やばい、まじやばい! 突然パパが我が家の解散を宣言したーー!
やばい、まじやばい!
何がやばいって、突然パパが我が家の解散を宣言した!
もう意味全然わかんないっての!
それまでパパとママがどんな関係かなんて考えたことはなかった。
だって普通のどこにでもいるパパとママだったから。
毎日会社に行って、お給料をもらって、週末は家族との時間を大切にしている普通のお父さん。それがパパ。
いつもニコニコしてて、怒ることなんてめったになくて、いつものんびり、呑気に暮らしてるちょっと太っちょな専業主婦。それがママ。
それが昨日の晩ごはんを食べている時だった。
突然、「ママと陽子に言わなければならないことがある」って難しい顔でパパが言い出したの。
ママなんて「あらー、私の誕生日は来月だし・・・ いったい何かしらー♡」なんてニコニコしてた。
どうして自分のことだと思えるわけ?
そんな呑気だから、ぶくぶくだらしなく太るのよ。ママ。
そしたらパパは椅子からおもむろに立ち上がると、直立不動になって、
「本日、今この時をもって、我が家の解散をここに宣言する。以上!」
って言ったのよ。
ママも私もポッカーンよ。
「パパ、今何て言ったの? 我が家の解散って何?」って思わず聞いたよ。私は。
そしたらパパは真面目な顔で言ったわ。
「諸事情により我が家における相互不可侵の関係は完全に白紙となった。もはや君たちは私の統制下にはない。」
それを聞いたママは自分の椅子をどかっと蹴り飛ばすと、脱兎のごとくリビングを走り抜け、前転しながらキッチンに飛び込んだ。
そして起き上がったママの手には既に包丁が握られてた。それも逆手で。
えーーーー? いったいどうしたの?ママ。えええ???
「陽子、どっちにつくかは任せる。でもパパについたら容赦なく殺す」
ちょっ、ママ、何言ってるの?
「ママ、こうなってはお互いやむなしだな」
パパも何言ってるの? やむなしって何?何?
パパは足下に置いていた会社の紙封筒の中から黒い手榴弾を取り出すと、安全ピンを口で外して、キッチンのママに向かって投げつけた。
キャー、パパ、やめてーーーー!
ママがあわててジャンプしてキッチンから転がり出ると同時に、
ドッカーーーーーン!!!!!
すごい爆発だった。ママのいた我が家のキッチンは天井から柱まで何からなにまで一瞬で吹っ飛んで崩れ去った。
リビングの食卓にいた私は爆風に飛ばされてテレビの前まで吹っ飛ばされたよ。
耳がキンキンしてるし、もう何がなんだかわからない。
家の中は焦げ臭い煙と舞い上がった粉塵が充満して真っ白でほとんど何も見えない。
そしたらもうもうとした煙と粉塵の中から、ショットガンを抱えたススと粉塵で髪も顔も真っ白になった太っちょのママが出て来た。
「ソファーの底にこれ隠しておいて正解だったわ」ってママは私に向かってウインク。
ダイニングテーブルを咄嗟に倒して盾にして爆風の直撃を避けたパパの位置がママにはすぐわかったのね。
ママは躊躇なくショットガンをパパが隠れてるダイニングテーブルに向けて打った。
ダダーーーン! ダダーーーン! ダダーーーン!
テーブル越しに散弾3発を浴びて、パパはそこから動く気配がまったくなかった。
パパ死んじゃったんじゃないの???
「逃げるわよ!」
ママはそう言うと、玄関に向かってダッシュした。
太っちょなのにどうしてそんなに俊敏なのよ。ママ。
パパについたら殺すって言われてたから、ママの後に続いたよ。
もう何がなんだかわからない。
ママは私が赤のフィアット500の助手席に乗り込むの確認すると、タイヤをきしませながら発進させた。
すると遠ざかっていく我が家からパパか駈け出て来て、拳銃をこっちに向けて構えたのよ。
やばい、パパに殺される!!って思った瞬間、家が大爆発して炎につつまれた。
パパはお向かいの斎藤さんちまでふっ飛ばされた。
「ウッソーーー! 家が燃えてるーーーー! パパがお向かいまで飛んでったーーー!」
「出がけに玄関にプラスチック爆弾を仕掛けてきたのよ。フフフ」
ママ、あなたいったい何者なの??
あれから6時間。
4気筒180馬力にチューンアップされたフィアット500は東北道を北に爆走してる。もうすぐ夜明けだわ。
運転を私に任せたママは何を聞いても答えてくれない。
だってパパが操縦する迎撃ヘリコプターが背後に迫ってきてるんだもの。
今ママはロケットランチャーを肩にかついで窓から半身を乗り出している。
これから私たちはどうなるの?
教えてママ。お願い。
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