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やばい、まじやばい! サムライ軍団が現れた!  2,069文字

やばい、まじやばい!
何がやばいって、俺の率いる小隊が戦ってるのはどう見たってニッポンのサムライ軍団だ。
俺達が生き残るか、サムライ軍団が生き残るかの戦いが始まった!


あの日、俺のチームはアフガニスタン、クナル州の標高2000メートル近い山岳地帯にいた。パキスタンとの国境に近くだ。

俺達はイスラム系テロ組織に拉致された某国要人(王族らしい)救出のために集められた総勢24名の殺しのプロフェッショナル集団だ。
俺達の雇い主が誰であるかは拷問されても言うことができない。守秘義務っていうやつだ。

救出対象となる要人は、敵アジトの地下に監禁されていることがわかっていた。なので俺たちの作戦は非常にシンプルなものだった。
敵陣の背面から対戦車ロケットランチャーで光波ホーミング誘導弾を発射し、地上にある熱源(=車両、航空機、ミサイル、そして人間も)を全て一瞬で無力化したうえで、地下に拉致されている要人を奪還、救出する。それだけだ。

夜中に敵陣背後の山頂付近に潜んだ俺達は、日の出前に攻撃をしかけることにした。
敵陣までは直線距離にして約2200メートルの位置だ。

午前4時、まだ周辺は闇が深かった。
全員を配置につけ、午前4時15分、俺は作戦開始の合図を副隊長の日系4世のチェイニー川端に送った。
轟音とともに打ち上げられた20発の光波ホーミング誘導弾は上空に達すると、感知した地表の熱源を爆撃すべく四方八方に別れて飛んでいった。

爆撃は30秒程で終わった。
地表で生き残った者はいないだろう。
俺達は7台のランクルに分乗し、要人救出に向け山道を一気に駆け下りた。

爆撃目標とした地点で俺達が目にしたものは、おびただしい数の損壊した人間の遺体だった。どんなに少なく見積もっても300人は超える大量の兵士が無力化されていた。

でも、俺達が驚いたのは遺体となった兵士の数ではなかった。(もちろんそれは俺達の想定していた50~80名をはるかに超える数だったが)
遺体となって地表に散乱していた兵士たちの姿は、どこからどう見てもニッポンのサムライ映画に出てくる武装したサムライそのまんまだったことだった。

ブオーーーーーー
ブオーーーーーー
朝もやが立つ山麓に不気味な音が響きわたった。
サムライ映画で見た法螺貝の音だ。

「キャプテン、前方に敵軍出現!」
ドローン担当のBJから報告が入る。

「12時方向、約1km先、8000・・・いや、1万の軍勢。それも全部サムライだ!」
 
俺はドローンから送られてくる画像をディスプレイで確認した。

どいつもこいつも全部サムライだ。
最前線は歩兵のサムライだ。刀と槍で武装。弓を持ってるやつもいるが、どいつも身を守る防御服は無いに等しい。
その後ろに500騎程度の騎馬隊もいる。馬はポニーよりちょっと大きいぐらいだ。
木で作った防護柵の向こうに1000人ぐらいの鉄砲隊がこっちに向かって構えている。持っている長銃は博物館に置いてあるような骨董品だ。

「こりゃとんでもなくクレイジーな展開だぜ・・・」
BJのつぶやきが、ヘッドセットを通じて聞こえてきた。
その通りだ、BJ。これはかなりクレイジーな展開だ。

ドローンから送られてきた画像は敵陣後方にある高台を映していた。
敵軍の総司令部が置かれているらしい。
ド派手な甲冑をつけたサムライ大将を中心に、これまた派手な甲冑を付けた取り巻き達がこっちの様子を背伸びしながら伺っている。

俺達は近代兵器を持っているとはいえ、1万人の武装集団に飲み込まれたら勝ち目はない。
こういう戦いは、とにかくまず敵の”アタマ”を叩いて無力化することが定石だ。俺は躊躇なく対戦車ロケットランチャーからロケット弾RPG-7をサムライ大将のいる総司令部に向け発射を命じた。

サムライ大将とその取り巻き連中は一瞬で霧となった。

指揮命令系統が一瞬で消滅したサムライ軍団は混乱に陥った。
アタマを失ったサムライ軍団が暴徒となって襲いかってきたら太刀打ちできない。数が多すぎて皆殺しは不可能だ。
次は一刻も早く連中の戦闘意欲を失わせることが必要だ。

俺は、サムライ軍団に向けてロケットランチャーから光波ホーミング弾20発、RPG-7ロケット弾50発、戦闘用ドローン50機から超小型ナパーム弾100発の投下を命じた。

・・・・・・

今、俺達はテロ組織の本体に奇襲をかけるべく、配下となった約8000名のサムライ軍団を率いてゴラン高原を進行中だ。

サムライ軍団は近代戦にはめっぽう弱いが、白兵戦となってしまえばめちゃくちゃ強い。
サムライ達は流血を恐れないどころか、死ぬことすら怖くない。
なので連中に近代兵器を持たせて戦わせたら無敵になることは間違いない。

万単位のサムライ軍団がいったいどこから湧いて出て来たのかはよくわからない。
下って来たサムライ大将達は「いざセキガハラと意気込んでござったが、アフガンだったのでござる」などとぼやいている。

連中が何を言っているかよくわからないが、俺達はあまり深く考えないようにしている。
俺達も連中も今ここに確かに存在している。
共に戦うにはそれだけで十分だ。

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マジバイ
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