『同志少女よ敵を撃て』の逢坂冬馬氏が気になって気になって
傑作。
数日前に『同志少女よ敵を撃て』を手にした。アガサクリスティー賞・2022年本屋大賞を受賞されたこと以上に、2021年から長らく本屋で平積みされているのを目にし、読まれている本、時代に合った本なんだろうなとタイトルから想像していた。
逢坂冬馬さん。
名前を知らなかったのは、本作がデビュー作だからだ。第二次世界大戦の「独ソ戦」を舞台にした小説。実在した女性だけの狙撃手部隊の一員となった少女の成長が描かれている。
第二章(全6章)を読み終える頃、早く読了したいという想い以上に疑問が抑えきれず立ち止まった。
1985年生まれということは、上梓タイミングで30代後半。これほどまでロシア、戦争、狙撃学校といった細かい時代背景の描写が随分丁寧にできるのだろうかと。
作者の逢坂冬馬氏について先に少し調べた。父親が歴史学者。姉はロシア文学研究者の 奈倉有里さんというのを見て、“あぁ環境的にロシアに詳しくなったのね”と思ったことは、後々間違いだったと気づく。
本屋大賞受賞のスピーチと、後の質疑応答の中で、逢坂さんはこのように述べていた。
これらの話を聞いて、小説後半の伏線回収からの全体の展開や、視点の多さ、伝えたい想いの数々が少し垣間見えた気がした。平和を求める一人の市民としての立場を小説を書いてとっている方なのかと。
随分遅れて読んだ本作品だったが、なんと明日9月22日に『文学キョーダイ』という姉・名倉有里さん、逢坂冬馬さんの新書が販売されるという奇遇。さらに、来月2023年10月には第二弾、新作長篇『歌われなかった海賊へ』が刊行されるタイミングということで、気になって気になって仕方なかった彼の作品を続けて読むタイミングに恵まれそうである。
そういえば、傑作『同志少女よ敵を撃て』には全く触れてないけれど一番響いた一文だけを最後に。
殺すことを拒絶して生きる生き方、それを選ぶ道は、目の前にあった。