Kamiyama

見つけて下さりありがとうございます。 2024/7/23~開始 忙しい人類のためにショートショートを作ります

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最近の記事

【ショートショート】憧れの一軒家

今年で50歳、かなり周りに遅れを取ったが遂に念願の一軒家を手にした。 「おめでとう、あなた……。これで少しは生活が楽になるのね」 22歳の時に結婚した妻には、ここまでかなりの迷惑をかけた。 当時はお金も無く、働いては税金に持ってかれる日々。 思い返せばあの時代から、日本の経済は資本の分散化が進んだのであった。 2040年代半ば、日本の生産年齢人口減少がピークを迎えた。加速する地方都市の崩壊に伴い、国から出されたのはとある施策だった。 『一家族十戸建て政策』 世帯主に対し、

    • 【ショートショート】3週間後の未来人

      家に帰ると自分が座っていた。 「おかえり」 いや、おかえりじゃなくて。これは一体どういう状況なんだ? 余りにも現実からかけ離れた現象は、驚きよりもより冷静さを与えることが分かった。 「……ホントに俺…?」 「うん。ってかそれは俺自身が一番わかるだろ」 まぁそうなんだけれども。 くしゃくしゃの頭に、特徴的な鼻。少し笑った時に出る右頬のえくぼ。 誰がどう見たって俺自身だった。 「俺は、未来から来たお前だ」 一度言って見たかったんだと言わんばかりの、決め顔でこちらを見つめる自分

      • 【ショートショート】お弁当箱のパラドックス

        「わっ!由紀のお弁当すごーい!」 お昼休みのチャイムと同時にお弁当箱を広げると、そこには豪華おかずが広がっていた。 ハンバーグ、エビフライ、卵焼き。一流選手揃いだ。 「しかもそれ全部手作りじゃない?あんたのお母さん毎日凄すぎるよ」 恵は羨ましいと言いながら、菓子パンを口に頬張る。 「昨日の余りもあるし、たまたまだよ。お父さんとお姉ちゃんの分も一緒に作ってるし」 口では謙遜しているが、実際にうちのお母さんは凄いと自負している。自分が学生時代の時に毎日購買のパンを食べていて、「

        • 【ショートショート】飛び降りアパート

          「ここもお気に召しませんか…」 明らかに疲れた顔で男はため息をついた。 ほんの数時間前に会ったときには「あなたの理想の物件が見つかるまでお付き合いさせていただきます」と意気込んでいたが、今はその見る影も無い。 部屋探し3日。自分で設定した条件で理想の部屋はそう簡単に見つからないことを思い知らされた。 手当たり次第理想の部屋を探し、本日5件目の内見。残念ながらここも空振りに終わりそうだ。 「…1点よろしいでしょうか」 西日が差す部屋の窓際で、男が物言いたげな顔でこちらを見て