茶懐石の「おもてなし」
第一章: 茶懐石の心と四季の移ろい
茶懐石は日本の食文化の精髄とも言える存在で、ただの料理以上に豊かな感性とおもてなしの心を含んでいます。堅苦しい作法や難易度の高い料理という先入観を捨てて、茶懐石が持つ合理的で美味しいエッセンスの宝庫を感じてみてください。
茶懐石の心は、正式なお茶事の席でいただくだけでなく、日常の食卓にも息づいています。四季折々の食材を使い、その時々の季節感を大切にすることで、私たちの生活に彩りを与えてくれます。食材に触れるたびに、季節の移ろいを感じ、器や盛り付けの美しさはもちろん、光や風をも感じさせてくれる茶懐石の心は、疲れた体と心を癒してくれます。
第二章: 一期一会のおもてなし
茶懐石は、お茶事で提供される料理で、「一期一会」の心で亭主が献立を考え、心づくしの料理を作ってお客様を招待します。一汁三菜が基本の型であり、一汁とは最初に折敷に乗せて出される味噌汁のことです。折敷には、ご飯と汁椀、そして向付け(お造り)の三点が乗っています。
次に椀物(煮物椀)、焼き物が続きます。茶懐石の焼き物は主に焼き魚で、素材によっては揚げることもあります。ここまでが一汁三菜で、時には「預け鉢」や「強肴」として、炊き合わせや和え物、酢の物などが追加されることもあります。最後に箸洗い、八寸、湯斗、香の物が出され、お湯漬けをいただいて終了となります。
第三章: 茶懐石作りの心得
茶懐石作りに入る前に、覚えておきたい心得があります。
食べやすさも味のうち
箸でつかみやすい、口に運びやすい、噛み切りやすい、飲み込みやすいという「食べやすさ」も味の一部です。旬の食材を見極める
旬の食材は最も美味しいので、その季節に自然に取れるものを選びます。趣向に沿った献立を考える
趣向と献立の内容が結びつかないようではいけませんが、捕らわれすぎてもいけません。要所にピントを合わせるくらいが良いです。四季の変化に応じた味付け
気温の感じ方が日によって異なりやすい春や秋には、その日の皮膚感覚を大切にした味付けや調理法を考えます。下ごしらえの方法を間違えない
料理は下ごしらえを間違うと、似て非なる物になってしまいます。ひと手間かけることが大切です。余すことなく使いきる
新鮮な食材を選び、捨てるところがほとんど無いように使い切ります。調理中は常にたっぷりの湯を沸かしておく
大なべにお湯を沸かしておくと便利です。特にお茶事の時は、効率よく進められます。茶懐石の基本は一汁三菜
ムダなことをしない盛り付け
見た目が華やかになるからといって余計な飾り付けをしないようにします。品の良い器、料理を引き立てる器
料理と器が互いに引き立てあうことが重要です。おもてなしをスムーズに運ぶには
台所の道具を整理し、準備を整えておくことが大切です。食べ歩きも大切な勉強
美味しい料理を作るためには、食べ歩きも勉強の一環です。何故美味しいのかを考える機会を作ります。
第四章: 茶懐石の味と技
味噌汁の極意
茶懐石の味噌汁は、一番だしに味噌を溶いて仕上げます。白味噌や赤味噌、それぞれの特徴を生かした出汁を使い、具を別鍋で温めるなど、丁寧なひと手間をかけることで味が引き立ちます。
ご飯の楽しみ
茶懐石のご飯は、炊き始めから炊きあがり、おこげまで、四度に分けて味わう楽しみがあります。炊きたての一文字ご飯から、十分に蒸れた状態のご飯、そして最後に漬物と一緒に出すおこげまで、それぞれの段階で異なる美味しさを楽しむことができます。
茶懐石は、日本の四季の美しさや自然の恵みを感じさせる料理です。丁寧に心を込めて作ることで、おもてなしの心が伝わり、食べる人に感動を与えることができます。日々の暮らしの中で、茶懐石の心を取り入れることで、豊かな食卓を作り出すことができるでしょう。