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父の心臓について語る

今から16年前、心筋梗塞で倒れた父。糖尿病の合併症で発症しました。救急車で運ばれ、緊急処置を行い、一時心停止するほどの酷い状況であったらしい。ICUと一般病棟を行ったり来たりして予断を許さない病状が続きましました。2度に渡る手術を経て生還しましたが、今、その後遺症による心不全に直面している。

心筋梗塞が発症した時点で、失われた心臓の筋力は、力を取り戻すことはなく、残った筋肉で心臓を動かし続けるしかなく、すでに父の心臓は弱っている状態でした。心筋(心臓の筋肉)の細胞は心臓を動かすための収縮機能に特化した特殊な細胞で、この細胞はほとんど増殖することはなく、細胞の一部が壊死してしまうとその後再生することはないとのことです。知りませんでした。
心筋梗塞で倒れた後の父の心臓は、もう長いことずっと心臓の機能が低下した状態だったということです。
なんか、奇跡の生還とか言って、普通の日常生活を送っているように見えていたので、心臓が深刻な状態であるという認識は、あまり持っていませんでした。

心筋梗塞で入院した数年後、不整脈があり、ペースメーカーを入れることになりました。不整脈で鼓動が正常に行われない場合には電子刺激を与えて鼓動の補助をする働きがあるという当時の最新型を心臓に埋め込みました。その後、内服薬の調整などでずっと経過観察の状態が続きました。

そして今年3月、胸の苦しみを訴えて緊急入院。同9月、同じ症状で再び緊急入院。

父の心臓は、僧帽弁閉鎖不全症という症状で、弁の機能が正常に働いていないせいで血液が逆流し、心臓に血が溜まった状態で肥大し、限界まできているらしい、とのことでした。
心臓が大きくなることで、弁の口が伸びたゴムのようになってしっかりと閉じ切らない状態になってしまっているとのこと。一度この状態になってしまっては、もう元に戻ることは難しいらしい。

心臓に溜まった血液の影響で肺に水が溜まって、苦しくなり入院という負のスパイラルに陥っているとのこと。
内服薬で体内の水分バランスを調整していたようですが、薬での調整も今できる限界まで対処したらしい。

兎にも角にも、父の心臓は弱っている。とても。
結局、まとめると、弱ってるっていう話。
病状が進行すれば、もう、介護とかそういう話になっていくような感じだった。自力で生活している今の父の姿から、介護が必要そうには、まだ、見えない。

先月の入院時、これ以上内服薬からのアプローチは見込めないということで、今月、マイトラクリップ(mitraclip)という僧帽弁閉鎖不全症の治療を行うということです。
簡単に言うと、心臓の弁の口の閉まらなくなった箇所をクリップ(洗濯バサミみたいなもん)でガシッととめちゃおうよっていう治療。マイトラクリップ(mitraclip)という医療機器を使えば、開胸しなくても、カテーテルで処置できるので体への負担が少なくて済みますよってこと。

この器具自体は20年前から存在しているものらしいけれど、僧帽弁閉鎖不全症の治療に使われ出したのは2018年からと最近の話で、まだ新しい治療方法なんだそうです。どのタイミングでどういう症状の患者に施すのが最良なのかは、まだ、確立されていないんだそうです。
担当医師からの手術(治療)説明の席にわたしも父母と一緒に同席したのですが、難しい話をわかりやすく説明してくれていたと思います。半分も理解に追いついていなかったかもしれませんが…。
医療現場もトライアンドエラーで日進月歩しているんだなと感じました。

この手術をしても、弱った心臓の機能が向上するというわけではなく、逆流する血が今よりも減るっていうわけで、心臓の能力は今と変わらない。弱心臓のまま。心臓に溜まった血液が排出されて、心臓肥大が緩和されるかもっていう程度。クリップが正常に動作できるかどうかも、父の心臓の状態にかかっているという部分もある。
それでも、今の父の病状を鑑みて提案された処置であることは間違いない。

手術の成功と良好な術後経過を願わずにいられない。

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