#98 Welcome to France!
※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです
いつか試してみようと思っていたAirbnb。
フランスのモンペリエに行った時、初めて利用してみた。登録や予約の作業は思った以上に簡単で、ホストとの間で予約が確定すると、詳しい行き方などの連絡がくる。
モンペリエで選んだホストのアパートはオールド・タウンの中心にある教会のすぐ近くで、ちょっとした名所にもなっているリアルなだまし絵のウォール・アートが施された建物からもすぐ。◯×通りから□△通りに入って、突き当たりにある大きな赤い扉が目印の建物。「これだけの情報があれば、いくら人一倍の方向音痴を誇るわたしでも、行けばすぐに見つかるだろう」とタカをくくっていた。
ところが、ところが、簡単に見つかるはずだった赤い扉、それらしきモノがなかなか見つからない…。同じところを何度かグルグル歩いた挙句、古びた赤い扉がようやく見つかった。ホストが事前に送ってくれたメッセージの場所と、やや位置関係が違うような気もしたけれど、とりあえずチャイムを鳴らしてみる。すぐに鍵を開けてくれたので、中に入って、事前に聞いていたエレベータの無い四階まで汗だくになりながら、重たい80リットルのキャリーケースを引きずり上げた。
目的の部屋の前までようやくたどり着いて、再びチャイムを押した。すぐに若い青年が出てきたので「トーマス(ホストの名前)ですか?」と聞くと、「違うよ。トーマスは二階の部屋じゃないかな」と教えてくれた。そして「その大きな荷物はここに置いて行ったらいいよ」と親切に。ホストが書いて送ってくれたメッセージには確かに「四階」と書かれていたのに、それが間違っているなんてことがあるかなぁ…? 首を傾げながらも、少し身軽になって、二階まで降りてチャイムを鳴らしてみた(幸いにも、このアパートはワン・フロアに一部屋しか無かった)。
ここでもすぐに男性が出てきて「トーマスは上の部屋だと思うな」と。さすがのわたしも何かおかしいと思いつつ、今度は三階に移動してチャイムを鳴らすと、反応なし…。
困り果てながら最初の四階の部屋に戻ると、またさっきの青年が「トーマスはいた?」とすぐに出てきてくれた。わたしがAirbnbのホストを探しているという事情を話すと「電話番号はわかる?」。
万が一の時のためにと、ホストのトーマスが教えてくれていた番号を見せると、すぐに電話をかけてくれた。ちょっと話して切った後、「君のホストはこのアパートじゃないよ」「このアパートにもトーマスがいるからね」と笑顔。それからわたしの重たいキャリーケースを下まで運んでくれた上、ホストのアパートまで送ってくれた。
正しいアパートの前には、ホストのトーマスが立っていて、わたしを出迎えてくれた。
あぁ、ここだったのか…。確かに聞いていた位置関係の通りで、目立つ赤い扉があった。
本物のトーマスにわたしを届け終えると、送ってくれた青年は「Welcome to France!」と素敵な笑顔と握手を残して、颯爽と立ち去って行った。