祈りを込めた罪の告白【怪談・怖い話】
この話は真実の出来事である。
数十年前、この町には古くからの施設があり、そこには人智を超えた恐ろしいものが潜んでいた。施設の中には「あってはならないもの」が2つあり、町の英雄とも言うべき精霊者が早期の処理を提言したが、祟りは後世に残されてしまった。
歳月が流れ、町の役員がその呪われた施設に関わると、次々と不運に見舞われるようになった。ヒトラーの生誕地であるオーストリア・ブラウナウ市に類する禍根を持つ施設だった。我が父は、先達の言葉を胸に刻み、祟りを解くことを決意した。
「祖母ができなかったことで自分に縁が回ってきた。後世に残すわけにはいかない。自分がすべきことをしなければならない」
彼は町の有力者として、まず1つの呪物を撤去することに成功した。しかし、もう1つの恐るべきものが残されたままだった。
禍根を残した罪の代償
そして今年、遂に最後の呪物が処理されることとなった。ところが執拗な抗議があり、歴史的価値があるとの主張から、呪物が広報に掲載されかねない事態に陥った。ツァラトゥストラが予言した「超人」の出現を待ち望む者たちの陰謀か。それとも、単なる無知から生じた怪しげな動きなのか。
「執念のなせる業で、撤去されないよう手を回してきたのだろう」父は気づいていた。
そして、ある役員が呪物の写真を撮影していたことが判明した。撮影者本人は記憶にないものの、負のデータが家から出くわしたのだ。
写真の内容は壮絶なものだった。木造建築の室内からは、外の木々が見え、呪物そのものを隠すように描写されていたのだ。しかし、ある違和感があった。部屋の奥に恨めしげな女性の亡霊が佇んでいたのだ。まるで、撮影者へ接近し、世界を破壊しようとしているかのようだった。
「あんなものは、この世界から抹消しなければならない」父は言った。そうか、この写真はただの心霊写真などではなく、本物の厄災の証しだったのだ。悪魔の子孫が生み出した禍根であり、人類を滅ぼすに足る脅威だったのだろう。
呪物は燃やされ、恐ろしい写真も処分された。しかし、これで本当に祟りが払われたのだろうか。もしかすると、この町に新たな呪縛が生まれているのかもしれない。
燃やされた呪物の跡に、新たな異変が起きていた。今度は自然界からの恐るべき反撃だった。
町を見渡せば、あちこちに奇怪な出来事が起きていた。
ペストの大流行のように、見えざるウィルスの蔓延が疑われた。ある農家では、家畜が次々と突然死を遂げた。肉体は正常だが、内臓が溶けて無残な有り様だった。別の家では、年がら年中、地獄の雷鳴が鳴り響いた。電子機器はすべてパニックを起こし、家族は精神を蝕まれていった。
さらに奇怪な出来事もあった。大気のみが突然発火して、人々は息を潜めるしか無かった。井戸水やプールの水が凍り付き、青銅器時代のように炎で沸かす必要が出てきた。夜になれば、月が赤銅色に輝き、血の彗星が東の地平を翻弄した。
町の至る所に、正体不明の現象が次々と発生した。これは単なる自然の摂理の反発なのだろうか。はたまた、呪いの最期の呻きなのだろうか。町の人々は自ら招いた罰に畏怖していた。
人類は自然と対立すれば勝てない。これは、われわれが教訓として学ばなければならない真理であろう。呪われた施設の事件は、まさに時代の鏡と言えるだろう。我々は、英知を持って自然と調和し、不当な欲望や無益な行為を慎むべきなのかもしれない。
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