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#26 海の男たち -コーチン

※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです

コーチン観光で一番面白かったのは、チャイニーズ・フィッシング・ネット。(その昔、中国系の移民がこの漁法を伝えたため、こう呼ばれているらしい)

初日にリキシャをチャーターして観光した時は、ベスト・スポットに連れて行ってもらい、遠巻きに眺めて写真を撮ったけれど、それだけでは飽き足らず、翌日、再度自分で訪れてもっと近くで見ることにした。漁業は朝早くが肝心!と、なんとなく思ったので、張り切って早朝から、ボートに乗ってチャイニーズ・フィッシング・ネットが並ぶフォート・コーチンに渡った。

ネットがずらりと並ぶエリアまで歩いていくと、予想以上に近くで見られることが判明。とあるフィッシング・ネットの近くに、人だかりができていた。インド人の男たちばかりで、女の人が一人もいないのがちょっと気になったけれど…、朝だし、近くにはお土産屋も沢山あるし、まあ大丈夫だろうと判断して、近づいてみた。そこでは、採れたばかりの魚の解体ショーのようことをやっていた。

魚というか、巨大なウナギのような、生き物。
それを丸太で作った柱からつるし、ちょうど皮をはいでいるところ。真っ黒に焼けた漁師の一人が、巧みに小刀を使いながら「ふんぬっ!」と腰に力を入れて、皮を引っ張り剥がしていく。
その様子に釘づけになり、人だかりをどんどんかき分けて夢中で写真を撮っているわたしに、周囲のインド人たちも道をあけてくれた。皮を剥がれたウナギ?は、その場で切り分けられて、売られていった。

さらに別のフィッシング・ネットを見に行った時、漁師の一人が盛んに手招きしていた。近づいていくと、網をつるしている木組みの所まで登って来い、という。
高所恐怖症のわたしが恐る恐る登っていくと、魚を採る様子が一番よく見える場所を示して座らせてくれた。(足がぞわぞわして、2分と座っていられなかったけれど) そして、網にかかった魚を釣り上げる様子を間近で見せてくれた。それから、わたしのカメラを奪い、いっぱい写真も撮ってくれた。採れたての魚の網を持たされて、まるで自分が釣ったかのように自慢気に掲げている写真とか。

最後にわたしが「あなた達の写真を撮らせ」というと、「OK!でも俺たちへのHELPを忘れずにな!」と返事が返ってきた。

来た来た、やっぱり。
写真を撮り終わって帰ろうとすると、先ほどの漁師が「俺たち6人いるから、600ルピー」と言ってきた。
とりあえず「Too Expensive!」と答えるわたし。すると、「じゃあ6人で分けられるように300ルピー!」。

これで300ルピーは高いはず、でも面白い体験ができたし、まぁそれくらいならいいか。
そう思ったのに、お財布を見ると100ルピー札は1枚しか無く、あとは500ルピーばかり。まさかここで「おつり下さい」て訳にもいかないし、さっき「600ルピーは高いよ!」と言ったばかりだし…
とっさに120ルピーを出して「6人で分けられるでしょ!」と言って渡すと、海の男たちは「Small Money!」と言いつつも「確かに!」と言って、ガハハハと豪快に笑って受け取った。

インドに来てから10日あまり。
こういうやりとりにも大分慣れてきた。こんな風にあけっぴろげだと、全然悪い気分にはならなかった。

網をいったん沈めて、少し経ってから…網を引き上げる
採れたての何かをさばいていた


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