丸いのはイイことよ(一人輪読会)
今回は環状タンパク質とその技術応用についてのレビュー+論文
環状タンパク質とはタンパク質のN末端とC末端が結合することにより文字通り環状になったタンパク質のことを指す。1つ目のレビューではどのような環状タンパク質があるかに加えてそれらの構造的な特徴について解説している。
まず個人的な驚きであったのが、哺乳類の中にも環状タンパク質が存在するということだ。進化的に見れば単細胞生物に存在するのであれば多細胞生物である我々にも存在するのは当たり前と言えば当たり前ではあるが、実際ほとんどお目にかかったことがなかった。このレビューではRhesus theta defensin-1(RTD-1)が主に挙げられている。
このレビューで繰り返し述べられているのは、環状タンパク質が構造よりも安定性に重点を置いているという点である。エキソペプチダーゼなどに認識されないことからも分かるように末端がないというそれだけですでに分解機構からの逃避能力があると言える。さらに、多くの環状タンパク質には複数のS-S結合が含まれており、さらに安定性を高める結果となっている。
合成生物学からの視点について
先に述べた環状化を合成タンパク質に応用することについて終盤では論じられている。このレビューでは2つの方法が挙げられている。
①ペプチド固相合成においてResinを用いる
②Split inteinによる細胞内での自動的なprocessing
このうち②のsplit inteinを別々のタンパク質に結合させることで共発現によりtTAを再構成したのが2つ目の論文である。transactivatorを増やすことなくdissectionを行うことができた点で新しいが技術自体はかなり昔からあったということだ。他にも環状化することで3次元構造を崩すcyclic luciferaseなるものも存在する。(これは切断によりlinearになることで活性が復活する)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.200700538
以上環状タンパク質の全体像についてであった。古くから知られているものの応用は最近でも行われてることから今後にも期待できるかもしれない。
追伸:シクロスポリン(免疫抑制剤の一つで真菌から作られる)は環状ポリペプチドだと知らなかったことをここに懺悔します