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<セミナーレポート>「革」「レザー」と呼べる製品は、動物由来のものに限定すると、JIS規格で規定されました。

2024年5月24日、東京レザーフェアの会場で行われた、新たなJIS規格の説明会に参加してきました。

私は以前から「合成皮革なのに〇〇レザーと謳っているもの」を目にするたびに「レザーではなくない?」と思っておりました。そんな中、『「革」「レザー」と呼べる製品は動物由来のものに限定するとJIS規格で規定されたらしいぞ』という話を聞き、X(旧Twitter)にポストしたところ思わぬ反響が。

皮革関係者はもちろんのこと、一般消費者からも「すごく紛らわしかったからよかったー」とのお声が多数。その反面、
『フィッシュレザーは動物由来に含まれるの?』
『”フェイクレザー”はどうなんだ?』
『法律じゃないから規制はできないんじゃ』などなど
疑問もたくさん寄せられました。今回このJIS規格の規定に関して一般社団法人日本皮革産業連合会から説明会がありましたので、その内容をレポートしたいと思います。

なお、私は特にこの規定に関わっている人間ではないので細かいご質問にはお答えできません。もし間違っているところがあれば関係者の方ご指摘くださいね。
また本レポートは業界関係者というよりは一般の方に向けて書いております。

はじめにJIS規格について

JIS規格とは日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格のことです。あくまで適応される範囲は日本国内のみ。
また国際規格も存在し、こちらはISO規格といいます。
(ISOとは、スイスのジュネーブに本拠地がある国際標準化機構のこと)
JIS規格はISO規格を基にして規定されています。なので基本的にはISO規格内で規定されている用語などを踏襲しています。

JIS K6541の制定

今回のJIS規格で"Leather(革、レザー)"の定義がなされたのは、世界的にに動物由来のものを意味する"Leather"という単語が本来の革以外にも濫用され、消費者への誤解や混乱が大きくなったことに起因します。
皮革業界はもちろんのこと、特に消費者センターや百貨店などの小売店からの要望により現場の混乱から消費者の保護が必要と判断されたのが大きいようです。
皮革業界の声だけだときっと取り合ってはもらえなかったんでしょうね〜

ちなみにJIS K6541は経済産業省の実態調査から始まってから約3年、20以上の協会団体が集まって協議の結果、制定されたとのこと。

今回定義された内容

今回のJIS K6541では用語の定義が目的となっています。全部で34個の用語の定義がなされていますが、一般に関係がありそうな内容は以下の通り。
今回の説明会でも全部を説明する時間はないのでポイントだけ解説されていました。

一般社団法人 日本皮革産業連合会 資料表面
一般社団法人 日本皮革産業連合会 資料裏面

ここからは説明会での質疑応答の内容を踏まえて上記の補足説明をしていきます。

Q 動物由来の範囲は??

こちらは事前のX(旧Twitter)でもチラシに哺乳類のイラストしか載っていなかったため『フィッシュレザーはどうなんだ?』と言う質問がありましたね。
結論から言うと”なめし”と言う工程を経て「革」になっているものであれば哺乳類だけでなく爬虫類や魚類も含みます。
あくまでキノコや植物とは違うよってこと。

Q ”フェイクレザー”はどうなんだ??

これまでの運用だと「フェイクレザー」は消費者から見ても"Leather(革、レザー)"ではないってのは分かるのでOKな気もしますが、質問したところ、フェイクレザー、PUレザー(ポリウレタン樹脂製)、PCレザー(塩化ビニル樹脂製)などの表記は全てダメ。理由はレザーという単語を使っているから。
また「合成皮革」「人工皮革」については皮革という言葉が入っているものの、JIS K6541内で定義されているため使用OKとなります。

Q 商標登録されているものはどうなんだ??

すでに商標登録されているものは商標としては登録されているのであくまで商標(商品名)としてのみ使用可能です。ただしJIS規格ではレザーとしては認められないので商品説明として使用するのは不可。
では注釈として記載するべきか?と質問もありましたが、それについては消費者庁の範囲ですとの回答でした。
商標としては認められているから使っていいけどJIS規格では認めてないのでそれで消費者に混乱をきたし訴えられた時は消費者庁の判断に従ってね、ということでしょうか?ここら辺はふわっとしたまま終わったので(あくまでJIS規格では言葉を明確化することのみなので)ケースバイケースになるのでしょう。

Q そもそも強制力はあるのか??

JIS規格そのものに法的強制力はありません。が、法規の中で規格が引用されている場合にはその規格にも強制力が発生し、違反すれば罰則が課せられるものもあります。
では今後JIS K6541を基にした法規制がされる予定はあるのか?と質問したところ法改正のハードルはとても高いとの回答でした。法的強制力まで手に入れるのは難しそうです。
では「法的強制力があるわけではないからうちはJIS規格を採用していません」で"Leather(革、レザー)"を使い続けることはできるのか?というと、小さな事業者であればそういうところも出てくるでしょう。
ただし百貨店や大手企業(商社)などはJIS規格を遵守するので小規模事業者でも大手との取引(百貨店のPOPUPや卸など)の際にチェックされると思います。

Q 海外製品を輸入した際に”Apple Leather”とあるのだが??

海外製品で”Apple Leather”と表記されていたとしても日本に入った時点でJIS規格が適用されるので「アップルレザー」と直訳しただけだとしてもダメです。
じゃあどう表記したらいいんだ?と、現在アップル・キノコ・サボテンなどを使用している人たちは思いますよね。その答えは「自分たちで考えて」です。
正しい表記の定義があるわけではないため表記の仕方は各社で考えてくださいとのこと。
おおぅと思いますよね。まあ私もその立場だったらそう思うでしょう。しかしJIS K6541はあくまで"Leather(革、レザー)"の定義を明確にしているだけなんで、レザーじゃないのにレザーと呼んでいたものの面倒まで見れんよというのも分かる、、
今の所有力なのは「〇〇ファイバー」でしょうか?先にも述べたように「合成皮革」「人工皮革」は使えるのでこれらで代用するのが一番安全とは言ってました。新しいネーミング考えるって難しいですよね。

皮革繊維再生複合材

こちらは今回新しく登場した用語。取っ付きにくい印象はありますが、革のなめし工程や製品の裁断後に出る残革を集めて粉末状にし、シート状にしたものを指します。(樹脂などの使用有無にかかわらない。粉砕した革を乾燥質量で50%以上配合していることが条件。)
皮革繊維再生複合材は主材料が皮革繊維なのでアップル・キノコ・サボテンなどは該当しません。
また最初に定義した"Leather(革、レザー)"とも違うので「再生革」や「リサイクルレザー」という用語は使えません。しかし革の繊維を使用しているので「レザーファイバーボード」や「ボンデッドレザーファイバー」とは言えます。こちらはISOで定義された単語だそうです。

エコレザー

こちらは少々ややこしいのですが革の種類を示す言葉ではありません。
エコレザーとは、皮革製造において環境配慮のため、使用する薬品の検査等をクリアし、排水や廃棄物処理などが法令に遵守していることが認められた、エコレザー認証を受けたものを示しています。

最後に

新しいJIS規格について少しはお役に立ったでしょうか?
詳細については当JIS K6541の項目を見てくださいとのことでしたが、経済産業省では2024年5月時点ではまだ1月に制定されたJISの情報までしか出ていないようです。JIS K6541の制定は3月なのでもう少々時間がかかるかもしれません。
とりあえず一般認識の範囲であれば上記の内容で事足りるかと思います。
概ね皮革業界の方々は今回のJIS規格が制定されて良かったねという言葉ばかりでした。逆に革以外で「〇〇レザー」と言っていた事業者は今後の対応を考える必要があるかと思います。
革には革の、合皮には合皮の良さ(メリット)があります。りんごやキノコからモノが作られるというのも面白いですしね。
それぞれの業界が反目するのではなく、でも消費者に対しては誤解のないよう、上手く共存していけたらいいですね。
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