みつ

引退した元制作進行です。  昔の現場の事などを思い付くままに書いて見ようと思います。

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引退した元制作進行です。  昔の現場の事などを思い付くままに書いて見ようと思います。

最近の記事

機動警察パトレイバー 劇場版 3

昭和アニメ地獄 金(予算)がねえ!時間(スケジュール)がねえ!知名度が無ければ人手もねえ!と云う訳で、無謀とも言える制作現場はスタートした。 斯くして圧倒的マンパワー不足を補うべく、最前線の僕らは何でもやった。やらされたのでは無い。やらざるを得なかったのだ。 まぁ、この頃の制作進行なんて何処でも似たようなものだったので、数々の雑用をこなすのは通常業務範囲内だとも言えるのだが、加えて僕が担当したのが演出助手…的な、処理係だった。 これが何と言うか、実にキツかった。このスケール

    • 機動警察パトレイバー 劇場版 2

      驚異のカット数 さて、本編尺99分の本作品。総カット数は806しかない。通常テレビシリーズ1本の正味尺が21分前後で350カット前後(注1)なので、如何に少ないかがお分かりいただけるだろうか? 制作上の進行は、このカット単位で管理される。「何だ、じゃぁ少ない方が楽じゃん」と思われるだろうが、さにあらず。同じ尺ならカット数が多い方が現場は俄然楽なのだ。 まず、カット内の芝居が増える=カット辺りの枚数が増える。作画の負担が増し、時間がかかる。 動画やペイント等の負担も増えるし、

      • 機動警察パトレイバー 劇場版 1

        当時の僕は入社してまだ半年そこそこ。今でこそ大手と言われるようになったプロダクション・アイジー(当時はアイジータツノコ)も創立1年と少しで、弱小どころか数人でどうにか回しているような極小孫請スタジオだった。そこへ降って湧いたような劇場作品制作の依頼。(注1) 当時は今と違い、劇場オリジナル作品はとても少なかったので、非常に希少で重責な機会だった。 ある日、ここが正念場とばかりに士気を高めるため、かき集めたスタッフを一同に介しての決起集会。押井守監督(以下カントク)の抱負と意気

        • はじめに

          近年になって、何度か劇パト1・2や攻殻機動隊のリバイバル上映の記事を目にした。最早古典と言ってもいい位昔の作品が何度も再上映される程根強い支持を受けていることに、関わったスタッフとしては感慨深いものがある。 自分でも定期的にBDなどの円盤で見返しているが、現在のアニメ制作現場は当時とは全くと言っても良い程違っており、昔の泥臭い、と言うか絵の具臭いスタジオを思い出しては、血反吐を吐く思いで作った当時を振り返り、数々の失敗やできなかったアレコレを後悔したり、しなかったり… 昔は良