丁寧さが伝わる映画~映画『ロスト・フライト』感想(ネタバレなし)〜


(以下、映画『ロスト・フライト』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレはありません。ただし、映画に関する情報を出来るだけ入れないで鑑賞したいという方はご注意ください。)


作品内のセリフのように、「一つ一つ着実に。」という言葉通り丁寧に作った良作という印象です。

まず、登場人物の造形が、一人一人緻密でリアリティがあります。
主役の機長トランスを始めとするパイロットや客室乗務員は、実際に何年も航空会社で働いているかのような自然なやり取りや仕事ぶりを見せています。パンフレットによると、ジェラルド・バトラーは、飛行機の仕組みとコックピットのことを勉強し尽くして撮影に臨んだそうで、その努力はしっかり映画に反映されていると思います。
そして飛行機の乗客の面々についても、飛行機が離陸する前のちょっとした会話や仕草で、それぞれの性格や、同行者との関係などが端的に説明され、単なる群衆ではなく、観客が感情移入できる血の通った人物として見ることができました。傭兵チームの面々は元ネイビーシールズの俳優が選ばれているとのことで、どうりで銃の構え方に説得力を感じたわけだと納得です。


さらに、物語の展開に無理がなく、自然に世界観に入り込むことが出来ました。
「なぜ悪天候の中を飛行機が飛ぶことになったのか」
「落雷によって飛行機のどの部分が故障したのか」
「航空会社はこの場合どのような対応をとるのか」
「乗客が飛行機の中に留まらず(ゲリラに見つかりやすい)外に出なければならない理由」
「機長とガスパールだけ皆と離れた場所にいる理由」
などなど、普通なら何となくの描写で済ませてしまいそうな細かい箇所も、きちんと丁寧に描いていて、見ていて冷めてしまうことがありません。航空パニック、反政府組織との戦い、島からの脱出などなど、様々な要素を一つのストーリーに破綻することなく組み込む手腕にも感心しました。

派手な見せ場は少ないものの、最後までハラハラドキドキする満足度の高い本作。ぜひ多くの人に見て欲しいなと感じました。

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