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全身脱毛戦国時代!ツルツル男子がモテる時代に抗う、俺の毛深きアイデンティティ
東京の繁華街にある、男性用脱毛サロン。
その入り口には、若い男性たちが列をなしていた。
彼らの目は真剣そのもの。全身脱毛を終えた後の自分を想像し、
期待に胸を膨らませている。
「ツルツル肌こそがモテる秘訣!」というキャッチフレーズが、
街中に溢れていた。
そんな時代の流れに、22歳の大輔は強烈な違和感を覚えていた。
彼は身長185センチ、高校時代から鍛え上げた筋肉質な体を持つ自他ともに認める“ガタイのいい男”。
さらに、胸毛や腕毛、脛毛までしっかりと生え揃った「毛深さ」こそが、
彼のアイデンティティだった。
大輔の理想像は、昔のアクション映画に出てくるような、
ワイルドでたくましい男。
「毛深さこそが男の魅力だ」と信じて疑わなかった。
しかし、最近のトレンドは真逆だった。
友人たちは次々と全身脱毛を始め、SNSには「#ツルピカ男子」
「#モテ肌革命」といったタグが並ぶ。
「男もツルツルじゃないと、女ウケしない」と
言われるたび、大輔は心の中で反発していた。
そんなある日、飲み会で友人の一人が言った。
「大輔、お前もそろそろ脱毛しないとヤバいぞ。
時代遅れだって思われるぞ!」
「いや、俺はこの毛が好きなんだよ」と大輔は答えたものの、
心の中には少しだけ不安がよぎった。
「本当にこのままでいいのか?俺は時代に取り残されているんじゃないのか?」
数日後、大輔はついに脱毛サロンの体験コースに足を運んだ。
受付の女性スタッフが満面の笑みで迎える。
「いらっしゃいませ!全身脱毛をご希望ですか?」
「え、ええ~」と、大輔は少し戸惑いながら答えた。
周りを見渡すと、サロン内には同年代の男性たちがリラックスした
様子で施術を受けている。
「こんなに普通のことなんだ」と驚きつつも、どこか違和感を覚えた。
施術が始まると、大輔の体から次々と毛が消えていく。
鏡に映る自分の姿は、まるで別人のようだった。
「これが新しい俺なのか?」
施術を終えた大輔は、ツルツルになった自分を友人たちに披露した。
「ほら、見てくれ!」と自信満々にシャツを脱いで見せると、
友人たちは大喜びした。
「お前、めっちゃイケてるじゃん!これで女の子にモテモテだな!」
だが、その夜、鏡を見つめる大輔の心はどこか空虚だった。
「これで本当に良かったのか?」
数日後、大輔は久しぶりに実家を訪れた。
祖母が出迎えてくれたが、彼のツルツルの肌を見て少し驚いた様子だった。
「どうしたんだい、大輔。前は毛深いのが自慢だったのに」
「いや、最近はこういうのが流行りでさ」と、
大輔は苦笑いを浮かべた。
すると、祖母は優しく微笑みながら言った。
「流行なんてすぐに変わるものだよ。でも、自分の個性は一生ものだ。
大輔は大輔らしく、胸を張っていればいいんだよ」
その言葉は、大輔の心に深く響いた。彼は思い出した。
胸毛も腕毛も脛毛も、すべてが自分の一部だったことを。
それを誇りに思っていた自分を。
翌日、大輔は決意を固めた。
「俺は俺だ。ツルツルじゃなくてもいい。自分らしさを大切にしよう」
友人たちにその決意を伝えると、最初は驚かれたものの、
次第に理解を示してくれた。
「まあ、確かにお前はそのままでもカッコいいよな」と言われ、
大輔は少し照れくさそうに笑った。
「ツルツルの時代」は続いている。だが、大輔はもう迷わない。
どんな流行が来ようと、自分らしさを貫くことが一番大切だと気付いた。
「俺の毛は、俺の誇りだ!」
そう胸を張る大輔の姿に、時代の波に流されない本当の自信を見た気がする