自分の手を重ねた。
眩い光が自身を包んだかと思うと、異空間に投げ出されていた。
だだっ広い空間に山高帽をかぶった魔法使いのおばさんがおり、
「入學希望者ですね。確認いたします」と男の額に手をかざした。
急な展開に目を白黒させる男をよそに、おばさんは額から何かを読み取るように目を瞑った。
「むむむ。これはいけない。あなたは入學できません」
「なぜだ」
「あなたの寿命はあと一日です。これでは等価交換になりませんので」
気がつくと男はもとの電信柱の前に佇んでいた。すっかり酔いもさめた顔で茫然として。
手には握りしめた三千円。
『……温かいものでも食うか』
男は冬空の中に消えていった。
雪が降りだしそうな、そんな空だった。
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