見出し画像

文系学徒は、正解のない世界を漂う

「文系の学生は楽でいいよね」とか言われる。私自身、文化人類学を勉強している「文系生徒」に分類されるはずだ。

そういえばこの前インスタグラムを眺めていたら、「大学で一番単位がとりやすい、簡単な学部はなーんだ?…正解は、文化人類学部!!」という動画も流れてきた。

その動画を見て私が一番に思ったのは
「でも私、こんなに苦しんでるのに!!」だった。理屈じゃない。感情である。
私が苦しんでいるのは、私が、頼まれてもいないのに母語じゃないフランス語で勉強しているせいもあるだろうから、自分の蒔いた種でもあるが、それはそれとして。

私は日本で大学生をやったことがないので日本での状況に対しては解像度が低いのだが、
文化人類学ないし文系学問が楽だと言われる理由に心当たりはある。

第一に、化学をやっている友達みたいに実験をして長い時間大学に拘束されることは少ない。授業数も理系より少ないことが多いようだ。

そして、例えば特に文化人類学では正解のない問いを出されることが多い
(前学期の「人類学と芸術」という授業の期末テストでは、「なぜ人間はマカロニではないのか?」という問いに2時間向き合って論文を書いた)。


生徒が正解のない問いに向き合えば、教授だって採点基準を統一するのは難しいだろう。そうなれば、テストでは必然的に、生徒をなるべく合格させる方向に傾くのだろう(とか言って答案に合格点をもらえないこともよくあるし、留年する生徒もまあまあいるのだけれど)。

例えば私が現在ゆるーく(まだ学士生徒なので)研究テーマにしているのは「マイノリティーは各社会でどのように受け入れられているか?」である。この目的は「どうすれば社会は上手くマイノリティーを受け入れていけるか?」だし、もっと広く言えば「世界はどうすればもっとよくなるか?」である。

でも「どうすれば世界がより良くなるか?」なんて問いは、私が考えてみても一朝一夕に答えは出ない。そんなに簡単に答えを出せるなら私は、とっくにノーベル平和賞とかもらっているでしょ

でも私は私なりに考えている。授業で習った、ボアズの文化相対主義とか、レヴィ=ストロースの構造主義とか、先人が確立した思想を拝借したりして、世界を自分なりのやり方で捉えようと頑張っている。



…さて、果たして文系生徒は楽なんだろうか?
私は理系大学生をやったことがないから、正直分からない。

(それでは果たして「文系が楽だ」という人の何割が、大学で理系学問と文系学問両方の経験を経ているのだろう?)

いいなと思ったら応援しよう!