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スーパーガンジー

あらすじ

転校生の冴。中学生三年生。
都会の学校で熱血漢。
地方にやってきて、遅れている社会意識の現場に触れて衝撃。
正義の心がそれらを許せなくなり、憧れの映画のスーパーヒーローになりたいと念じていた。
その力を身につけることができた。
その日から冴の大活躍が始まり、学校は冴の活躍の話題で大盛り上がり。
でもスーパーヒーローに変身した自分の姿をみてしまう。
なんと、痩せてヒョロヒョロで粗い目の太布をまとい杖をついた老人になっていたのだった。
しかし、不条理や怒りを感じるとそのヒーロー姿に変身する。
どうする冴。
冴の活躍は続く。

登場人物

鏑木聡美
淵野真琴
青木冴

丹波先生

二組代表 フリークライマー 上田美智
三組代表 科学者 中田沙知
四組代表 画家 下田夢致
物申す男子 物田
物田の味方の男性生徒 4人
スマホの光緒

スーパーガンジー

◎シーン1登校(幕前)

⚫︎舞台前、二人の中学生が下手から登場。登校中。ブレザーにパンツ姿。

真琴「聡美、聞いた?」
聡美「なにを?」
真琴「転校生。」
聡美「あ、二組の?」
真琴「面白いらしいよ。マジ正義の人らしい。」
聡美「ほんとに? 真琴は見たの?」
真琴「まだ。でも、絶対、笑えるらしい。」
聡美「絶対面白いもんなんてないよ。」
真琴「鉄板だってさ。話題沸騰中、美智のライングループでもりあがってる。」
聡美「面白いかな? 私立進学エリート校からの転校生でしょ? ガリ勉お嬢ちゃまじゃん。面白くないよ。」
真琴「今日こそ、見に行こうね。」
聡美「乗らないなあ。来週からテストだしさ。」
真琴「テストですと? 何の?」
聡美「中間。いい休み送りたいじゃん。」
真琴「別に・・送れるけど。」

⚫︎話しながら上手に消えていくと

◎シーン2三年二組教室

⚫︎授業が中断している様子。

「ですから、『男子は、女子を守ってやれ』のような言い方、考え方自体が問題なんですよ。先生、先週お願いした男女トイレの他にレインボートイレを作るという私の案はどうされましたか? 職員会議で提案してくださいましたか?」
丹波先生「青木、ま、待て」
「待ってられません。待ってる間に私たちは卒業する、それを待っているんでしょ?」
丹波先生「そ、そんなことはない、」
物田「(男性生徒が茶々を入れる) そんなつもりはないよ。」
「(物田をにらみながら) そんなことはないことはなでしょ。それにもうすぐプール授業が始まりますが、更衣室問題、どうなっていますか?」
丹波先生「それはだな、いま体育担当の先生方と」
「先生方と?」
丹波先生「毎日」
「毎日?」
丹波先生「相談して」
「相談して?」
丹波先生「・・相談しているんだ。」
「相談して相談してる。相談したら答えをださなきゃ。」

⚫︎冴ガクッと首を垂れる。教室の皆は呆気にとられたり、またかとうんざりしている。
チャイムが鳴り、皆散会。
窓を開けて一組の真琴と聡美が覗き込み、真琴が大喜び。聡美はしっかり聞いている。

「男子と女子が同じ教室で水泳用の水着の着替えをするなんて異常です。」
丹波先生「そうは言うがな、仕方ないんじゃ。更衣室を作る予算が足りないのだ。」
「嘘おっしゃい!」
丹波先生「う、嘘って。」
「更衣室なんか使ってないじゃないですか。教室で着替えているんだから。水泳はニクラス同時に男女で別れるんだから、着替えは二組の教室を女子が使い、男子は一組の教室を使えばいいんですよね。簡単なことです。一円もお金は使わなくていいですよ。」
丹波先生「だ、だがな。」
「だが? なんですか?」
丹波先生「君たちはまだ二年だから、慣れてないだろうが、三年ともなれば、上手にバスタオルを使って見えないように着替えできるようになる。トイレの個室を使う懸命な子もいるし、階段を使ったりもするそうだ。」
物田「先生、(うんざりしたように) 僕たちはもういいですね。(数人の生徒が教室を出ていく)」
「(物田を無視) はぁ? 本気でそんなことおっしゃってるんですか? とにかくこ学校は何もかもが遅れています。煤けています。セピア色です。すぐにカイゼンを要求します。あと、早急に男子に対する性教育を開始してください。」
丹波先生「か、過剰な、せ、性教育は、禁じられとる。」
「過剰なものは必要ないです。普通の性教育をお願いします。」

⚫︎丹波先生は汗を拭き拭きほうほうの体で教室をでてゆく。それを確認した後に、真琴と聡美が教室に入りおずおずと冴に近づく。

真琴「青木さん、私一組の淵野真琴。で、この子が鏑木聡美。やたら名前の画数の多い仲良しコンビ。」
「何か用?」
真琴「(急に手を差し伸べて) 私あなたの『フォロワー』です。」
「ふぉろわー? なにそれ。」
真琴「だから、あなたは私の『推し』なのよ。」
「だから、なにそれ。」
真琴「なにって、だから、私はあなたの友達になりたいと思って。」
「あ、『友達』、それならわかるわ。私はフォローされる人でも推される人でもないからさ。」

⚫︎冴は真琴と握手する。

聡美「あんた、面白いね、気にいったわ。友達になってあげてもいいわ。どうせ友達いないんでしょ。」
「ご明察。一匹おおかみ。友達になってあげていいわ。」

⚫︎冴は聡美とも握手する。三人の誓いの握手。ゆっくり暗転。
⚫︎ゆっくり明転。まだ三人の終わらないおしゃべりが続いている。

聡美「つまり、あんたは前の学校でもやりすぎて、お母さんと一緒に、おばあちゃんのいる岡崎に逃げてきたけど、またここでもやり過ぎを始めてるってことね。」
「違うって。逃げてはいないわ。強制移住させられたの。ママの離婚もあったしね。」
真琴「あ、私とこもおんなじ。うちは、パパが逃げていったけど。」
「逃げてないって。私は決して逃げないの。」
聡美「分かった、わかった。立ち向かう人なのよね、で、冴、あんたの夢はなに?」
真琴「私はかっこいいおじさんになりたい。」
聡美「あんたには聞いてない。聞き飽きているし。ちなみは私は弁護士。で、冴は?」
「私はね・・(声をひそめて二人の耳に何か囁く)」

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