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令和大和絵「花魁と唐獅子」


令和大和絵シリーズ「花魁と唐獅子」
#浮世絵 #大和絵 #あやかし

三十年にわたる年季がいよいよあがるその花魁は希望の光を見失っていた

奇跡的に身体はどこも傷んでなく、若い頃、吉原一と評判をとった稼ぎで、ささやかな茶店でも営もうかとも思うが、そんな気力は湧いてはこなかった

ただもうひたすら稼ぎをあげ、借金を減らして少しでも早くこの街から逃げ出す事だけを考え、そのために自分を磨き続けてきた。

花魁はそっと自分の手を見つめる
この頃は細かな皺が目立つようになってきていた。
たとえ年季が明けようとも、自由の身になろうとも、年老いてたった一人でいる事に何の意味があるというのだろうか
秋は深まっていき、冬の曇天に震える梢が骸骨の手のようだった

男は五十を少し出た初老で、短く刈り込んだ頭髪はごわごわに固まりいかにも長い年月潮にまみれてきた、海の漢然とした身振りだった。傷だらけの顔の上、右目は縦一文字の刀疵で潰れた隻眼。いかにも魚をとるような生やさしい生き方ではなかった事が明らかだった。

 花魁どもが皆怖がって相手をしたがらないのを見て、年期明け近いその花魁は自ら名乗り出た

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