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星のセルフメンテナンス〜占星術で、自分を整える〜

人生にはたびたび、唐突に鬱々とした時期が訪れます。もちろん喜びもたくさんあります。それでも途方もない疲労、積み重なるタスク、ふと思い出される過去の記憶、出し抜けにぶつけられる小さな悪意にコミュニケーションの断絶──そういったものは、静かに心の底に降り積もっていくのですね。ワインが熟成するほどに、瓶のなかに澱をためていくように。それらがもはや見過ごせないものとなったとき、セルフメンテをするためのアイデア集としてこの記事をまとめました。
 
個人的な話で恐縮ですが、私は2023年末から2024年初頭にかけて、自分でも原因がよくわからない謎の落ち込みのなかにありました。今までならなんとか浮上できていたのが、どうにもダメになったのです。休息を取っても、美味しいものを食べても、ガツンと飲んでも、SNSから少し離れても、神社仏閣に参拝しても、仕事を頑張ってみても、浮上できない。何をしてもむなしい。しかししぶといのが私の美徳です。解決を目指してあれこれ試行するなか、非常に腑に落ちたのが占星術の「惑星の年齢域」という考え方です。おかげさまで、今となっては「また痛みを乗り越えて強くなってしまったな……」などと思えるほどには回復しました。そして、自分や生活を破綻させないためのメンテナンス、レジリエンス(回復力)を鍛える方法について考えるようになりました。
 
「惑星の年齢域」は19世紀から20世紀初頭にかけて活躍した占星術師・セファリエルの考え方をもとに、神秘哲学や精神世界の第一人者である松村潔先生が日本人向けにアレンジし普及させたものです。実は30代くらいまで、私はこの「惑星の年齢域」がまるでピンと来ませんでした。むしろ「年齢で区切るとかナンセンスだなあ」などと無礼なことを思っていたくらいです。でも人生の午後にさしかかった今だからでしょうか、切り花が水を吸い上げるように、「惑星の年齢域」は私の心の隅々に届きました。そして、この先の見通しを授けてくれたのでした。
 
本記事の構成は、1〜3章は「惑星の年齢域」の説明です。理論的なことはともかくノウハウだけわかればOKという方は1〜3章を飛ばして4章から気になる年齢域をご覧ください。ただ、「そういう理屈か」とわかっていたほうが、表層的なテクニックに終わらず本質的なセルフメンテができるだろうと私は考えています。
 
なお、本記事ではできるだけ具体的に、セルフメンテのアイデアを挙げるよう意識しました。お察しいただけるかとは思いますが、これは「全部やれ」という意味合いではなく「合うものを見つけていただければ」と思ってのことです。今は合わなくても、合う日が来るかもしれません。羅列を見ているうちに、自分にぴったりのアイデアが浮かぶかもしれません。ひとつやって諦めるのではなく、何度でもバッターボックスに立つことが大事です──大丈夫に、なるまで。「よし、今日も自分をやっていけるぞ」と思えるまで。力んでも疲れるだけです、リラックスしてやっていきましょう。
 


【はじめに】どうしようもない閉塞感は、いつの間にか私たちのそばにいる


たとえばこんなとき、ないでしょうか。
 
病気じゃない。
でも全然元気じゃない。
何をやってもうまくいかないし、
気晴らしをしても気分が上がらない。
お酒を飲んでも、美味しいものを食べても楽しいのはその時だけで、
誰かがオススメしていた神社に参拝してもハァ、変わらないのって自分だけ?
仕事をするとか、人とうまくやっていくとか、
そうしたことはできるけれど(オトナだしね)、
この閉塞感をいったいどうしたらいいの。
誰のせいでもないし、誰かのせいにするつもりもない、
強いて言うなら自分のせいで、
そもそも誰もが、何かしらしんどいことは抱えているわけで、
自分ひとりが不幸じゃないってのもわかっているけど、
あーーーーーーー!!!!!
もうちょっと楽しくやりたいんだよ人生を!!
 
こうしたなんとも言えない閉塞感を覚えたとき、打開策を見つけるひとつのヒントになれば、と思ってこの記事を書いています。若い頃ってもっと、気分転換がうまかった気がする。一晩寝れば大丈夫だった気がする。なのに今は、洗濯機の裏側に落ちて忘れ去られた雑巾みたいに疲れ果てている。そんなことって、ないでしょうか。「誰か助けて」と周りを見回しても、だいたい全員多忙です。ドラマみたいにスーパーダーリン(もしくはスーパー家政婦、暇人の叔父、面倒見がよく金持ちの叔母)が降って湧いたように登場する世界線はどこにあるのでしょうか。何もかも放りだして旅にでも出られたらと思うものの、人生はそこまで暇ではありません。我々は常に忙しく、労働やらOSのアップデートやら、子どもの「明日、図工の授業でラップの芯がいる」に追われているわけです。それでも限りある人生、できたら楽しいことが多いほうがいいと私は思います。自分の人生を、つまらないままにしておくなんてもったいないです。
 
ただ、気持ちだけで「ポジティブに考えよう!」と思っても心はだいたい折れます。ポジティブ発想になれるのは「結果」であって、プロセスの段階からそう思っていればただ本音を偽り、問題を軽視することでしかないからです。「今日の自分はちょっといいぞ」となれるまで、トライアル・アンド・エラーを繰り返すしかないわけですね。落ち込みや傷を丁寧にメンテしつつ、できる分だけでいいので今をより良く生きる。そうすると選択肢の数は増えますし、出会う人の傾向も変わってきます。ポジティブになれるのは、そのへんからでしょう。
 
「すべての願いは叶います」「これをやれば絶対成功」的なキラキラ(ギラギラか?)したことを語りたい気もしますが、人生ってそこまでイージーじゃないです。つらいことばかりとは申しませんが、地味な鍛錬とセルフメンテの積み重ねがあってこそ、ちょっとやそっとのことでは揺らがない自分を作れます。できるだけ折れないように、べっこり凹んでも戻れるようにレジリエンスを鍛えることで、仮に大きな試練があっても立て直しやすくなります。「どんなときも、きっと方法はあるのだ」と思って自分をあきらめずにいましょう──それでこそ、愛おしい人生になります。その手段とヒントが、「惑星の年齢域」にはあると考えています。
 
※落ち込みが長く続いてる場合は、専門家によるケアが適切かと思います。ご無理なさらず、専門機関への相談も視野に入れてください。
厚生労働省 こころの耳
 
※生活困窮、法律問題、健康問題の場合は、占いではなく公的機関や専門家に相談する必要があるというのが私の考えです。問題の元凶がそれだと思い当たった場合は、正しいところに助けを求めましょう。困ったときというのはどうしたって視野が狭まりがちです、私もそうでした。だから、落ち着いて探しましょうね。そして困った状態を立て直し、「さあこれからは、穴にはまらないようにやっていくぞ」と思ったとき、こちらをヒントにしていただけたらと思います。
 

1.「惑星の年齢域」とは何か、とりあえずおさえておこう


「惑星の年齢域」とは、「西洋占星術で使われる10個の星はそれぞれに、影響を与える年齢帯がある」という考え方です。月や太陽、冥王星は惑星ではありませんが、占星術の慣例にならって便宜上、惑星として扱います。「影響を与える」というのは、「このくらいの年齢のときに、この惑星が意味するような事柄に直面することが多く、成長を求められる」といった意味合いです。実際に該当する年齢域を見てみましょう。

惑星の年齢域

※セファリエルが体系化したのは土星期までで、天王星期以降は松村先生が体系化なさっています。
 
年齢域の区切りはあまり厳密になりすぎなくてもいいでしょう。区切りの時期が近づいてきたら次の年齢域も意識し始めるなど、柔軟にご覧いただければと思います。「20代は前半が金星期、後半が太陽期」なんて見方でも、解像度が深くなるかなと思います。
 
本記事は、この「惑星の年齢域」の考え方を応用し、「人生におけるフェーズの変化のタイミングと傾向をおさえ、心をメンテナンスするヒントを見つける」という部分に主眼を置いています。人間が積極的に活用できるのは肉眼で見える範囲までだと思いますので、土星までをメインに語りたいと思います。ただ、天王星期における「新しいことを取り入れる」というのは人生100年時代と呼ばれる世の中において、なかなかに大事なことだと思います。天王星を支配星とするみずがめ座にスポットライトが当たる時期でもありますし、71歳を待たず意識してみてもいいのだろうと思います。
 

2.年齢で人を分けるのはナンセンスか


さて、年齢年齢と連呼されて「うるせー!」と思われた方もいらっしゃるでしょうか。
私が若い頃、「惑星の年齢域」にピンと来なかったのは「どれも大事なテーマなんだから、年齢など関係なくやるべきでは」「年齢などただの数字だ」とイキったタフマン思考を持っていたからです。いやまあそうなのですが(捨てきれないタフマン思考)、やはり精神の発達や社会的な立場というのは現実問題として「その年齢なりのイベント」があり、そのなかで発達を促されます。真剣にやっているつもりでも、若い時期に味わう土星と、老境に入ってから味わう土星ではまるで違うでしょう。その年齢だからこそ、経験を重ねたからこそ身にしみてわかるものは、きっとあります。
 
一方、人が誰かを判断するときのことを考えてみましょう。年齢というのはなかなかに大きな指標です。「このくらいになったら自立した発想を持って欲しい」「もう入社◯◯年なんだから、このくらいの仕事はできるようになって欲しい」などということは、あなたも一度や二度くらいは誰かに対して考えたことがあるのではないでしょうか。成長は人それぞれ、ベストなタイミングがあります。遅くても早くても、その人が心から納得のうえ人生を歩めるなら、それがベストでしょう。他人が口出しする問題ではありません。「風の時代」ですから、多様性ということで許されるようになるでしょうか? いえ、多様性とは、個としての自立は大前提です。だから余計に、年齢に見合わない幼さというのはチャンスロスにつながりやすくなるでしょう。年齢にとらわれない、エイジレスな魅力だって、それは十分な成熟のうえに成り立つものなのですよね。
 
私も大概にして、未熟さを多く抱えた人間です。それに付随する問題を考えるうち、「惑星の年齢域」がだんだん、成長の指標として非常に参考になるモデルと思えるようになりました。「人生でこうした発達の課題があり、自分の現在地はここで、どこに意識を向けるべきか」がわかっているというのは目標を立てやすいですし、折れそうになったときに自分を立て直す──セルフメンテをしやすくなるのではと考えています。
 

3.暗い内容ですまんがよくある例を語らせてくれ


「惑星の年齢域」の表をご覧になって「ワーこれはやだなあ」と思われたものはあるでしょうか。いやな課題を飛ばしたり、誰かに任せたりして生きることも、可能といえば可能です。人に頼ったり、回避できるような環境を探したりすることはできるはずです。ただ、そもそも能力が欠けたままになるので、問題解決のために後からその能力を獲得する必要が出てくることもあります。たとえば月期の生活習慣、水星期の勉強、太陽期の自我などは顕著な例です。
 
一方、すっ飛ばしたままの年齢域の課題があると「いやなことに当たる」という出方をすることもあります。たとえば火星期に闘うことを覚えないと、勝手な人に振り回されたり、攻撃されたりしやすくなります。太陽期から木星期の課題をしっかりやっておかないと、土星期に人生の選択肢が狭まってしまうことがあります。
 
一方、「はからずもズレた年齢域を生きてしまう」というケースもあるでしょう。この場合、本人の意識は変わらないのに周りからの要求が変わっていくので、極端な話「今まではチヤホヤされていたのに、急に潮が引くように人がいなくなった」「今までと同じようにマジメに仕事しているのに、ちっとも評価されない」というつらい状況になります。「年齢で見てほしくない」といくら思っても、周囲は年相応の成熟を求めます。そういうものです。「年齢なんて関係ないよ」と皆が言っても、社会をつつがなく運用するためには、人間的に成熟していた人のほうが話がスムーズだからです。
 
冒頭に述べた私の落ち込みも「ズレた年齢域を生きてしまう」のパターンを当てはめて考えてみると、するすると解決の糸口が見えてきました。木星期に差し掛かったのに、火星期以前のやり方でセルフメンテしようとしていたのです。視点を変えて木星期の意識に慣らしてみることで、心は少しずつ浮上していきました。そのひとつが本記事です。「自分がこれまでに社会から受けた恩恵を、今度は自分が還元する」という木星の課題を、この記事で実現したくなったとき、例えようもないほどワクワクしました。そういえば木星期に差し掛かった頃から、税金を払うこと、社会のために自分が何ができるかに、関心が強まってもいたことを思い出しました。
 
落ち込みは幸福感を伴いはしません。居心地は良くないのですが、「自分のこの閉塞感は、どうやったら打ち破ることができるのだろう」「何をしても満たされないこの気持ちは、どうしたらいいんだろう」などと考えたとき、もしかして次のフェーズに向かう入口に立っているのかもしれません。閉塞感は、今の場所でやることは全部やったという証拠なのかもしれません。モヤモヤした自分に気づけたことがもう、えらいです。気付いたなら、そこから変えていけるからです。「モヤモヤしているのか? いいぞもっとやれ、人生ここからだぞ」などと、自分に言ってやるくらいでもいいんじゃないかと、私は思います。
 

4.「星の年齢域」を実践しよう


長々と理屈を並べ立てて恐縮です。いよいよ本題に入りたいと思います。それぞれの年齢域に入るまでの前段階として、まずは「0」という章を設けました。今があまり落ち着かない気分でいらっしゃる方は、ご自分の年齢域のことを考える前に、ここからやっていけると素敵です。
 

0.まずは普段の自分を取り戻す


心理的に大きなショックを受けるなどして「もう気持ちがぐちゃぐちゃ、どうしたらいいかわからない」などと感じたときは、「まずは普段の自分を取り戻す」ことが大事でしょう。そのために使えるのが月期・水星期のアイデアです。14歳くらいまでは、親の庇護のもと安心感を養う時期。その頃にやしなった「当たり前」を淡々とやることで心は落ち着きますし、仮に月期・水星期でそうしたものがやしなわれなかった場合でも、繰り返し実践することで安心のベースを作っていくことができます。混乱した状態でセルフメンテをしようとすると、どうしたって「今のつらさをどうにかしたい」という思いが強くなるので、本質からズレたものになりやすいです。まずは、普段の自分を取り戻すことから始める。そのうえで、各年齢帯のメンテに入ってもいいかもしれません。
 
★月期(0〜7歳)を活かしたセルフメンテ…生活をしっかりやる
ショックなことに見舞われると「全部どうでもいい」などと思うこともあって当然だろうと思います。ただ、敢えてしっかり「生活をやる」ことで、自分のペースを取り戻しやすくなります。全部パーフェクトにやらなくても大丈夫。きっちりやろうとしすぎれば逆にストレスになりますから、ゆるくやりましょう。
 
<たとえばこんなこと>
・十分に睡眠をとる
・いい時間に起きる
・ちゃんと食べる
・歯を磨く
・お風呂に入る
・着替える
・掃除をする
・仕事に行く
・しっかり休む
 
タスクはできるだけ小さな単位に区切って、自己効力感(「できた!」という感覚)を高めるのもいい選択です。たとえば「掃除をする」は「段ボール箱をたたむ」「しばる」「ごみの日に出す」などと分割する。「ちゃんと食べる」は「ごはんを炊く」から始めて、「おかずは超うまいあの店で買う」でもいい。そうすることで、踏み出せる一歩もあります。
 
★水星期(8〜14歳)を活かしたのセルフメンテ…自分のホンネを知る
「どうしていいかわかんない!!!!!」と考えることを放棄してしまうと、心というのは迷子になりやすいです。自分が何を考えているのか見えなくなってしまうのは、感情が渦のようになっているから。罵詈雑言からでもいいので紙に書き出してみるといいでしょう。そうするうちに、自分の心がだんだん整理できるようになります。それが対人関係に関することで、どう考えてもヤベー奴であれば、まずは信頼できる関係各所に相談し、距離を置くことが大事です。水星は、移動の星でもあります。
 
<たとえばこんなこと>
・紙とペンを用意し、自分の気持ちを書き出す
・どんなホンネも書く
・どんなホンネも「アリ」とする
・誰にも言えないグチも、ひとりの時間を作ってつぶやいてみる
・相手がヤベー奴なら距離を置く、人に相談する
 
「言霊」という言葉があります。言葉には不思議な力があって口に出すと叶ってしまうから、いいことだけを口にしようというものです。そうした発想から「悪いことは口に出してはダメだ」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、良くないのは「その考えを持ち続けて、自分はそうだと思うこと」「他人にぶつけること」です。気持ちは、ただ生まれるものであって善悪はないのです。自分のなかに留め続けなくても大丈夫。言語化して、「自分は今、こう思っているんだ」と理解し、行動に変えていきましょう。
 

①金星期(15〜24歳)の意識の育て方とセルフメンテ


「楽しい」「嬉しい」「きれい」「かわいい・かっこいい」などといった感性がぐぐっと育つ時期です。水星期に知ったもの、出会ったことは「頭で知る」のですが、「心で知る」のが金星期です。まあ水星期に「楽しい」がないわけはありませんし、金星期は頭を使わないというわけではないのですが、「そこに主眼が置かれる」と思っていらしてください。たとえばダンスをするとして、テクニックを覚えるのは水星期。それをより情感のこもった“表現”にするのが金星期です。
 
金星期は映画やドラマ、小説などで感動したり、ファッションや美容、グルメに関心を向けたりと、ときめきの対象をどんどん増やしていけると素敵です。美意識にマッチするものと触れ合う時間を、たくさん持ちたいですね。ちなみにここでは、無駄と思えるようなものも想定の範囲内となります。コスパ・タイパばかりではないものをたくさん知るときです。
 
金星は「愛と美の星」ですから、この金星期に恋をする人は多いでしょう。昨今は小学生で彼氏・彼女という存在がいる子どもも多いとか……お父さんそういうのはちょっとどうかと思うな!!ゲフンゲフン!!という突然のキャラ変はどうでもいいのですが(すみません)、ここで相手のスペックばかりを見ていたり、恋愛テクニックに頼るような発想をしてしまったりすると頭でっかちの、いわゆる「水星期寄りの発想」になってしまいます。いいなと思った条件と違う、と思うとすぐに冷めてしまったり、結婚してもお互いが外にときめきを求めたり、といったことも考えられるでしょう。とはいえこれは両刃の剣で、「ときめきがないとダメ」という発想でいて相手の本質が見えない……なんて可能性もこの時期には生まれます。そのときは金星意識が高まりすぎていないかどうか。冷静になれるといいかもしれません。
 
なお、「誰にもときめかない人生はダメ」なんてことはまったくありません。愛やパートナーシップの形はそれぞれです。ただ、理屈ではないご縁の妙味を学ぶのも金星期の課題です。一緒にいるとワクワクするとか、相手の気遣いがしみじみ嬉しいとか、響き合う・満たされるといった気持ちになれる人がいると、人生は豊かなものとなりやすいように思います。
 
<金星期の閉塞感と対処法>
金星期に閉塞感でいっぱいになったときは、水星期のように、ただ友達とダラダラしゃべったり、ゲームで気分を紛らわせたりするだけではどうにも物足りません。月期のように、誰かに甘えるのもむなしいだけでしょう。金星期は、楽しいこと、ときめくものを自分で増やしていく必要がある時期だからです。失ったときめきが、他のときめきで“上書き”可能なのです。
あなたがハマっている趣味はなんですか。絶対に食べたいと思っている、とびきりのグルメはなんでしょう。ワクワクするような場所はどこでしょうか。それらをうんと楽しみましょう。コスメやファッションなど自分のためのショッピングも、ほどほどであれば気晴らしになります。いい恋をするのもいいでしょう。
 
この金星期は月期と水星期を経て訪れます。よって、月期の課題である歯磨きや睡眠、食事といった習慣が安定しないと生活が不安定になるかもしれません。また、水星期の課題である「自分の気持ちを言葉で伝える」ということが不十分だと、恋愛を中心にコミュニケーション不全につながるかもしれません。生活をしっかりやる、いろいろな本を読んで言葉を吸収し、思いを伝える練習ができるといいでしょう。
ただ水星期の落とし穴として、「アタマで恋をする」状態になると迷走しやすくなるでしょう。そうした意味で、マッチングアプリよりもリアルな出会い向きの時期なのかもしれません。また、恋愛マニュアル的なものはコミュニケーションの本質を見失いやすくなる可能性があります。占いも頼りすぎることなく、程よく使っていけるといいですね。
 
現代はSNSやゲームなどで無限に時間をつぶせます。ちょっと暇つぶしに……と始めたパズルゲームをやって1日が過ぎた、という人も多いでしょうか。あるいは特定の人のSNSでモヤモヤして数日、暗い思いを引きずったりとか。そうしたものを乗り越えてこその金星期でもありますが、時間は有限です。美しいもの、楽しいこと、ときめく何かに触れてこそ、次の太陽期以降も充実します。みずみずしい好奇心を奪っていくようなもので時間を浪費する前に、もっと楽しいもので時間を埋めていけるとよろしいかと思います。
 

②太陽期(25〜34歳)の意識の育て方とセルフメンテ


太陽はみずからが輝きを放つ星です。それだけに、「自分が輝く方法は自分が決める」というのがこの時期の課題。折しも仕事で裁量を任されたり、実家から独立したり、結婚して家庭を持ったりと、「自分はこうしたい」「こうありたい」と、生き方のビジョンを持って決断するライフイベントが増える時期です。「よし」と自ら腰を上げる意識が大事です。
 
自分で決めるためには情報収集も必要ですし、それなりに心労もつのるでしょう。決めることには、責任がともなうからです。失敗したらどうしようという恐怖も、生まれて当然です。ただ、仮にこの時期、「誰かに決めてもらう」「人がやったことをそのままマネる」など頼る発想が原因となってしまうと、自分の輝きは失われやすいんですね。仕事では「言われたことをやればOK」「先輩に聞けばOK」では早晩、「君、もうちょっとさあ……」とお叱りを食らうことになります。それだけならまだしも、「強く言えば言うこと聞いてくれる人」として、周囲に便利に使われる可能性も高まってきます。こわいことばかり書いて恐縮ですが、ひとつひとつの選択がすべてレッスンなのです。
 
恋愛においてもフェーズが変わります。ときめき重視の金星期を抜け、仕事やプライベートをしっかりとひとりでできるなど自立したスタンスでいくとうまくいく時期が巡ってきます。見た目を磨く、ファッションで魅せる、“守ってあげたくなる存在”などという金星期路線を無意識のうちに続けていると「頑張っているのに、なかなかご縁がない」としんどくなってくるかもしれません。昨今は少ないかもしれませんが、「養ってもらう」発想での婚活も同様ですね。
なかには「ときめきを感じること自体が減った」と感じる方も多いかもしれませんが、それも太陽期に入り、「自分はこうしたい」が見えてきたからゆえのこと。決してマイナスではないはずです。
 
「自分はこうしたい」をきちんと選ぶ。それはごく当たり前のことのようでいて、心理的に大きな意味があります。人は自分が決めたことだから頑張れる、たとえ困難が起きても立ち向かうことができるとされています。これについて、精神科医の斎藤学先生が『「自分のために生きていける」ということ』(大和書房)というご本で書かれていたので、ご紹介させてください。

「自分で設定した目標に向かって努力し、その結果の責任は自分でとる。さまざまな欲望の中からどれを選ぶか決定し、どちらか一方を捨てることの結果を自分で受け持つ。(中略)『私がこれを選ぶことに決めた』のではなく、誰かに『これを選ばされた』、なんとなく『これを選ばざるを得なかった』という気分でいるとき、責任の所在は曖昧になってしまいます」

斎藤学『「自分のために生きていける」ということ』(大和書房)

「こうしたほうがモテるから」「この分野の仕事のほうが、つぶしがきくから」というのは、一見正当性がありそうに思えることも多いと思います。でも、太陽期の課題とズレていないか、少し考えてみられるといいですね。
 
<太陽期の閉塞感と対処法>
太陽期に閉塞感でいっぱいになったときは、金星期のセルフメンテのように「美味しいものを食べる」「エンタメを楽しむ」的なことをするのもアリです。ただ、それだけでは満たされにくいのが太陽期です。おしゃれなカフェでお茶をしても、心のどこかで「茶ァ飲んでる場合じゃねンだわ」という思いがスッとよぎる。それはみずみずしい感性を失ったのではなく、成長です。キラキラもいいけれど、それだけじゃ自分の欲しいものは手に入らない。心のどこかで、そんなことに気付いているはずです。ゆっくりでOKですから、自分の方向性を決めていきましょう。
 
この時期は社会人としての行動範囲が広がり、「人に相談する」という気晴らしを求める方も多いでしょう。一方で、おそらくライフステージの変化により「かつての友人と話が合わなくなる」という失望も増える時期ですね。水星期、金星期の意識を持っていると「話していて楽」な相手が欲しくなるところですが、太陽期に相談して前向きになれる相手は、「いい刺激をもらえる」「互いの成長を喜べる」「いざとなったら助けるぞと言える」関係なのかなと思います。かつての友達との時間も大切にしつつ、一緒に飲んで盛り上がって、別れたあとの帰り道もぽかぽかと心があたたかくなるような、そんな話し相手を、太陽期に見つけていけるといいですよね。
 
手帳を使って目標管理をしたり、本を読んでいろいろな人の生き方から学んだりするのもおすすめです。そうやって「自分で決める」マインドを自分に植え込むことが大事です。「合わせるよ」「あなたが決めて」ではなく、「普通はこうするだろう」でもなく、「これがいい」と自分が決める。それを大切にできると素敵です。このとき、水星期のようにコスパ・タイパを考えすぎてしまうと、「既存の枠に自分を当てはめる」ことにつながります。参考にするのは良いと思いますが、「自分はどうしたいか」の軸足からズレずにいることが重要です。
 
なお、金星期に生活や学業、仕事に頑張っていて「遊ぶどころではなかった」という人の場合、ここでコスメやグルメへの欲がドカッと出ることがあります。ブランド品を持っていることや若さを「自分らしさ」としてしまうと、次の火星期に「さらにお金を使う」ということが人生のテーマになってしまうことも。「どうだ明るくなったろう」とお札に火をつける富豪ならそれでもいいと思いますが、そうでない場合は「心を満たす」ことと「自分はこうしたい」を、分けて考えておけると素敵です。
 
<太陽期はサターン・リターンの時期>
太陽期はサターン・リターン(土星回帰)の時期でもあります。これは「生まれたときの土星の位置に、現在の土星が重なること」です。土星は約29〜30年でホロスコープを1周し、すべてのサイン/ハウスをなめるようにして経験を獲得します。そして28〜30歳で迎えるのが、サターン・リターンというわけです(ちなみにこのあと、土星期にも起こります)。重なるときは最も影響が出やすくなりますが、前後2年程度は影響を感じることも多いでしょう。
 
具体的に何が起こるかは人それぞれですが、土星は試練をもたらす星であると同時に、社会性を試す星でもあります。太陽期のサターン・リターンでは、ここまでに培った自我を振り返り、甘えや他者への依存があればガツンと覚悟を決めて根性を叩き直す、というようなイベントが起こるのです。子ども関連のことで、親として成長を促されることもあるでしょう。太陽期はここが閉塞感につながることもあります。
 
この時期に起こる「自我を鍛え直す」ようなイベントは、真正面から取り組むのがベストです。時間はかけてOKです、むしろ時間をかけることに価値がありますので、ゆっくりじっくり腰を据えてやっていきましょう。人が困難に直面したとき、不安になるのは「わからない」からです。この困難はいつまで続くのか、なぜ自分がこんな目に遭っているのか、わからないから怖いのです。ただ「そういうときなんだ」と思えば案外、落ち着けるものです。そうやって平静を取り戻してこそ「じゃあ、こうしよう」というアイデアも浮かんでくるでしょう。
 
逆に、土星の課題(と思われるもの)は、「うまいことやって回避しよう」と思わないほうがいいのです。仮に近道、抜け道、逃げ道を見つけたと思っても、必ずまた別の切り口で土星の課題がやってきます──ときに、もっとシビアな問題として。でも、土星がもたらすのは単なる災厄ではありません。次の30年の「心の土台」を作るチャンスです。ちょっぴり重めですけれども、きっとそれも太陽期の「自分はこうしたい」を確かなものにしてくれるはずです。無駄なことは、何ひとつありません。
 

③火星期(35〜44歳)の意識の育て方とセルフメンテ


火星は「情熱と闘いの星」。太陽期に育てた自己を、より強く世の中に打ち出していく年齢域です。闘ってでも手に入れたいものが見つかる人は多いですし、権利や場所を明示して守る、自分を売り込むという必要も出てくるでしょう。Noと言うべきところははっきり言って、胸をはって交渉したいところです。こうした行動がいきすぎるのは良くありませんが、火星をきちんと使えるようにしておかないと、火星的な人──力で他人を圧倒しようとする人──に振り回されることが、とても多くなるのです。わざわざケンカを売りにいく必要などまったくありませんが、「いざとなったら、闘える自分でいること」はとても大事なのですね。
 
トーベ・ヤンソンの『ムーミン谷の仲間たち』という本のなかに「目に見えない子」というお話があります。意地悪なおばさんに一日中皮肉を言われ、ショックのあまり透明人間になってしまった小さな女の子・ニンニに対し、ちびのミイは容赦なく言うのでした。
 

「たたかうってことをおぼえないうちは、あんたには自分の顔はもてません」

(トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の仲間たち』講談社文庫)

ここで言う「自分の顔」は、太陽期に獲得する「こう生きるんだと決めた自分」と同じです。顔を持つことは意思でできても、持ち続けるためには闘う──という言い方がいささか物騒なら「Noと言うべきところは言う」「権利を主張する」「徹底的に守る」でも構いません──ことが欠かせません。誰かが闘ってくれることばかりではないからです。年齢的にも、上司として矢面に立たされる、交渉の場に引っ張り出される、家族を守るために抗議するなど、そうした場面が増えるかもしれません。ひとつひとつが、闘う力を身につけるチャンスです。
 
ただ、私は思うのですが、相手を“闘えない心理状態”に追い込む人というのも、世の中には珍しくないのですよね。「言いたいことが言えない」「つい『自分が我慢すれば丸くおさまる』と思ってしまう」というコミュニケーションのパターンを持っている方は、火星期はちょっぴり頑張りどきです。まずは、全部自分のせいと思い込むことから抜けることが大事です。
 
というのも、この「言いたいことが言えない」というのは自分の問題のようでいて、実は相手側が「言わせない」圧をかけているということはよくあるのです。自分の問題ではあるのですが、
「本当に自分が向き合う価値のある相手なのか?」
「お互いに尊重し合う関係性を作る意志を持てているか?」
ということは、振り返っておくと健康的かなと思います。
 
私の実体験でもあるのですが、「言いたいことが言えない自分」をそのままにしておくと、どんどん「言わせない人」を引き寄せてしまうのです。最初は「仕事や友達関係ではうまくいくのに、恋愛だけ思ったことが言えない」という状態だったのが、仕事でも、新しく知り合う知人でも、「言わせない人」が増えていくのです。「言わせない人」は「言いたいことが言えない人」を嗅ぎつけるのが実に得意なのです。こうなると自尊心は損なわれるばかりで、実にしんどいです。
だから、

・「言わせない人」からは離れる
・「言える自分」を取り戻す

ことも、セルフメンテの一手段と思っていらしてください。「それは道理が通らない」でも、「私をそんなふうに扱うのは許せない」でも、心から湧き上がる純粋な自尊心は大事にしましょうね。ワガママと決めつけないことです。ワガママかどうかは、そこからの対応で決まるものであって、心の声は消してはいけないのです。自分は自分の、一番の味方です。その味方に本心をスルーされたら、太陽期に獲得した自分が見えなくなってしまいます。
 
自分の意見をはっきり言えるようになるためには、意志の力だけで頑張ろうとしなくて大丈夫です。アサーティブ・コミュニケーションやロジカルシンキングを学んだりするのもいいかもしれません。意志だけで強くなろうとするのは、心もとないものです。知恵もしっかり味方につけて、本当の強さをものにしましょう。「強さ以前に、これってワガママじゃないのかな……こんなこと主張していいのかな」と迷う優しいあなたには、富永京子先生の『みんなの「わがまま」入門』(左右社)をおすすめします。わがままを言えない理由や、言ってみる方法などが網羅されています。
 
この時期に恋をしようとするなら、女性の場合は金星期の意識で外見的魅力、可愛らしさ、非力さなどを打ち出そうとすると、この年齢ならではの魅力とは少しちぐはぐに見えるでしょう。太陽期のような自立は大前提とみなされるはずです。物怖じせずに一緒に人生を切り開くこと、いざとなればパートナーを守るつもりでいることが、火星期の魅力となってご縁につながるだろうと思います。
 
<火星期の閉塞感と対処法>
闘いにともなう怒りや不完全燃焼感、苛立ち、「全部爆発しろ」的なハチャメチャ感がないまぜになって、ただやるべきこともハチャメチャに多くて忙しいのです。ずっと不完全燃焼感を抱えつつ、とにかく懸命に今をやる!という感じになりやすいです。
水星期のように友達と話してセルフメンテと思っても、「問題はひとつも解決しねェんだよな、当然だけど」と思いやすいです。金星期のようにキラキラした気晴らしだけでも「楽しいけど帰ったらあれこれ大変だな!」と思っちゃいますし、太陽期のように「自分の使命とは」「自分が生きたい人生とは」と自分に問うても「それより目の前のことをだな!!」と思ってしまいます。
 
どちらかというと「内なる力が高まるようなことをする」「勇気や元気が出ることをする」のがおすすめです。運動で筋肉をつける、アサーティブ・コミュニケーションのスキルをつける、仕事で実力を積むといったあたりでしょうか。火星は2年半で12星座をひと巡りしますから、こうしたことを2年半くらいかけてガチモードでやるとよろしいかなと思います。日常的には、ロックやヘビメタを聴く、火力・筋力の高い映画を観る(私の場合はダニエル・クレイグの「007」でした)、などもおすすめです。私はやったことがありませんが、斧投げバーで斧を投げたり、キックボクシングのレッスンを受けたりするのもいいかもしれません。
 
なお、見えなくなってしまった子・ニンニはちゃんと自分の姿を取り戻し、見えるようになります。笑うことも、できるようになりますよ。どうぞご安心を。
 

④木星期(45歳〜54歳)の意識の育て方とセルフメンテ


木星期に入ると、「自分のために動く」モードから「人のために動く」モードに変わります。これまで、社会や上の世代からいかに多くのものを与えてもらっていたのかに気づき、自分も社会のために何かを提供し、いい循環を作りたいと考えるようになります。
 
木星期には、太陽期や火星期のような「ガンガンいこうぜ」という前のめりなテンションはなく、全体的にゆとりが生まれます。だからこそ、周囲の要求にも「いいよ」と気楽に応じてあげられるようになるのでしょう。若いときは「自分なんて大嫌い!」などと思っていた人も、木星期には「まあいいか」と受け入れられるようになるでしょう。でも、それは単純に意識がガバガバになるというより、太陽期に自己を打ち立て、火星期に闘ったからです。自分を褒めてやっていいところです。
 
<木星期の閉塞感と対処法>
木星期に閉塞感を覚えたら、水星期のようにグチを言っても、おそらくため息が増えるだけです。金星期のようにグルメやお買い物をするでも、出ていくお金が多いわりに、若いころほどの高揚感というものは感じられなくなります。嬉しいのは確かでも「それはそれ、これはこれ」です。では志を高く持とうと太陽期のように目標設定をしようと思っても、火星のようにオラオラモードになっても、あまりしっくり来ないはずです。木星期には太陽の頃に培った自分の人生の目的を、周囲や社会のために大きく広げていく意識を持つことが大事なのです。
 
ただ、太陽期・火星期のやり方が身につきすぎていると、それはそれでチャンスを減らすことになります。木星期からは自分ではなく社会のために動く時期なので、「自分はこれがやりたい!」(太陽期)、「絶対に勝つ!」(火星期)ばかりだと、木星期に起こることとそぐわないのです。周囲の期待ともズレが生じるでしょう。大事なのは、おおらかに広げていくことです。率先して若手の育成を担っていく、知っていることはどんどん教えてあげるなどするといいかもしれません。
 
木星期の対処法は、前野隆司先生の「幸福学」をひもとくのも参考になるかもしれません(記事の末尾に参考文献を記します)。幸福学では幸せを「ハピネス」と「ウェルビーイング」の2種に分類します。「ハピネス」は長続きしない幸せです。サウナでととのう、美味しいものを食べる、欲しいものを買うといった、この記事でいえば金星期的は幸せです。一方「ウェルビーイング」は長続きする幸せです。満たされた状態、良好な状態を意味します。幸福学では、こちらを目指すことが人生の幸福につながると考えます。
この「ウェルビーイング」を実現するヒントとして、前野先生の『幸福学の先生に、聞きづらいこと全部聞く』(タイトル!!)という本では「嬉しいことがあったら『みんなのおかげです。ありがとうございます』と言う」「コンビニで受け取るお釣りで募金する」といったことが紹介されています。セロトニンやオキシトシンが分泌され、幸福感につながるそうです。木星は「拡大」の星です。自分ひとりが嬉しいより、その嬉しさをシェアするのが嬉しい年齢域です。これって、すごく「木星期的」ではありませんか。
金星期的なハピネスは、とうの昔のものになりました。でも木星期を生きる今だから手に入れられる幸福もあります。そして、それは人生全体の幸福感につながるらしい──これは、大きな希望ではないでしょうか。
ボランティア活動も、同様の効果があるだろうと思います。
 
木星期に恋をしたい場合は、おおらかさが第一です。人間性は十分に培って来られたでしょうから、相手のいいところはもちろん、ダメなところも寛容になってあげられる大人のゆとりが、年齢相応の魅力となるのではと思います。もちろんですが、わざわざカスをつかむ必要はありません。あなたを尊重し、大切にしてくれる相手を選ぶことが重要なのは申し上げるまでもありません。なお、若い頃の「これをやってモテた」はもう、紐でしばって裏山にでも捨ててきたほうがよろしいかと思います(みずからを振り返りながら、真剣な目つきで)。何がNGで何がOKかすら、時代はもう変わってきているはずです。
 

⑤土星期(55歳〜70歳)の意識の育て方とセルフメンテ


土星期は私にとって “これから歩む道”であり、人生の先輩に向かって講釈を垂れるというのもあまりに不遜、釈迦に説法状態で恐縮なのですが、占星術や心理学、幸福学などの観点から私なりの考え方を書いてみます。「素人は黙っとれ」と思われる方がいらっしゃったら申し訳ありません。10年後、「あれは若書きのものでして……いやすでに立派な中年でしたが」などと、穴があれば入りたくなっている自分が目に浮かぶようです。
 
自分らしく生きたいという気持ちを持ちつつも、社会から求められるものをしかと受け止めてベストな一致点を見出すことが土星期のカギです。土星の「制限」「抑制」というのは、自分に対するものであると同時に、周囲に対して土星期の方が示せる価値でもあるでしょう。たとえば地域のお年寄りが「あの川には河童が出るから近づいてはいけない」などというのは、水難事故を防ぐためというのは、よく聞く話です。「あそこより低い場所には家を立てるな」といった津波被害を防ぐ言い伝えも、同様です。そうやって規律を維持し知識や経験をシェアしてこそ、社会や周囲のためになり居場所ができるというわけです。
 
この頃になると体力的にも時間的にも、「できることは限られている」という実感が生まれます。土星は時間とかかわりの深い星です。人生があと◯◯年あるとして、そのなかで何ができるだろうか。そう考えることで土星期に合った日々をよく生きることができるのではないでしょうか。可能であれば、ひとつ先の天王星期の考え方を取り入れながら過ごすとブレイクスルーを起こしやすいだろうと思います。今までのやり方で愚直に頑張ることだけを良しとせず、新しいものを取り入れることです。
 
<土星期の閉塞感と対処法>
この時期に閉塞感を覚えるとしたら、日々増えていく「できないこと」よりも、「できること」に目を向けてみるのが改善のヒントになると思います。長く生きた人だけが手にすることができるものが、きっとあります。責任ある立場を引き受けることも、現状打破につながるでしょう。
 
気晴らしとしては、水星期以降「もっと話したい」「もっと楽しいことを」「もっと新しいことを」「もっと強く」「もっと大きく」と拡大傾向に来たところを、「いろいろやったけれど、自分にはこれ」と選び取って深めていくのがいいのかなと思います。心許せる友との語らい、長く続けた趣味。自分のポリシーを曲げないこと。Noと言うべきところは言える体力と知恵を維持すること。身近な人のために力を尽くすこと。そして、天王星期の「新しいこと」です。新しいテクノロジーを真っ先に試してみるような行動は、いい選択となりそうです。おそらくですが、それは減っていく体力や集中力を補ってあまりあるものがあるからです。
 
一方、これまでの惑星の年齢域のなかで、獲得せずに来たものがある方もいらっしゃるでしょうか。その場合は、ここから獲得するのも人生の充実につながりそうです。学びの機会を持つ、おしゃれをする、趣味に打ち込む。特に「日々の楽しみが少ない」と感じている場合、月期と金星期の楽しみをできるだけ取り入れると、華やぎが生まれます。また、「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」という既成概念に縛られて生きて来られた場合、金星期の趣味や恋愛、太陽期の自己実現がままならなかった場合もあるでしょう。たとえば男性の場合は「料理ができず、今ひとりの食事がつまらない」「自分らしい自分を出せずに組織に従ってきた」という感じでしょうか。女性の場合は「夫の転勤についていくために、やりたいことを諦めた」「なんでも夫にお伺いを立てて決めてきた」という感じでしょうか。時代のせい、世の中の空気のせい……そう思うとむなしさも募るでしょうか。それとも、すでにそんなものは乗り越えて、ご自身の人生に納得されているのでしょうか。おそらく、続く世代もその時々なりの閉塞感を抱えて「時代の呪い」を引き受けているということも、あなたはわかっておられると思います。「惑星の年齢域」という考え方に出会ったからこそ、今、獲得できるものもあるかもしれません。ご参考にしていただけたら嬉しいです。
 
<土星期は2度目のサターン・リターンの時期>
太陽期で訪れた、生まれ持った土星の位置に今の土星が帰ってくる「サターン・リターン(土星回帰)」が56〜60歳で起こります。一度目のサターン・リターンではなかなかの衝撃があった人も、人間的に成長した土星期での土星回帰は落ち着いたものとなる人が多いようです。ホロスコープを土星が2巡するほどの経験を詰んでいらしたのです、「むべなるかな」お感じになる人も多いでしょう。人によってはジュピター・リターン(木星回帰)、いわゆる「12年に一度の幸運期」も同じ時期に巡ってくるため、楽観的に過ごせるのかもしれません。
 
サターン・リターンでは土星の「制限」が働き、無駄なことを削ぎ落とすような心境になる人が多いでしょう。その場合、ひとつ前の木星期までの「もっと、もっと!」と広げていくような動きに対し、限りある時間を見据えて厳選していく土星期の出来事は、心にしっくりくるだろうと思います。「削ぎ落とす」といっても、何も捨てる・やめる・手放すといったことばかりではないでしょう。これまで培った大切なものです。次の世代に渡す、活用してもらう。そうした選択も、できそうですね。生前贈与や自治体への土地の寄付を検討する方もいらっしゃるかもしれませんが、これも土星期的なアクションなのかもしれません。
 
以上、星を使ったセルフメンテの方法をお届けしました。
最後に参考文献を挙げておきます。●がついているものは、惑星の年齢域について詳しい記述がある本です。より詳しく知りたいという方は、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
 
<参考文献>
●松村潔『完全マスター 西洋占星術』説話社

●まついなつき『しあわせ占星術』KADOKAWA

●「MyCalendar」2021年秋号 説話社

●Saya『人生について星が教えてくれること』筑摩書房

リズ・グリーン著 鏡リュウジ訳『サターン 土星の心理占星学』青土社
鏡リュウジ『占星術の教科書Ⅱ』原書房
辻一花『未来予測占星学入門』説話社
富永京子『みんなの「わがまま」入門』左右社
斎藤学『「自分のために生きていける」ということ』(大和書房)
前野隆司『幸福学の先生に、聞きづらいことぜんぶ聞く』大和書房
内藤誼人『がんばらない生き方大全』SBクリエイティブ
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部『幸福学』ダイヤモンド社
トーベ・ヤンソン著 山室静訳『ムーミン谷の仲間たち』講談社文庫


ちなみに私はこんな本を書いています。どの本も「占いを使って、よりよく生きる」がテーマです✨


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真木あかり
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