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#62 再挑戦 ビジャリカ-2

※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです

本当は、ビジャリカ登山を終えた翌日には、プコンを出てサンチアゴへ行く予定だった。けれども、どうしても諦めきれない。迷ったのは一瞬のこと、「もう一回チャレンジしよう」という心はすぐに決まった。

やると決めたからには、今度こそ悔いの無いように。今度は、宿のツアーではなく、自分の足で旅行会社を10軒近く回って検討した。今回申し込んだ旅行会社も前日の夕方から説明会をしてくれた。この時、単なる説明だけでなく、翌日の登山で着るウェアとトレッキングシューズの試着もさせてくれて、各々が自分の用具を確保することができた。

わたしは、サイズ違いの靴を三つほど慎重に比べてから、そのうちの一つを選んだ。
各自選んだモノを他人のモノと間違えないように、ラベルに名前を書いて貼るように指示されたので、わたしも大きく自分の名前を書いて、「今度こそ頼むよ!」と思いを込めた。

翌日も8時過ぎに登山口に到着。 まだ陽は登っていない。
わずか4日間の間に、二回もここに来ることになろうとは。
体調は万全。昨日慎重に選んだ靴はしっかりとフィットして、わたしを支えてくれた。リュックを少しでも軽くするために、今回は栄養補給のバナナはやめて、ナッツとレーズン、チョコを持ってきた。

朝陽と同時に登り始めてリズムをつかみ始めた頃、突然、他の登山者と一緒に登ってくる一人のガイドが目に入った。前回、わたしを含む途中下山組のグループを率いてくれたガイドだった。「うわっ、会いたくない…」と内心つぶやき、顔をそらした。

実は前日の説明会の折、皆で簡単な自己紹介をした時、「登山の経験は?」と聞かれて、わたしは「初めて」と答えていたのだ。もちろん「今回こそは絶対に登頂達成!」と強く思っていたけれど、前回のことを思うとできる確信はなく、万一達成できなかった時のことを思うと、安っぽい見栄が邪魔して「二度目です」とは言えなかった…

今回は、前回とは違う色のウェアを着ているし(旅行会社ごとにウェアの色は違っていた)、サングラスも掛けているから気づかれないだろうと思ったら、彼の方から「MAKI!」と言って手を振って、近づいて来た。二度目のチャレンジのわたしに「Crazy!」と叫ぶ彼。自信も無いくせに、わたしは「I can do it!」と答えていた。

氷の斜面に入ってからは、トレッキングシューズにアイゼンをつけて、ジグザグに登って行く。
さすがに息が上がり始めたけれど、前回と明らかに違うのは、「もうダメだ、これ以上歩けない…」と思う前の”腹八文目”くらいの所で、ガイドが休憩を指示してくれたことだ。「まだ動く体力がある」と思える所でエネルギー補給と休息を取れたことが、限界ギリギリの所にいるわけじゃない自分を実感できて、自信に繋がった。

頂上に達するまでの登り約4時間。
もうもうと煙を吹きだす火口が見えて「ここが頂上だ」と言われた時、「え? もう着いたの…??」と本気で思った。体力限界で登頂する自分を想像していたのに、なんとあっけない。この時アドレナリンがMAXに出ていたわたしは、見栄でも虚勢でもなく「この倍くらいは登れる」と本気で思った。

頂上には、件のガイドも既に着いていた。わたしを見つけると駆け寄ってきて、ギュッと抱きしめられた。今度はわたしも逃げることなく、「I did it!」と笑顔で応えた。

やればできるということを自分に証明してあげたいという、ほんの些細な意地とプライド。そのおかげで、山の魅力を少し理解することができたような気がした。

早朝に登山口まで登るリフト
アイゼンをつけると「いよいよ!」と身が引き締まる
先を行くグループをにらんで、自分を鼓舞する
途中の休憩で、持ってきたサンドイッチにかぶりついた
頂上が見えてきた!
頂上からの風景
火口から中をのぞけるかと期待していたけれど、煙と臭いがひどくて無理だった…
下山はプレートを使って豪快にシリ滑り!
頂上まで導いてくれたシューズ

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