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他人と縁を結ぶということ―特別養子縁組:親を他人が決めるということ


 2023/1/18(水):特別養子縁組⑦
 前回、特別養子縁組についての記事で、児童福祉法に記された子どもの養育の優先順位について触れました。
 ※今回の記事は前回に引き続く形で考察しておりますので、良ければ前回のものを読んでから読んで頂けると嬉しいです。(以下から飛べます)

 この子どもの養育の優先順位について、「実親が第一優先」されるあまり、「問題」に見えるような事態が起こっているのも事実です。
 特別養子縁組に向けて家庭に預けられた要保護児童が、実親の意向ひとつで引き離されてしまう…そして数か月後には児童養護施設に再度保護される… 
 また、児童養護施設と実家庭を行ったり来たりしている児童も少なくないのが現状です。
 こんな事態が起きている事実を考えると、現状は改善されるべきだと思います。

 失礼ながら、この里親制度は子どもを守るための制度なのだから、実親や養親の気持ちは一旦置いておいて子どもの心について考えていきます。

 要保護児童の育った環境は養育に適しているとは言えず、その環境で育ってきた児童らは、保護され児童養護施設へと送られます。
 家庭内でいろいろな思いをしてきた子ども達は保護されたからといって「安心」「幸せ」という感情と直結しているわけではありません。突然知らない大人に連れられて子どもたちが沢山生活している環境に、自分の意志とは関係なく飛び込むことになるのです。これは、大人であってもストレスは相当大きいでしょう。しかもその環境がいつまで続くか分からないまま続いていくのです。
 この時の子どもたちの気持ちは、一人ひとりのそれまでの養育環境や親子関係によってもきっと全く違うものだろうし、送致された環境などにもよるでしょう。
 どんな気持ちであっても、想像して思いを添わせるのは大切だけれど、分かったような気になってはいけないものだと思います。

 そして特別養子縁組にすすむ子どもについて言えば、ようやく自分の居場所となった施設から一人だけ離れ、知らない夫婦との関係が始まるのです。これはいかに不安で、怖いものなのでしょうか?
 そんな沢山の気持ちの先に築いた関係を、子どもの気持ちを、「産みの親の意志だから」で無下にしてしまうのは本当に罪深いことだと思います。

 「本来、実親の元で育てるべきだから」という考えは分かるのですが、もっと正しく冷静に「育てるべき親なのか」「育てることのできる親なのか」の見極めをすることを願って止みません。
 「本来育てるべき親」「子どもを奪った」などの思い込みを捨て、「子どもを守る」ことを徹底的に追求することが必要だと思います。
 実親へ子どもを返すなら、カウンセリングなどだけではなくきちんとした治療や就業支援、生活面の指導や教育を…言葉はきついかもしれませんが、子どもを守るためには、「実親だから」と優遇しておもねるのではなく、ある一定の養育ができない親には、教育による養育感覚を育てるまで返さない覚悟が必要なのではないでしょうか。

 また同時に、里親になる大人への適切な指導と見極めも大切であり、今の研修制度では足りないと考えます。
 研修前の一対一のガイダンスの時に、「養親の方も、やっぱり無理って子どもを返す方も多いんです。性別が違うとか、思ったより大変とか…」と担当の方がこぼされていました。
 厳しいかもしれませんが、こんな現状はプロとして恥じるべきだし、このような大人に子どもを預け、子どもの心を傷つけた…という当事者意識が足りないのだと思うのです。堂々と里親希望者の私に、被害者のような顔を見せているのはおかしいと思うのです。
 そして同時に、今私たちが受けた研修では「縁組がこんな大変だと思わなかった」という養親が出てきた現状にも頷けてしまいます。もっと子どもを受け入れることの厳しさを、子どもの心に寄り添うことがいかに大変なことなのか…ということを伝えたうえで養親になれるかどうかの見極めをしていって欲しいと願います。
 どうか、気を遣う相手を間違えないで欲しいものです。
 日本という社会の価値観が、国民の当事者意識が少しずつ変わっていくことを願って、その日まで考え続けていきたいと思います。

今日はここまで!
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
今日悲しい思いをしている子どもが、明日笑えますように…

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