推し映画について語る4:「天使の涙」
3月下旬、元町映画館さんで、ウォン・カーウァイ監督作品「欲望の翼」「恋する惑星」が上映されました。告知を見つけた時は本当に息が止まるかと思いました、神。「欲望の翼」を観ながら、感動で震えっぱなしでした。いつか「天使の涙」も、劇場で観たい…!
ウォン・カーウァイ監督が大好きです。特にクリストファー・ドイル撮影監督とのタッグが最強。一番好きな作品は「天使の涙」です。
推し映画について語る4:「天使の涙」
映像の美しさは当代随一(私的に)だと思います!。99分の本編中、どのシーンも素晴らしく”絵になる”のです。GYAO!でレンタル配信されています、ありがたい!
公開当時、まさかこんなに小さな画面(タブレット)で、自宅で観られるなんて、想像もしていなかったなあ…感無量。
先日観た「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」、ネオンの色彩や、雨に濡れた路地に滲む明かりが最高に好みすぎるなと思ってたら、ウォン・カーウァイ監督作品で活躍した照明のウォン・チーミン氏が参加していたようで。そうだよな、照明も大きいよなと、しみじみ実感しました。
作品について
1995年公開の作品です。今は無い、広島のマチナカ映画館「シネツイン」が香港映画を上映していて、館内で手にしたフライヤーに惹かれたのがきっかけでした。子供心に、これがムーブメントの最先端なんだなと感じて、夢中になったのでした。クリストファー・ドイル氏と緒川たまきさんの写真集を買ったりもしたなあ。
どんな作品?と言われると、とても説明が難しい。香港を舞台に、印象的なシーンが猛スピードで繋がれている、男女5人の群像劇のような映画です。登場人物たちの、一瞬ごとの表情やふるまいが、とにかく印象的で。これまでたくさんの映画を観てきたけど、ずっと忘れられない、大好きな作品です。
好きな場面(ネタバレあり)
主役の一人、モウ(金城武)と彼のお父さんのやりとりが一番好きです。子供の頃に賞味期限切れのパインを食べて以来、言葉が不自由なモウは、安宿の管理人をしている父との二人暮らしなのですが、この二人の雰囲気がとても良いのです。モウはかなり自由奔放に生きているけど、無口な父親は特に干渉することなく(警察に探される羽目になっても)、淡々と生活しながら息子と日々を生きている。特別なことは何もしない感じがすごくいいのです。モウがビデオカメラにハマって父親を撮影しまくるのだけど、夜中にこっそり、父親がその映像を見て笑っていて。さらにその姿を、モウが物陰から見ているシーンが微笑ましくて、大好きです。でもその後、具合を悪くした父親が亡くなってしまうので、なんだか無性に切ない。
とはいえ、モウの場面は全体的にコミカルで、この映画の「陽」担当という感じです。天然というか、無茶苦茶な仕事(?)っぷりが可笑しくて。なぜか毎回通りがかって巻き込まれるちょび髭がかわいそう。笑
「陰」担当は、殺し屋(レオン・ライ/黎明)にひそかに恋するエージェント(ミッシェル・リー/李嘉欣)。彼女は殺し屋に直接会うことを避けつつ、マメに彼のアジトに通って生活空間を整えているのだけど、綺麗にメイキングしたベッドの上でいつも自慰をしていて(ここのアングルが最高にかっこよい…)、そしてある夜、泣くんですよね。この、涙で流れたマスカラと泣き顔が、美しくてものがなしい。彼女が出てくる場面は全部好きです。スタイリッシュでアンニュイで、超絶美しいのに、どこか”かわいそう”で切ない。
モウと失恋女(チャーリー・ヤン/楊采妮)のコンビもむちゃくちゃなシーンの連続で好き。殺し屋に恋する金髪娘(カレン・モク/莫文蔚)の激情っぷりもすごいんだけど、ビジュアルが最高なので絶妙なバランスを保っています。
ストーリーはあるようで無いようで、結構カオスな筋書きなのに、25年経っても鮮烈な印象を残す、名作だと思います。そして”夜の香港”の魅力を余すことなく描いた作品でもあります。めちゃくちゃ憧れて、数年後、初めて香港行った時は、まるで映画の中に入り込んだようで、ものすごく興奮しました。
クリストファー・ドイル撮影監督について
一番好きな撮影監督であり、フォトグラファーです。「天使の涙」はドイル監督の映像美の真骨頂だと思っています、今観てもめちゃくちゃかっこよい、これが”エモい”ってことか…としみじみ思う。
「天使の涙」や「恋する惑星」の極彩色。赤・青・黄色・緑の配分、ソリッドな色味。それが画面の中にベストなバランスで収まる感じ、天才。あと画角とかモーションとか、突然のモノクロとか、絵づくりのスピード感が半端なくて、飽きさせません。
ドイル氏が撮影を務めた浅野忠信主演の「壊れた心」は元町映画館さんで観ました。正直本当に理解が難しい映画だったけど、映像はとてもとてもよかった!
いつまでも、現役で居ていただきたい方です。「宵闇真珠」のメッセージ映像のドイル氏がキュートすぎて、好きすぎる…笑
「欲望の翼」を観た時も思ったのですが、この頃の香港映画が持つ、自由で奔放な空気というか、世界観は、今はもう、この世のどこにもあの無いのだと思うと、”映画の文化的価値”をしみじみ感じ入ります。映画をつくること、残すことそのものに意味があるんだと思いました。
ウォン・カーウァイ監督作品、是非また映画館で観たいです!リバイバル上映されますように!