地域に根ざす
夫が立候補した町長選挙が終わって、落選したのでなんだか気持ちが晴れずにいた。
そもそも選挙以前に、私は近所の人の名前もろくに知らない。まずこのことをどうにかしたいと思った。そんな時、地域の集会所で月に1回サロンを開催しているということを聞いた。私は思い切って自ら扉を開いた。
「近所に知り合いも友達もいないので、仲間に入れて下さい!」高齢者の集まりだったからか最初はぽか~んとされたが、代表者だけは「仲間が増えて嬉しいよ。おいで。おいで」と言ってくれた。サロンでは一緒に歌を歌ったり、ご飯を食べたり、ゲームをしたりして過ごす。
それが半年ほどたった頃、社協から電話がかかってきた。「巡回相談員というのがありましてね。70歳以上の1人暮らし、2人暮らしのお宅をまわって、安否の確認をして頂くお仕事なんです。どなたかいないかな~と思っていた時に、岡本さんの顔が浮かびましてね。やっていただけませんか?」そんな成り行きで一応夫にも相談してから「民生委員と協力しながらやっていきます」と言って役を引き受ける事にした。
実際に巡回してみると、名簿にある名前の人がお宅にいなかったりして「奥さんは今一緒におられないんですか?」と確認のために聞いてみた。すると「そんなことはもういちいち話したくない!もっと区長や班長にそれぞれの家の内情を聞いてから、各家庭を回りなさい!」と怒られる事があった。高齢者を巡回すると実際には短期間でも、病院に入ったり施設に入ったりして、結構動きがあるものだと知った。そしていろいろな家庭があり、個人の性格があり歳をとっても人間関係に問題を抱えていたり、わだかまりのある人がいるんだなぁと感じた。
そんなこんなで早3か月、さっきスーパーでの買い物の帰り、駐車場で近所の人に出会った。「仕事?」と聞かれ「はい!草刈りの帰りです」と答えた。「そう!またね。」
近所に知り合いが増えて今まで経験した事のない、地域に根ざして生きるということはこういうことで、なんとも晴れ晴れとした気持ちになるもんだなぁと思った。