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記憶


 記憶とは、その昔の体験や思い出が何度も更新されて変化していくものだと感じた。
 
ここ数か月は、実家の土地の境界線をハッキリとさせる為に、夫や父と何度も協議を重ねた。というのも、何故か今になって実家の隣人のお菓子屋さんが、土地の境界線について過激発言を行って来た為である。
その私の実家だが福井県の鯖江市にあり、知り合いに貸してもう5年ほどになる。
それが、最近になって隣のお菓子屋のおじいさんが「家の裏にある使っていない坂本のボイラーを撤去しろ!しないならぶっ壊すぞ!」と賃貸人の女性に言って来たらしいのだ。女性は電話口で、とても困った様子だった。それで、持ち主である私の父に相談しても「そんなめちゃくちゃな話は、取り合わなくていいと言われた。
どうしたものだろうか。
 そこで、知り合いの不動産事業の部長や、長く建設業に携わって来た夫に何度も相談した。法務局で登記簿をとって来て、根拠になりうる資料を集め、お互いの土地の境を推測したりもした。実家を建てた時の、確認申請書類も準備した。そこには土地や家の測量図も記載があった。それでも最後は父の記憶に頼るところはおおきい。
父は記憶を遡って話してくれた。「そういえば60年前も地境の事で、おじぃちゃん達が話し合ってたよ。専門の土地家屋調査士に来て貰って、話し合いをして今の平垣の地境が出来たんだ。」私は、慣れない頭で数か月かけて、調べたり話し合ったりを繰り返した。そうこうしていると父が「そういえばそのボイラーのあった土地は昔、木造の家だった時には、トイレとお風呂だったよ。想い出した!」何かが剥がれ落ちる様に謎が解けて行く。
 年末それらの資料と父の記憶を頼りに、実家鯖江へと私と夫は向かった。そして隣人のお菓子屋のおじいさんと地境について、1時間半に及ぶ話をした。話をしている内にお菓子屋の店主は「ここはうちの土地じゃないか?」という発言から「この部分の土地をくれないか?」という話に変化して行き、最後には「ここの土地を売ってくれないか?」という話に変わっていた。いったい人間の思い込みというのはどうなっているのだろう。
 最後に「どちらにしても、私たちは口約束で土地をどうこうするつもりはありません!」と言った。「売るにしても譲るにしても、契約書を介して筋道通して進めましょう。」とも言った。お菓子屋さんは「遠いところ来て貰って堪忍やで。お金がかかるなら、考えるわ。」と言って話を終えた。そもそも、隣のお菓子屋は現在の建物の登記さえもしていない状態である。そのお菓子屋とは違って、わが実家は登記もされており、建築図面もあり、何より父の記憶がしっかりとあったお陰で、娘である私が今回、見事代理人をやり遂げる事が出来た。
 この一件、近くでサポートしてくれた夫の力が何より大きいが、土地や家の事は記憶にだけ頼れるものではない事が、この件で身に染みてわかった。
 
                             2024/12/31

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ほのほの巻/広島県大崎上島
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