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詩『怪物』
人の命を吸い付くすべく
どこかの路地裏で待ち伏せしては
本能のままに誰でも殺めて歩く
しかし彼奴は大して脳は使ってない
被害者たちは余りに無防備であるがゆえ
己は狙われないだろうと根拠の無い自信
最悪の事態を考えて見るがいい
あの彼奴の節操のなさを
あの異常な行動力を
彼奴は犠牲者を哀れに思うと同時に
喜びに慄いていた
なにせ彼奴は学ぶ気のない大バカだから
いたずらに凶行を重ねる
彼奴の渇望感欠乏感は切りが無い
神出鬼没
モヤのかかる真夜中の路地裏
フードの下から覗く彼奴の眼は
ブラックホールのようだった
底知れぬ闇に罪なき人々は吸い込まれて行く