#05.【耳鼻科の権威に託す】〜耳鳴りの正体は「硬膜動静脈瘻」実体験レポ〜
硬膜動静脈瘻と診断されるまで
異常を感じ始めたのは2か月半ほど前。30数年間、体感したことのない耳鳴りがし始め、3つの病院の耳鼻科や脳神経外科へ受診に行き、今現在も治療に向けて処置方法を検討している段階。この「硬膜動静脈瘻」という稀な症状について、患者視点で検査までの過程を発信しようと思います。今回はその第5話です。
前回の続きです。
大学病院の耳鼻咽喉科を受診へ
自宅から最寄りの耳鼻科がある
北月医院(仮名)から紹介状を
書いてもらい、数日たった後のお話。
近場で最も大きな都市部の大病院
白鳥医科大学病院(仮名・以下「白大」)の
耳鼻咽喉科を診療することに。
白大は9階建ての病棟が4棟あって、
1階には総合受付やコンビニ、レストラン、
美容室などがある文字通りの大病院。
診療科の数も実に多く、
フロアマップから耳鼻咽喉科を探すのにも
数分の時間を要するほど。
1階の受付カウンターで紹介状を
渡して初診の手続きを進める。
多くの患者が列に並んでいたせいか、
受付職員さん(恐らく派遣社員)の
愛想もどこかしら良くない。(さすが大病院…)
数フロア上の耳鼻咽喉科へ行くよう指示を受ける。
頭上を見上げれば要塞のような吹き抜け。
果たしてたどり着けるのかという心配と
相変わらずの耳鳴りが不安を掻き立てる。
耳鼻咽喉科はかなり奥まった位置にあった。
自分の前に既に10人ほどが診察待ちをしている様子。
付き添いの人もいるだろうから
どれくらい待たされるのだろうかと
その待機集団の端の方に座り、
呼ばれるのを待つことに。
1時間ほどだろうか、1階でもらった
レシートのような紙に記載されている
3桁の番号で呼び出しがあった。
この番号に規則性はないようで
手元の番号を何度も確認して
耳鼻咽喉科のエリアへ入る。
入り口から奥へ進むと
個室になった診察室がいくつもある中で
一番奥の小さな小部屋へ案内された。
小部屋の中には
北月医院と同様に、耳の中を検査するための
特殊な椅子があり、それに腰かける。
30代前半くらいのドクターの横には
20歳前後と思しき女性研修生が
ノートを手に座っている。
右耳の症状について
北月医院同様の説明を繰り返す。
北月医院に通院していた頃と違うのは
耳鳴りに慣れてしまったこと。
症状が出始めて1週間ほどは
自分の耳鳴りの音に夜中目覚めるくらい
気になって仕方がなかった。
耳鳴りの音についても
「キューンキューン」といった音から
「ザッザッザッザッ」といった音に
聞こえる時もあった。
テンポは変わらず脈と連動している様子。
…といったことをドクターに伝えると、
「拍動性耳鳴り」の可能性があるとのこと。
ドクターは、目の前のモニターに北月医院から
渡されたであろうCT画像を表示させながら、
症状について電子カルテに記入を進めている。
発症から日時が経過していることと、
白大の設備で状態を診たいとのことで
白大として再度検査を行うことに。
北月医院でも体験した
防音室の個室にここでも案内され
聴力検査を行った。
これしか検査方法はないのだろうかと
少し落胆もしたが、医大というから
きっと精密な結果が出るに違いないと願った。
検査が終わると、再度呼び出しますとのことで
一旦、待合室へ戻ることに。
30分くらい待った。再度呼び出されて
次に案内された部屋は先ほどと異なり
ドクターも別の方だった。
目の前の白衣の方は、先ほどまでいた
待合室のデジタルサイネージでお顔を拝見した。
長い待ち時間の間、何度も見たから間違いない。
助教授という肩書きのある偉い方だった。
助教授は、CTと先ほどの検査を見た結果、
「先程の検査で、耳の方に特段の異常は見られませんが、
…ところで、まけまなさん鼻が詰まってますか?」
と唐突な質問に、不思議に感じながら
いいえと答えると、次は座ったまま前に屈むようにと指示がでる。
屈んだ状態での耳鳴りの状況や、息苦しさ、
上体を起こした時の違いなど、
これまで対峙してきたドクターと
異なる角度からの質問に、自然と希望が湧く。
再度検査させてほしいと助教授からの提案に、
またもや即答で応える。
さすがは助教授。これだけのやり取りで
何かしらの異常を見つけてしまったんだと、
異常なしと言われてきたこの症状との
付き合いに僅かながら光が見えたような感覚になった。
数十分ほど待ったところで再度の呼び出し。
「耳管機能検査」という名称で、
スピーカー状の管を鼻に、耳栓状のものを
耳に入れ、水を飲み込むといった検査と説明を受ける。
水を飲み込む瞬間に合わせて、
目の前の機械に表示された線グラフが
極端に反応するのが分かった。
分かったのはそれだけ。
この検査で何が分かるのだろうか…。
(恐らく聞いたはずが、さっぱり思い出せない)
と、再検査は数分で終わり、またまた外で待つことに。
さすが大病院、医師も患者の数も北月医院とは桁違い。
検査よりも待ち時間の方が遥かに長い。
みたび、数十分ほどかかって呼び出される。
先ほど説明を受けた助教授の部屋へ案内された。
「大変おまたせしました。検査結果についてですが、
やはり特段の異常は見られないようです。」
内心、ここまで検査したのに!?と驚く。
驚いて言葉にも出ないという状態。
「ただ、最後の耳管機能検査では、僅かですが右耳の方に
左耳と比べて数値の変化が見られました。
日頃から鼻をすすられる癖がお有りですか?」
「(ドキッ)…はい。」
「この数値の変化が、右耳の耳鳴りに直接関わりがあるという
わけではないですが、鼻をすすられる癖がある方は
気をつけて直された方が、耳の機能のためにも良いですよ」
「(耳鳴りとは関係ないのか…)
はい、気をつけます。
耳鳴りはどうすれば良いのでしょう?」
「そうですね、ここ耳鼻咽喉科で言えるところは
耳の機能には異常なしということですが、
ご希望でしたら、脳神経外科を紹介しますがいかがでしょう。」
助教授は続ける。
「北月医院から送られたこのCT画像、たしかにこのあたり
(脳の下辺りを指しながら)に気になるものが写っていますが、
私達では専門外でこれ以上のことは診断できないんです。
ご理解いただけますでしょうか。」
「わかりました。原因をはっきりさせたいので、
脳神経外科での受診手続きをお願いしたいです。」
同じ病院内なのに、このあとすぐという訳には
いかないのだとも説明を受け、1週間後の診療で
予約をとってもらえた。
今回、耳鼻科の権威に診てもらったところ
「耳に異常はなし」ということが分かった。
そうか、原因は耳では無かったのだと。。。
前進したような、後退したような、
なかなか答えまでたどり着けない。
大きな病でなければ良いのだが…と思いながら、
脳神経外科の場所を確認して大病院を後にした。