コロナじゃなかったけど震えて過ごしてワクチン打つことを決めた話
8月1日の未明にいきなり39.5度の熱が出た。
それはもう、なんの予兆も前触れ(たとえば喉の痛みとか)もなく、気づいたら体中に痛みが走っていて、高熱で意識が飛び、通常10秒の場所にある自宅トイレに行くのに15分かかる始末。
このご時世、高熱の原因として考えられるのは……まさか……。
39度を超える高熱でスマホを持つのもツラい。が、頭の中は大渋滞だ。幸い仕事関係者への取材やオフラインでの打ち合わせはしばらく入っていないし、ここ2週間は対面取材もしていない。濃厚接触者にあたる人がいるとすれば、同居家族のみ。
とはいえまずはどうしたら……保健所に連絡?発熱外来?治るの?死ぬの?頭痛い、気持ち悪い、体痛い、どこかに原稿送り忘れてないっけ?味覚や嗅覚は?現金って自宅にあったよね?食料や水は?てか体中が熱い、気分悪い。水しか飲めない。
とにかくその日は眠れる限り寝て、目が覚めるたびに体温を測り、買い置きしていたもも味やなし味のいろはすを飲む。普通の水でなくフレーバー付きにこだわったのは、味覚と嗅覚をチェックするため。目覚めるごとにありえない量の汗をかいていたので着替えてまた寝る。何度もそれを繰り返す。体が痛い。もう終わった、詰んだ。いろはす美味しい。
8月2日(発熱から2日目)
あれ?体が軽い。少し頭痛はあるけど熱はかなり下がっている模様。子どもの頃から発熱しやすかったので、自分の体温はほぼ正確に当てることができる。大体今は37度2分くらい。体温計の数字もビンゴ。でも、一晩でここまで熱が下がることなんてある?咳は一切出ていないし、もも味となし味の違いも認識可能。体の痛みは軽減したけど、その分嫌な倦怠感がある。
高熱でうなされる状態ではなくなったので、ベッドの上に置いたノートPCでコロナの病状を調べ、YouTubeで罹患経験のある有名人の動画をチェックし、ツイッターで自宅療養者の方の書き込みを読む。
と、これが調べれば調べるほど不安が増す作業。
コロナウイルスは発症日に他者への感染力がもっとも強くなるらしいのだけど、約2週間から1日といわれる潜伏期間中も人に移す可能性がないわけではない。高熱が出た8月1日と翌2日は同居家族とも顔を合わせず、すべて連絡はLINE。トイレ以外、自室からも出ていない。が、発症前は家族と食事のシェアも普通にしている。ということは、知らない間に移しているかもしれない。自分が外出したから……どうしよう、申し訳ない、本当にごめんなさい(号泣)。
YouTubeは石井正則さんの動画がとにかく怖かった。前日まで都から届いたインスタント麺やお菓子を食べられていたのに、急に呼吸が浅くなり熱が上がる、そして救急搬送。参考になったのはかまいたちさんの動画。人一倍感染症対策をしていた濱家さんの入院体験談(有料と無料の違い)と、山内さんの自宅療養記。急変して入院になる人(石井さん)もいれば、大事に至らず自宅療養から復活できる人(山内さん)もいる。
このウィルスが怖いのは、数時間前まで自力で歩行できていた人が、突然、会話もできないレベルの肺炎を起こす可能性があること。全然他人事じゃない。自分も今は普通に呼吸ができているけれど、1度眠ったらもう目を覚まさないかもしれないし、急に息ができなくなるかもしれない。どうしよう、何の準備もできてないよ。怖い。死ぬのか?死なないとしても何らかの後遺症が?仕事は?それより知らないうちに誰かに移していたら……(号泣)。
8月3日(発熱から3日目、PCR検査実施)
さらに熱は下がって36度8分に。変わらず倦怠感と少しの頭痛はあるものの、他は異常なし。発熱外来として診療している徒歩1分の内科が診てくれるというのでシャワーを浴びたのちに検査へ向かう(HPで調べ、直接電話で体調を話して予約)。
待合室ではなく、処置室で問診票を書き、熱(36度8分)とパルスオキシメータで血中酸素濃度を測ったのちに(96%)医師の診察。発熱時の状況を話し、聴診器をあてられた後でPCR検査。わたしの場合は唾液採取型。レモンと梅干の絵を一緒に渡されたけど、頭がぼーっとし、想像力も低下しているのでただの赤い丸と黄色いラグビーボールにしか見えず苦心する。検体を渡し、一応熱ざましの薬の処方箋をもらって終了。会計はトータルで約2000円(PCR検査費は無料)。
PCR検査の結果が陽性ならば保健所から電話があり、陰性ならば受診した内科クリニックが連絡をくれるとのこと。ただ、保健所は業務が殺到しており、検査翌日に連絡をするのは厳しいかも、と看護師さん。先生も看護師さんも防護服を着ての診察なのに、優しく接してくれて泣きそうになる。てか多分泣いてた。診察対応していただけたこと、本当にありがたい。
8月4日(発熱から4日目、検査結果=陰性)
熱は36度6分。昨日の受診後、速攻ネットで購入したパルスオキシメータで血中酸素濃度を計る。97%、問題なし。自宅に買い置きしていた冷凍食品やフルーツゼリーで食事をとり、コロナの情報収集。が、不安しかない。
何度も言うが、このウィルスは罹患した人間によって「無症状」から「死亡」まで、とんでもない振り幅を見せるし、急変の事例もかなりの数報告されている。体力が落ちた状態でいろいろ調べていると、かまいたちの濱家さんが語っていたのと同じく、自分が世の中の流れからはじき出されたような焦燥感に襲われる。オリンピックで湧く世間と自分が置かれた状況が同じ世界線で起きている出来事とは思えない。落ち込む。
午後イチで携帯に知らない番号から入電。覚悟を決めて出る。「〇〇内科です、昨日のPCR検査の結果はネガティブ=陰性です」え?マジで?39.5度の発熱から3日目に検査しているので、偽陰性の可能性は非常に低いとのこと。が、今後またすぐ発熱したり、激しい咳が出るようなら電話連絡の上、受診してください、と看護師さん(orスタッフの女性)。
一気に体中の力が抜ける。すぐに陰性だったと家族に報告。はああ……これで自宅キッチンで料理ができる。いやいや、違う、そんなことはどうでもいい。なにより家族や友人にウィルスを渡してしまった可能性が消えた(仕事関係の人とは発熱の2週間前からリアル対面していない)。窓から見える世界の色がもう違う。膝から力が抜ける。それまでとは違う味の涙が出た。
その後、最大限オブ最大限の大事を取って、仕事を調整し、8月13日の午後まで自主的に自宅待機。郵送での民間PCR検査の陰性&体調に変化がないことを再三確認して13日の夜から外出を再開した。1日に発熱→3日の病院PCR検査で陰性の結果が出ていたので、本来そこまでする必要はないのだが、とにかくいろんなことが怖かった。
そしてこの謎の発熱事件(?)をきっかけに、それまで迷っていたワクチン接種を一刻も早く進めようと決意する。
わたしがワクチンの早期接種に踏み切れなかった1番の理由が血栓。ちょっとした既往症があるため、万が一、ワクチンが原因で血栓が出て身体に悪影響があったら最悪……という不安が頭にずっとあったのだ。
が、謎の高熱から病院でのPCR陰性結果が出るまでの4日間、メンタルが本当にヤバかった。罹患してしまった方たちの肉体的、精神的な苦痛に比べたら、アホみたいなレベルの話だが、それでも陰性結果が出るまでは毎日泣いていたし、最悪の状況も覚悟した。陽性だったら、同居家族が濃厚接触者となり、14日間、自宅待機者にさせてしまうことも重くのしかかった。
(って、今、自分のSNSをさかのぼったら、何一つ今回の件には触れておらず、メンタルクソ弱いくせにその弱さを見せることを良しとしない変な性格を再認識してちょっと笑った)。
そんなこんなで、もっとも早い段階の予約ができ、土日も接種可能な世田谷区の接種会場=楽天の枠をWebで取って、先日、第1回目の接種に行ってきた。
二子玉川の楽天クリムゾンタワー内で行われるワクチン接種は、良い意味で非常にシステマティック。導線や列の振り分けなど、スタッフさんの仕切りでサクサク進むし、おそらく楽天社員と思われる人たちも「こんにちわー」「お疲れさまでしたー」と声をかけてくれ、疑問や不安点などはその場にいる医師にすぐ質問できる。
で、気になる副反応
もともと、すぐ熱を出し喉風邪をひきやすい&注射関係で反応が出やすい体質ということもあり、接種当日の夜から左腕の強い痛みと倦怠感、37度3分程度の発熱もあった。完全に元の体調に戻ったのは接種から4日後の朝。1回目でこれだから、2回目はどんな副反応が起きるのか正直怖くはあるし、血栓の件が自分の中で完全にクリアになったかというとそうでもない。
だが、だが
いつ急変するかも肺炎を起こすかもわからず、「死」を意識しながら1秒1秒を過ごすあの精神的恐怖と比べたら、現状、この判断がベターだったと思う。
最後に
これはあくまでも、血栓のリスクからワクチンの早期接種に踏み切れなかったわたし個人が、リスクとベネフィットを天秤にかけ、ワクチン接種したよ……という話。誰かにそれを強く勧めたり、現状、打たないと決めている人に対して意見を述べる文章ではないことを書いておきたい。ワクチン接種の有無を決めるのは誰でもない、自分自身だ。
また、万が一、発熱等の症状があった場合に備えて、水やスポーツ&ゼリー飲料、フルーツゼリー、冷食など体調を崩しても食べられるものを常備することと、自宅から公共交通機関を使わず行ける「発熱外来」の病院やクリニックをあらかじめ何軒かピックアップしておくのは大事。今、入手が難しくなってはいるが、パルスオキシメータや10秒くらいで計れる高性能の体温計もできれば自宅に置いておきたい。
それにしても、8月1日にたった1日だけ出た高熱はなんだったのか。今は勝手に、何かのサインだったのかも、とぼんやり考えている。
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