健康的なバターに出会う、ずっとずっと前の話5~私の恋愛黒歴史~
15. 2015年8月
▶Previously on Majimena Butter
彼との連絡が途絶えて、
2年。
友達の結婚式で出会った男と別れ、
少しずつ回復しつつあった時。
突然、ケータイに登録していない番号から
電話がかかってきた。
悲しいことに、
その電話番号は私の頭の中に刻まれていて、
誰から電話がかかってきたのかがすぐ分かった。
彼だった。
「もしもし…。」
「なんだよ、出ないかと思った。
元気してんの。」
B'zの曲で、
「ほんの最初の一声で スイッチが入り
時間も距離も あっという間に縮んでゆく」
という歌詞があるんだけど、
まさにその通りだった。
何事もなかったかのように、
ただの同期だった頃に戻ったかのように話ができた。
「お前そういうとこあるよな〜ゲラゲラ」
「うるさい、あんたに言われたくないわー」
くだらない話をし続けて1時間ほど経って、
また彼が唐突に「お前に会いに行くわ。」
と言いだした。
数日後、彼は本当に私の街まで会いに来た。
彼は、私のアパートから徒歩10分の場所に、
ホテルを取っていた。
近場で食事を済ませ、
当然のようにコトにおよんだ。
夜もふけていたが、
やっぱりホテルに泊まるのは変だと思い、
自分のアパートに帰ることにした。
彼は「送るよ」と言って、
2人で夜の街を歩いた。
アパートの前まで来た時、ふと考えた。
2年経って、
以前より図太くなったのかもしれない。
今更、私に失うものもないし、
これまで聞けなかったことを思い切って聞いてみた。
「何で会いに来たの?」
「何でって、別に…。」
「うちら何してるん?」
「…いやさ、今日久しぶりに会ったばっかだし、
今すぐはわかんないじゃん。」
「…。」
「俺さ、ほんとめちゃくちゃ傷ついたんだよ。
お前と先輩のことで。
あいつは女たらしだからダメだって、
前から俺言ってたのに、
何でヤっちゃうの?
正直、あんなことあったら、
お前のことを心から信頼できるか、
ちょっとわかんない。」
…ちょっと待て、私が全部悪いのか?
いや、もちろん、
共通の知り合いとそういう関係になってしまったのは、
誇らしいことではないけれど!!
でも、私との関係に
これまでずっとコミットしてこなかった
あんたも悪いでしょうが。
そもそも私たちは付き合っていないんだから、
私が誰とヤろうが、私の勝手じゃないのか。
私を浮気者扱いするのは、
おかしくないか。
2年経っても、
まだ私のことを責め立ててくる彼を目の前にし、
なんだか目が覚めたような感覚だった。
「わかったよ。」
私はそう言って、
彼には帰ってもらった。
次の日も彼に会ったが、
彼との関係がどうなったって、
もういいや、と思った。
そして午後、彼は東京へ帰った。
彼が東京へ戻ってからすぐ、
珍しく電話が来た。
いつもはメッセージすらよこさないのに。
彼はこれからも、
「月に1、2回くらい会えればいいなぁ」
「私の街と、東京の間ぐらいで会えば、
負担少ないよね」
と呑気なことを言ってきた。
私は、「もう無理」と伝えた。
「会い続けても、何の意味もないよ。」と。
結局彼は、これまでと同じように
私を傷つけて、また優しくして
試してきただけで、
私を好きなんかじゃなかった。
もう悲しくはなかった。
「じゃあね。」
彼の返事は聞かず、
今度は私が一方的に電話を切った。