さくら
「さくら」と聞くと森山直太朗の「さくら」という曲を想い出す。
当時、私は3歳の娘と1歳の息子を連れて石川県で新生活を始めていた。
金沢の街から車で山手に30分、湯涌温泉で一軒家を借りた。
当時の夫から、自立したいとの思いで始めた暮らしでは早々と仕事を決め、子供たちを保育園へ預けた。
20代前半からの子育てと、仕事、夫婦生活はわからない事だらけだった。
そんな慌ただしい生活の中で、ママ友が出来た。彼女は年上で古民家を改修したお洒落な、薪ストーブ付きの家に暮らしていた。娘同士も同級生だったので、私はよくその家に遊びに行ってたし、お茶をしながら友人とはいろんな話をしたと思う。
そんな生活が2年ほど続いただろうか、当時の夫が急に仕事を辞める事になり、私たち家族は慌てて家を出る事になった。
その時、夫は摂食障害、息子はアトピー、娘は小学校入学したばかりで次の住まいの選択肢はなく、町の中の町営の住宅に入居することになった。
そんな旅立ちの時、友人には心配をかけたと思う。荒れ狂う海の中を難破船に乗った私たち家族を見送る、そんな気分だったに違いない。
旅立ちの日、友人は一枚のCDを私に手渡した。そのCDが森山直太朗の「さくら」である。新天地に向かう車の中で、何度も何度も聞いた。心のこもったそのプレゼントは、生涯忘れる事の出来ないものとなり、エールとしてこの季節になると心に届く、永遠のプレゼントとなった。
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