#28 弟たち₋1 -アレッピー
※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです
アレッピー滞在中、インドに来て2週間めにして、はじめてひどくお腹を壊してしまった。考えてみれば、これまでの2週間よく無事に乗り切ってきたと思う。おまけになぜだか38度近い熱まで出てきて「ついにマラリア? それともデング熱?」と本気で疑った。
幸い、バックウォーターツアーもビーチ観光も終えた後だったので、次の目的地ハンピに移動する前に休息をとることにした。ほぼ一日中部屋に引きこもり、ベッドとトイレを何度も往復…。食欲は全くなかったけれど、熱とお腹の状況を考えると水分だけは欠かす訳にいかず、飲み物を買うためにフラフラと部屋を出た。
このゲストハウスに来て、既に5日目を迎えていたので、強面(コワモテ)のオーナー達にも大分慣れて来た。ここのオーナーは20代半ばの若い二人のインド人。さらに彼らが雇っている弟分を加えて、三人で切り盛りしていた。わたしがチェックインした日、わたし以外にお客は居なかった。
「インド人の男所帯に一人で泊まって大丈夫…?」と正直不安になり、久しぶりに警戒アンテナがピンっと
立ったけれど、このゲストハウス自体がとても明るくキレイで、見た瞬間に好きになってしまったのと、わたしの頼りない直感が「ここならきっと大丈夫」と告げていたので、それを信じることにした。(ちなみに滞在3日目以降は、続々とお客が来るようになり、毎日部屋は満室だった)
それにしても、最初の数日間のわたしは、相当、感じ悪かったに違いない。一階のロビーのようなスペースにはソファが置かれていて、セキュリティの面から、必ずオーナーの誰かが座っていた。わたしが、観光や散歩、買い物から帰ってくると、いつも軽くあいさつをしたあとに、「良かったら座って」とソファを勧めてくれたのに、わたしときたら「結構です。部屋に戻りたいんで」と身もフタも無い断り方。だってここは”悪名高きインド”。簡単に気を許してはいけないインドなんだから。
そんなわたしが、チェックアウトを予定していた日に「熱があるので、もう一日泊まりたい」と告げると、オーナーの一人がえらく心配してくれて、「病院に行きたくなったら、いつでもバイクで連れていくから!」と何度も言ってくれたり、飲み物しか飲んでいないわたしに「何か食べたくなったら買ってくるよ」と声をかけてくれた。
結局、熱は二日ほどで下がった。マラリアorデング熱の疑いは晴れて、病院のお世話になることも無かった。けれどもこれを機に、彼らに対する心構えと態度を反省したわたしは、勧められたソファに座るようになり、ツタナイ英語でポツポツと会話をするようになった。
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