#67 ワイナポトシ登頂記-3
※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです
2日目、今日はハイ・キャンプ(標高約5,200m)までの移動。
朝起きてみると、前日の膨満感は大分良くなっていて、朝ごはんもしっかりと食べることができた。(この日の朝ごはんに出されたフルーツサラダが、この登山ツアーの食事の中で一番おいしかった…)
この日の移動は、わたしにとって最初の難関。
道はゴロゴロとした砂利や岩場の道だけれども大して急ではなく、時間も3時間程度と聞いていたので、登山と言うよりトレッキングに近く、それほどキツくはないはず。問題は荷物の量だ。
この日はラパスから持ってきた物を全てハイ・キャンプまで運ばなくてはならない。プラスチック・ブーツやアイゼン、ヘルメット、ピッケル、3日目に使う小さ目のバックパック等々で、おそらく15Kg近く(以上?)はあったと思う。普段からバックパックを背負っている人にしてみたら、いつもと変わらない荷物で足場の悪い道を歩くだけのことなのだけど、普段コロコロ付きキャリー・ケースで移動しているわたしには、肩が壊れるんじゃないかと思うほどキツかった…
できる限り荷物を軽くしようと考え、暑いのを我慢してインナーのフリースやウエアを着こんでしまったので、暑くて、重くて、痛くてたまらない。気を抜くとバックパックの重さに負けて後ろに倒れそうになるので、それを防ぐために腰から45度くらい前に傾いて歩く。そのせいで逆にツンのめりそうになることもしばしばだった。
わたしがあまりにゼーハー言いながら皆よりも遅れて歩いているので、見かねたガイドが「ポーターを雇うか? 100ボリビアーノ(日本円に換算して約1,400円)」と何度も言ってくる。その度に大きく心は揺れたけれど、「No!」と言って振り切った。
ハイ・キャンプ直前にある急な登りの岩場まで来た時には、もうガイドにすらおいて行かれてしまい、わたし一人になっていた。(途中までは、最後尾に必ず一人のガイドがついていた)
「もしもここでわたしが足を踏み外したりしたらどうなるんだろう…」などと考えながら、最後の力を振り絞っていると、上から「もうひと息! ガンバレ!」とマツノスケ君が声をかけてくれて、なんとかたどり着くことができた。
着いてしまえば苦しかった道のりも意外と早く忘れるもので、今日の夜中からアタックを始めるワイナポトシの頂上に思いを馳せた。登頂に備えて早めの夕食を食べた後には、みな思い思いの時間を過ごしていた。
「今、体調は悪くないけど、もしかしたら明日には高山病の症状がひどくて登頂できないかもしれない」
「ここがわたしの最高地点かもしれない」
そう思って、この風景を目に焼き付けて、何枚も写真を撮った。
言葉の通じる日本人がいるとついつい弱音を吐いてしまうけれど、「大丈夫! できると思えばできますから!!」と常にポジティブに励ましてくれるマツノスケ君がいたので、これから先、わたしの弱音は胸にしまっておこうと心に決めた。