【毎週ショートショートnote】戦国時代の自動操縦
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加します。
【戦国時代の自動操縦】
……まさに合戦といえるだろう。
口の中で『酸っぱさ』と『カラさ』が戦をしている。
トムヤンクンというのは、恐ろしい食べ物だ。
ひとくち食べると頬がこけるほどの酸っぱさに殴られる。
そして、同時に猛烈なカラさが舌をやく。
酸っぱさとカラさのスパークリングだ。
なんだ、これは!?
なんなんだ、これは!?
味なんて分からん。
食べ物のくせに刺激しか感じない。
嚥下すると、変なせきが出て、止まらない。
顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。
ゴホゴホゴホ……。
むせていると「ハイ、コレ水ネ」とタイ人のおっちゃんが嬉しそうに水を差しだしてきた。
……くそ。よんでいたな。
口内の合戦はこいつに自動操縦されていたわけか。
思い通りになるのはしゃくに触るが、今はそんなことを言っている場合じゃない。
むしりとるようにグラスをとり、俺は一気にそれを飲み干した。