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#8 ランプーンとの日々₋1

※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです

旅を始めた当初、ラオスに来るつもりは全くなかった。

ところが、タイで出会った日本人の何人もがラオスを目指していたことと、バンコクからチェンマイまで大急ぎで移動してきたので、このままミャンマーに向かってしまうと、”決められた予定をこなす旅”になってしまう気がして、なんとなく味気ないのがイヤだった。「だったら評判の良さそうなラオスに行ってみようか」ということで、まずはルアンパバーンに向かった。

ルアンパバーンはラオスの北部に位置する古都。

ここから入った人は、バンビエンを通って首都のビエンチャン、さらに南に向かう場合はパクセーへ、というのがこれまで聞いてきた人たちの話の中で、ほぼ王道のようだ。

タイのチェンマイからスロー・ボートでメコン川の国境を越えてルアンパバーンにたどり着き、その後ビエンチャンまでやってきたわたしは、さて、この先どうしよう?とひと息。そこで、以前ネットで見かけた旅行記で、カンボジアとの国境近くにシーパンドン(または4000 islands)と呼ばれるメコン川に浮かぶ小さな島々のリゾートがあることを思い出した。このラオスで、もう少し気ままさに身をゆだねてみるのも悪くないな…と次の目的地をそこに決めた。

例によってほぼ予習はないまま、どのくらい滞在するかはとりあえず行ってから考えよう、とラオスの首都ビエンチャンからバスに乗り、パクセーまで順調にたどり着き、ナーカサンからシーパンドンの中のデット島に向かうボートのチケットを買って、他のバックパッカー達と一緒に乗り込んだ。ボートはわたしたちバックパッカーとともに、床には旅人の大きなリュックを満載に詰め込んで、ゆるゆるとメコン川へと漕ぎ出した。

このボートがデット島よりも先にコーン島に泊まったとき、他のバックパッカー達がみんな降りはじめたので、ひとまずわたしも一緒に降りてみた。そのまま人の流れに乗ってついて行こうとすると、一人ボートに残っていた女性から「ここはデット島じゃないから戻って来て!」と大きな声(英語)で呼びかけられた。

戻って来てー!と言われても、すでにボートは岸を離れていて追いつける状態ではなかったし、ここまで一緒に来た他のバックパッカー達は、全員こちらの島で降りてしまったのだ。つい最近の経験からわたしは、「不案内な場所では、バックパッカー達のあとについて行くのが一番安全」という大きな教訓を得ていた。当初はデッド島まで行って宿を探すつもりだったけれど、ここは予定外でも、コーン島の方がおそらく宿探しはしやすいはず、と甚だ頼りないわたしのカンは囁いていた。

ところが、みんなが降りてしまったせいでボートに一人残された女性が、ボートが既に岸からも離れつつあるにもかかわらず、あまりにも必死に叫んだためか、その迫力におされた船頭は進行方向をかえて、再び川岸までボートをこぎ着けてきた。

一人旅のわたしがどこで降りようと勝手だし、そもそもこのヒトと何か約束しているわけでもないし、このまま旅人の群れについて行った方が安心なんだけど…と一瞬ぐるりと逡巡。けれどあまりに必死に呼びかけてくる彼女の姿に、それを無視してここを立ち去るのはあまりに申し訳ない気がするし、既にボートは岸辺まで寄せられて、船頭は「やれやれ、早く乗ってくれよ」というそぶりを見せているから、後にも引けず…

仕方なく、また重たいキャリーケースをボートに積みなおし、デット島へ向かうことにした。

それが、彼女、ランプーンとの出会いだった。

人とバックパッカー達の荷物を満載して渡るボート


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