あなたがだいちゃん、僕はジョン
先日、誕生日を祝ってもらった。
温泉旅館に連れて行ってもらって、比較的、普段自分にお金を使わない生活をしてる僕にはかなりいい思いをさせてもらった。
ご飯は豪華だし、山の匂いは気持ちがいいし、部屋の雰囲気も情緒がありとてもよかった。ご飯は豪華だし。
旅館内の話もいろいろとあるのだが、話は宿泊した次の日のこと。
チャックアウトが11時くらい、東京へ戻るバスは13:30かそれくらいでおおよそ3時間くらい潰さないといけなかった。
正直なところこの辺りは旅館以外は景色を見るくらいしかやることがない。
温泉から少し歩くとお店が点在する小さな商店街につくので、そこで時間を潰そうという話になった。
いくつか古いお土産屋さんがあり、古い作りのガラスが嵌められた扉やいつ仕入れられたのか見当つかないくらいデザインの古いおもちゃが置いてあったりといい雰囲気を醸し出していた。
ご飯屋さんが見当たらないから時間潰すにも限界あるなーと思っていた時である。
「陶芸体験やっています」
御誂え向きなことを書いている工房がある。
外から覗くとちょうどカップルが手捻りで土を成形してるのが見えた。
僕はもともとモノを作るのが好きで陶芸童貞は21の時に捨てている。
その時はろくろを回したのだが、先生に「難しいから土をまっすぐ伸ばすだけにしておこう」と言われたのをガン無視して自分の手に合うくびれを作ったりしてとても満足のいく作品ができた。
ので、
久しぶりに土をいじりたい気持ちが生まれていた。
中に入ってみるとなんのレスポンスもない。
とりあえず入り口に展示されている作品を見て、
「ほうほう、こんなのがつくれるのね」
みたいな会話をしていると
「体験希望ですか?」
と僕から見ても大きめな男性が声をかけてきてくれた。
ちなみに僕は179cm身長があるので彼はもうちょいありそう。
「そうですね、おねがいします。」
「じゃあそっちに掛けて座っていて。」
大人しく作業台にエプロンをつけて座った。
少しすると土を持ってきていろいろと時間の説明やら工程の説明をしてくれた。だいたい60~90分くらいかかるらしい。
バスの時間を考えると結構ちょうど良さそうで、いい時間つぶしになるなと思いながら聞いていると
「僕のこと、だいちゃんって呼んでみる?」
と聞かれた。「〜みる?」が耳に残る。
"こいつぁ、絡みずらいやつがおいでなすった"
と思ったが、ひるみたくなかったので
「じゃあよろしくです、だいちゃん」
と返すと
「じゃあ君のことはジョンって呼んでいい?」
なんでだよ。
まあ好きに呼べばいいさ。
「おお、OK。じゃあ、あなたがだいちゃん、僕はジョン」
「。。。」
ここはスルーかよ。
最後まで面倒見てくれ。
だいちゃんに絡まれつつ一通り作業手順を聞いたので黙々と作業をする。
すると、即対応が必要な仕事の連絡がきた。
PCは携帯しているので、ちょっと行儀が悪いがだいちゃんに断ってささっと対処してしまおう。
その時にはだいちゃんは事務所スペースにいたので、そこに顔を出して
「だいちゃん!ちょっと急用でPC開いて仕事しなきゃならないんだけどいい?」
と確認をした。
「いいよー、手は外で洗えるよ」
せんきゅーだいちゃん。恩に着るぜ。
仕事はそこまで苦戦せずにささっと終わらせ、遅れた分を取り戻すようにまたもくもくと土をいじっていた。
コップの形を成形し、ぬらした皮で土の表面をなでることですべすべにしていく。なかなかいい感じだ。
その間だいちゃんは
ジブリの都市伝説
だいちゃんって結構面白いんだよね
自分の作った作品の紹介
など話していた。半分くらい聞いていた。
作業も仕上げにかかる時に、ふと、
「さっき、事務所にいたらジョンが僕に向かって"だいちゃんパソコン使っていい?"って聞いてきたんだけど、びっくりしちゃってさ。めちゃくちゃフレンドリーにきて、友達が訪ねてきたかと思っちゃったよ。
いやー、なかなかジョンは変な人だね」
ええ?!!えええ??!!
「僕のこと、だいちゃんって呼んでみる?」
って言ってたよ?!
最後までからみにくいだいちゃんだった。
*だいちゃん話しすぎで2時間かかったのでバスにはわりかしぎりぎりだった。