【映画紹介】怖い怖い、サユリが怖い。
と思っていたら、×××××がもっと怖い!
ほとばしる憎しみを活力に変えて、生命力を高みにまで至らせる。Jホラーの新境地にして、究極の人間讃歌。
2024年8月23日(金)公開[R-15] / 監督:白石晃士/原作:押切蓮介
漫画【サユリ(完全版)】を原作とした、実写ホラー映画【サユリ】。
本予告を見た方は承知の通り、見てない方はそのまま映画へと直行してほしい、ただのホラーでは終わらせない極上のサプライズが待ち受ける作品。
※以下より、内容に触れる記述ありのため注意
【監督】白石晃士×【原作】押切蓮介
名前を見ただけで、想定内にはいかない作品だと予感をさせるタッグ。それでいて、ホラーにおいては、抜群の恐怖を用意してくるだろう。という安心感を抱かせてくるのが、このお二人。
なぜといえば二人とも、ガチガチのホラーを手がけることにも、人ならざる者を打ち潰すことにも長けている。いわば、怪異に対する応戦特化型。幽霊が現れたからといって、ただで転ぶはずもない。
原作を読めばなるほど、白石監督がこの作品を、自分の手で撮らねばとなる心境にも頷ける。きっと、心の工藤がバットぶん回しで暴れたことだろう。
なにせ、サユリではお婆ちゃんが覚醒するのだから。
サユリによる一家惨殺からの、復讐劇への反転。
「祓って済ませるつもりはねぇ、
地獄送りにしてやるんじゃ!」
怨霊の理不尽な勝ち逃げばかりに悶々としている方、二人が開いてくれた入り口へと、さあ今。
映画の恐怖×原作の恐怖
舞台は中古の一軒家。
入居者がすぐに出ていくという曰くあり気な家に越してきた神木家の七人家族は、そこに取り憑く怨霊によって、一人、また一人と殺されていく。
構成に関しては、映画も原作も違いはなく、サユリによるどん底の恐怖と、覚醒したお婆ちゃんによる救済という二段構え。しかし、恐怖パートに関しては、漫画と映画、土俵が違うからこその演出の違いが多く出ている。
映画は目で見て分かりやすい恐怖が多く、殺害されるまでの追い詰められ方が、ひどく痛くて生々しい。一方で漫画は、目で見えない部分の恐怖が強く、サユリの手にかかった魂が死後も嬲られ苦しんでいると知り、精神的な苦しさが残る。
どちらが良いというのはなく、どちらも良い。
映画化にあたり設定の一部改変はあれど、映画と漫画、それぞれが求められる部分を補完しあうような噛み合わせの良さがあるため、ぜひ、両作品とも目を通してみてほしいところ。
大丈夫、恐怖が上塗りされても、お婆ちゃんが助けてくれますから。
節、留まらぬ
ただ本作に関して、白石監督の節が強く出ているなと思わせるシーンもなくはなく。ラストでの対峙は、観る人によって「ん?」となりそうな演出。……分かりにくく例えれば、実写のゾン100でサメが出てきた時の心模様。
そのため、予習が必要な作品ではないけれど、白石監督作品の『オカルトの森へようこそ』か『カルト』あたりを観ておくと、ラストへの心構えはできるかもしれない。
あの演出を良さと捉えるか否かは、クエンティン・タランティーノ監督作での会話劇をどう捉えるかぐらいに難しいものがある。
ただ、怯まないでいただきたい。
サユリを観てほしい気持ちに変わりはなく、もっといえば、この作品を機に、白石監督作品にももっと触れてもらえるようになったら万々歳。
手始めに、『コワすぎ!』シリーズなんてどうでしょう?
命を濃く
観終われば、己の内側に祖母魂が宿っていること請け合いの本作。そこでは一体、どのような復讐劇が待ち構えているのか。それはぜひ、理不尽な恐怖を乗り越えた先で確認してみてください。
そして叫びましょう。
元気はつらつ、××××××××!!
ありがとうございました。