信州は私に新鮮な食材のおいしさを教えてくれた(飯山市)(伊那市)
ちょうど6年前の今頃、私は千葉から信州へやってきた。幼い頃から親の仕事の都合で全国各地を転々としてきたが、信州には一度も住んだことがない。縁もゆかりもない土地だ。
フリーランスになって間もなく「関東を拠点にしなくても仕事はできるな」と思い、移住計画を立てた。その当時、スキーにはまっていたことから信州が有力候補に。そして最終的に、白馬にも行きやすい松本市を選んだ。
じつは移住先の候補地には、飯山市や今住んでいる伊那市も入っていた。それでも松本市を選んだのは、都内へのアクセスがよく観光地として人気の高い松本市に住むほうが、仕事の面でなにかと都合がいいだろうと思っていたからだ。
なぜ当初、私は飯山市や伊那市を移住先の候補に入れていたのか。今振り返ってみると、そのふたつの街を訪れた際に胃袋を捕まれたからなのではと思う。
白米と雪中キャベツ@飯山市
信州の食に初めて衝撃を受けたのは、2010年1月に豪雪地帯の飯山市で食べた、白米とメインの付け合わせの雪中キャベツだった。何という名前のレストランだったか、何の料理だったかは思い出せないけど、ほぼ新米&炊き立てでツヤツヤの白米、瑞々しくて歯ごたえと甘味のあるキャベツの味わいは思い出せる。当時は会社員として忙しなく働いていてコンビニ食が多かったから、なおさら新鮮な食材のおいしさが際立ったんだろう。
地酒と地元食材を使った欧風料理@伊那市
次に衝撃を受けたのは、2014年10月に伊那市の山小屋で開催されたイベントに参加したときだった。イベントの主旨は、山小屋に1泊しながら、「信濃錦」という麓の酒蔵の地酒と、地元の料理人たちが地元食材で作る料理を味わおうというもの。たしかその夜、7種類くらいの日本酒を飲み比べたと思う。どれもが身体のなかにスッと染み込んでいくような飲みやすさだった。次々と目の前に現れる地元食材を使った料理のおいしさとも相まってグイグイ飲み進めてしまい、普段ほぼ酒を飲まない私は即ノックアウト。そのおかげで記憶が曖昧ではあるけれど、伊那市は食の豊かな地域だという印象は私のなかで強烈に残った。
信州へ移住した当初は、直売所に旬の食材がずらりと並んでいたり、知人から野菜をもらったりするたびに感動していた。でも6年も経つと、新鮮な食材がすぐそばにあるというこの恵まれた環境に慣れつつある自分がいる。
極楽とんぼの加藤浩次さんが山本圭壱さんのテレビ復帰の際に訴えた「当たり前じゃねえからな!」という言葉を脳内で反芻しながら、目の前の一皿を味わっていきたい。