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平田観光農園

高知→福岡→大崎上島→竹原→三次と移動の住み込み生活をつづけていると、そろそろ自分で止まらなくなって来ている事に気づき、心配になる。私は、もしかして判断能力に欠けているのではないのだろうか? (所持金が無くなると、自分は本当のバカなのかと心底心配になる)
この平田観光農園で、この流れは終わりにしよう。そして、お金を貯める生活にしようと自分に言い聞かせた。竹原から三次に電車で向かう。丁度その日が広島で豪雨のあった日である。途中で電車は停まり、社長に車で迎えに来て貰った。寮に到着するとそこは会長夫婦らが暮らす自宅で私にも一部屋が割り当てられた。ドイツ、ボリビア、秋田から農業研修生は長期間泊まり込み、私と同じくボラバイトの出入りも激しい。毎日みんなで共にする朝食や夕食、順番に入るお風呂と、賑やかに過ごす毎日。農園の仕事は、葡萄の摘粒からはじまり、伸びたツルを切ったり、袋がけをしたりした。観光農園のため、美しさが問われる。
仕事は、そんなに面白くなかったけれど、寮に帰ると皆で居る時間がとても楽しかった。ドイツ人のアミーナは23歳で農業を志し、勉強のため農園に来ていた。毎日どんどん日本語を覚えていった。
「私はおっちょこちょいです」とチャーミングな言葉を使った。「カードゲームしましょうか?」と皆を誘った。アミーナには皆を巻き込む明るさがあった。フランス人のレイラは、旅の途中に1週間を農園で働こうとやって来た。パンの酵母種を持って来て、美味しいパンを焼いてくれた。ある夜には、ウクレレを弾きながら優しい声でフランスの歌をお洒落に歌ってくれた。きもちのいい夜だった。なかでも、一番仲のよかったユリちゃんは、浜松の子で、片言の英語を楽しそうに使って過ごしていた。私の健康法に関する話しをいつも聞きたがり、実践を交えて教えると、「やはり師匠と呼ばせて下さい!」と笑いながら言った。
会長は、やり手で思ったことをすぐに行動に移す人だ。家の中では、いつも
「順子さん、順子さん」と、奥さんの名前を大きな声で呼んでいたのが印象的だった。世界を股に掛けて仕事をしているわりには、常に笑いを忘れないユーモアの持ち主である。
最初見た時から、三好の家が好きだった。赤い屋根瓦に白い壁、木の柱。建物に興味を持ったのははじめてかも知れない。会長は送ってくれる車の中で、「空き家はいっぱいあるから、ゲストハウスをするといい」と言ってくれた。私は、「大崎上島の仕事が終わって来れそうだったらまた来ます」と答えた。

                          2018年7/3~7/14


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ほのほの巻/広島県大崎上島
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