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『みずがうえから』 まいわいの新譜放談

16000文字インタビュー 特設サイト:http://maiwai.wixsite.com/mizu

しらいしかずやとマノリツコによる音楽ユニット・まいわいが、10/31に4曲入りEP『みずがうえから』をリリース。2人きりの密やかな音風景を吹き込んだ1stアルバム『ことほきす』から一年。7名のゲストミュージシャンを迎えた本作では、大編成で新たな世界を描き出す。(聞き手・市川水緒)

まいわい

日本語の音の響きを大切にしながら、やさしくこわす。そしてまた作る。まるで積み木を積み上げていくような楽しみと喜びに満ち溢れた、音作りと歌声。心の中に閉じ込めておきたい美しい音風景を作り出す、しらいしかずやとマノリツコの音楽ユニット。2014年年末に結成。2015年9月ファーストアルバム「ことほきす」発表。世田谷美術館・旧前田家本邸・象の鼻テラス・豊島区「としまアート夏まつり」など様々な場所やイベントにて演奏を行う。http://mmnr.jp/maiwai


いろんな人の視点を入れたかった


ーー今回のEPは大編成での録音だけど、こうしようと思った経緯は?

しらいし(以下し)⚫︎その時にできていた曲を、自分の好きなミュージシャンを集めてやってみたいと思ってて。それをりっちゃんに相談したら、乗ってくれたので。なんで大勢でやろうと思ったんだろうな……。単純に、いろんな人の視点を入れたいと思ったのかも。結果、りっちゃんはどうでしたか?

マノ(以下マ)⚫︎いやあすごく贅沢で楽しかったです。早くライブがやりたい。本当に頼もしい人に参加してもらったので。

し⚫︎今まで自分が演奏を見たことがあって、ああいいなって思う人に声を掛けました。当初はもう少し人数は少なく考えてて、パーカッションの武留くん※1とスティールパンのmangnengさん※2、フィドルの柴山真人くん※3とフルートの柴山祥子さん※4の4人かなと。アレンジのバランスも考えて、影山朋子ちゃん※5のマリンバと戸井安代※6さんのクラリネットにも入ってもらった。それからMVを作る打ち合わせをしていた時に、ちょっとおもしろい音とか、次元の違う音がはいってると世界を広げて作れるかなという話になって、それなら安永さん※7にお願いしようと思って。

ーー安永さんは何で音を出しているの?

し⚫︎手作りシンセとか、他にもいろいろやってたよね。マイクを床にザザザーと引きずったり、ボルトみたいなのをくるくるさせたりとか(笑)。

マ⚫︎コインみたいなのがくるくるくるって落ちてくるすごい長いやつ※8とかね。録音の時、どこかの国の怪しい露天商みたいに(笑)、いろんな道具が入ったキャリーバッグを持ってきてくれてね。「これどうやって使うんだ?」ってものを次々に出しては魔法のように操ってたから、私はすごい魔法使いだと思ってる。

ーー大編成バンドで大変だったことはある?

し⚫︎大人数だからそもそもレコーディング日を調整するのが大変で、結構胃がキリキリしたかな。あとはレコーディングの時って、僕が演奏者でもあり、ボーカルでもあり、ディレクターでもあり、プロデューサーでもあり、レコーディングエンジニアでもありっていうのが、やっぱり忙しかった。

マ⚫︎大変そうだったね。

し⚫︎しかも、あの時はまったくアレンジを決めないで録音に臨んだんだよね。フルートとフィドルだけはコンビネーションがあったからラフを書いたんだけど、それ以外はとりあえずやってみましょうか、と言って。ある程度スピードも必要で、1日8時間で3曲録ろうという感じで。間違えてるところはあとでどうやって修正しようかとか、みんなのスケジュールを考えながら、どう進めればうまく録り終えられるかとか、割とそういう実務的な脳みその方が大変だった。

マ⚫︎ライブの時もそうだもんね。PA業もかずやんが担うから。

ーー世田谷美術館の時※9も、準備から何から何まですごく忙しそうだったもんね。物販の手配もあるし、映像もあるし。開演前に電気も自分で消してね。

し⚫︎今後は少しずつ人にお願いできればいいかなとは思ってるんだけど。だからライブ中は、あんまり音楽のことは考えてないんだよね。それが逆にいいというか、素の状態でいい感じでからっぽになれてると思う。でもりっちゃんはそうじゃないからね。

マ⚫︎そう、すっごい逆のタイプだから。わたしは他にやることがあると集中できなくなっちゃう。

ーーそこもいいコンビネーションなんだ。

し⚫︎いい感じでお互いを補完し合えてる。僕は割と忙しいの嫌いじゃないから。テンション上がるんだよね。



EPのアートワーク



ーー1st※10もそうだったけど、今回のジャケットデザインも凝ってるね。

し⚫︎今回、僕らとしては青色の感じにしたくて。

ーー水のイメージ?

し⚫︎そうそう。それに、これまでまいわいで使ったことがない色だったから、おもしろいなと思って。

マ⚫︎これまでが白と赤のイメージだったから、並べたときのインパクトもあるんじゃないかなと。

ーーショップの棚からはみ出すような変形サイズだね。

し⚫︎今回はタワレコとかで全国流通させようって考えてるから、判型でもCDショップの棚から積極的にはみ出していこうと(笑)。ジャケットにもキャッチーな要素があったほうがいいかなって。

ーー今回のEPと1st、両方全国流通するの?

し⚫︎1stの方は今のデザインの在庫が少なくなっていて、それだと全国流通ができないから、別のデザインにして新たに作ろうかなと。

ーー毎回、ジャケットワークにも凝ってるよね。

マ⚫︎しっかりしてるんですよ、うちのかずやんは。

し⚫︎いやいやいや

マ⚫︎夢だけで生きてないんですよ

し⚫︎ふわっとしてるように見せて、リアリストだからね(笑)。

ーージャケットのデザインはいつもどうやって決めてるの?

し⚫︎1stの時は、基本的には僕が最初のプランを考えて、それをRuinchi※11に具現化してってもらう感じで考えてたんだけど。Ruinchiがイラレで起こしてくれたものを見せてもらったら、僕の案よりかなり斬新なことになっていて。それで結局、僕の意向とRuinchiのアイデアが混じり合ったものになった感じ。今後は、僕がプランを立てるようなことはしなくていいんじゃないかなと思ってる。絶対その方がおもしろくなるし。あんまり自分ひとりで考えてもよくないわと思って。

※1 内田武留
ショピンのタイコ等担当。あだち麗三郎クワルテッット、ヒネモス、BURGER NUDSなどでも活躍。
http://www.chopiiin.com

※2 mangneng
スティールパン奏者。ソロやmangneng planet band、てぬぐいのサポートなどで活躍。
https://soundcloud.com/masahito-mannen

※3 柴山真人
フィドル奏者。Parallel Shellsのほか、ヒネモスでも活躍。

※4 柴山祥子
フルート奏者。Parallel Shells。柴山真人の義姉。

※5 影山朋子
マリンバ、ヴィブラフォン奏者。森は生きている(ex)、ゑでぃまぁこんのサポートのほか、シンガーソングライターとしてソロでも作品を発表。
http://kageyamatomoko.blogspot.jp

※6 戸井安代
クラリネット奏者としてさまざまなバンドのサポートに参加。影絵作家でもあり、音楽+影絵のユニット「畔」でも活躍中。

※7 安永哲郎
エレクトロ・アコースティックユニットminamoの電子音奏者。「安永哲郎事務室」として、音楽活動以外にコンサートや展覧会の企画、編集、執筆、講演などの活動も行う。
http://www.jimushitsu.com

※8 コインみたいなのがくるくるくるって落ちてくるすごい長いやつ
どんな楽器なのか、みなさん各自で想像してみましょう。

※9 世田谷美術館の時
2015年11月21日に世田谷美術館の講堂で行なわれたまいわいのコンサート「きこえることほきす」のこと。

※10 1st
まいわいの1stアルバム「ことほきす」のこと。

※11 Ruinchi
デザイナー・アーティスト。イラスト、ボール紙や包装紙などを使った工作作品を制作。まいわいのこれまでのCDジャケット、フライヤーのデザインも手がける。
http://www.ruinchi.net



「みずがうえから」



ーーEPの曲をひとつずつ紹介してもらいたいんだけど、まず「みずがうえから」。タイトル曲でもあるけど、旅先で電車に乗っている時に歌詞を思いついたんでしょ?

し⚫︎香川から高知に向かう土讃線っていう電車に乗って、大歩危渓谷※12っていう秘境みたいなところを通っている時に書いた歌詞。最初に曲ができてて、歌詞どうしようかなと思ってたんだけど。ちょうど電車に乗ってる時に時間があったから、歌詞書こうと。

ーー10年に一度の曲が書けたって言ってたね。

し⚫︎歌詞だけのことじゃなくて、作曲とかアレンジもすべて、奇跡的なバランスと謎の緊張感でできたんだよね。自分史上で一番好きな曲。コード進行よりも転調の方が多い曲で、みんなちょっとやりづらそうだったね。僕の中で、コード進行って情感を生むものだと思うんだけど、そういうのを一切排したくて。だから転調を使って、結果、コード進行より転調の方が多い曲になった。複数の旋律の集合体で、コードネームを付けづらい変な曲。それに大歩危渓谷で見た、まさに「水が上から落ちてくる」ような風景を模写するイメージで歌詞をつけた。

マ⚫︎録音する時はどんな流れで、どんな泡が立っていたかとか、みんなと景色を共有しつつ作ったよね。最終的にみんなそれぞれの想像力を働かせて、一つひとつの楽器がいろんな水の風景の一部になって、どこの国とも限定されない水流ができたなと思ってる。

し⚫︎実際に水が流れる様子を見て書いた歌詞からアレンジを発展させたから、曲が進行するにつれて下の調に転調したり、一番と二番では河幅みたいに各セクションの長さが長くなる構成にしたり、曲にもかなり水のイメージが影響されてると思う。
 全体的なテーマは「水の形態模写を通した物理学」のつもり。水墨画っていうか、風景画の世界というか。自然現象をただ単純に描ければいいなと思って。夕日を見て感動する人もいるけど、夕日自体にメッセージ性なんて何もなくて、そこから先の意味は聞く人が考えればいいと思ってるので、そういうイメージで。



「かごめかごめ」



ーー二曲目の「かごめかごめ」は、まいわい初のMV曲だね。MVはどんな内容?

し⚫︎漫画家のネルノダイスキさん※13に作ってもらったもの。EPを作りたいってりっちゃんに相談した時から、「かごめかごめ」はこの人にMVを作ってもらいたいと思ってるって言ってたくらい、最初から僕の頭の中にイメージがあったんだよね。ネルノさんの個展でドローイング集を見たらすごく良くて。前々から、もしまいわいがMVを作るならアニメーションだなって思ってたから、是非作ってくれませんかと交渉して。結果、フジタヨーへー※14さんと組んでいただき、質の高いアニメーションが完成しました。

マ⚫︎MVを作っていただくのが決まってから録音したから、脳内では完全にネルノさんの作画の中に自分が入ったイメージで歌ってた。上も下も分からない、重力もありそうでなさそうで、聴こえる音も幻聴かも……っていう感じ。自分が何者なのか限定せず、距離感を持たせたり引き寄せたりしながら歌ってます。

し⚫︎「かごめかごめ」の誰もが知っている歌詞を一部、「かごのなかのしょうねんは」「うしろのしょうねんだあれ」と言い換えてるんだよね。実は最初は言い間違えからはじまったんだけど、そこから発展させて作った曲。この「しょうねん」という言葉が、ネルノさんの世界にもつながったと思ってる。
 編曲自体は、ギターのリフからふくらませた。「堂々巡り感」をテーマに、繰り返すけど繰り返さないイメージ。もっとタイトな演奏のテイクもあったけど、このゴチャっとした感じがよくてこのテイクになった。



「かけら」



ーーでは三曲目の「かけら」。

し⚫︎2人でリハーサルしている時に思いついて録音しておいたコードを、後から改めて曲にしたもの。この曲だけマルチトラックレコーディングで、以前ライブ特典として配った楽曲にオーバーダブしてる。クラリネットの戸井さんに入ってもらって、戸井さんのアドリブと僕の書き譜の組み合わせで作った。溜めてあった複数の曲から旋律を拝借しはめ込んだり、細かくエレキギターも重ねたりしてる。

マ⚫︎2人だけだと冷たい理系ファンタジーになりそうなところを(それも悪くないんだけど)、クラリネットが入ったことで、遠い記憶に包まれたようなリアルな温度が入って、やさしくかみしめるような味わいになったなと思う。

ーー歌詞についてだけど、「かけら」はとてもエモいというか、まいわいではじめて意味性の強い気持ちを描いているような気がした。

マ⚫︎あー、はいはいはい。そうかも!

し⚫︎今振り返って自分で思うのは、歌詞的なところで「かけら」は、まいわいの自己紹介ソングかもなって。ぜんぜん意図していたわけじゃないけど、「あるはずのない ことばのいみをさがして」とか、こういうことをやってるなってことは思った。机に向かったりせず、割とエモーショナルに、一番気持ちいいように曲に言葉をのせて作詞した曲かも。



「いちねん」


ーー最後の曲の「いちねん」は?

し⚫︎はじめにイントロの旋律を書いて発展させた曲。不協和音も音色としてとらえた、まいわいなりのオルタナティブフォークだと思ってる。Parallel Shells※15との四重奏を念頭に書いていて、木管フルートの気持ち良さを生かしたつもり。

マ⚫︎今回の4曲の中では、一番リラックスしてナチュラルに歌ってるかも。録音の時、後ろからフィドルとフルートが聞こえてくる配置だったんだけど、その音が体を浮かび上がらせて、心地よく運んでいってくれたイメージ。

ーーこの曲、歌詞がすごくシンメトリーな構成だね。

し⚫︎はじめは構成なんて特に考えず、無意識にevernoteに打ち込んでたんだけど。最初に「はるばる」って言葉が出てきて、もしかしたら続けて「なつ」「あき」「ふゆ」で始まる歌詞にできるかもと思いついて。そこからパズルを組み合わせるようにできた歌詞。今の歌詞は、りっちゃんが一部校正を入れてくれて、それでかなりシンメトリーにまとまったね。



音の響きも含めて録音したい



ーー今回のEPはどこで録音したの?

し⚫︎ほとんどの曲は立川にある、国の有形文化財にもなってる古い蔵※16で。マイクを二本立てて一発撮りした。

ーー1stの時もそうだったけど、いわゆるスタジオ録音ではないレコーディング方法はまいわいのこだわりだったりするの?

し⚫︎基本的にはアコースティックユニットだから、その空間の音の響きも含めて録りたいという思いがあって。いわゆるマルチトラックレコーディングみたいなことはせず、ヘッドフォンとかもしないで二人で「いっせーのせ」で演奏してる。相当響きは大切にしている。

ーーそういえば1stのライナーに、「建物由来のノイズが入っています」みたいな注意書きしてあったね(笑)。

し⚫︎ラップ音みたいなね(笑)。今考えると何の音かぜんぜんわかんないんだけど。あの時はりっちゃんの実家の近くのホールというか、古い紡績工場を改装したところで録ったんだけど。天井が10mくらいある場所で。すごく広い空間に二人きりで録音したんだよね。


※12 大歩危渓谷(おおぼけけいこく)
高知県と徳島県を横切る吉野川中域の渓谷。8kmに渡ってそそり立つ岩壁と美しい清流が続き、国の名勝地にも指定されている。一説には「大股で歩くと危険」が地名の由来。こなきじじい発祥の地。

※13 ネルノダイスキ
漫画、立体、絵画などを制作。2015年、第19回文化庁メディア芸術祭漫画部門新人賞受賞。
http://nerunodaisuki.tumblr.com
http://nerunodaisuki.petit.cc

※14 フジタヨーへー
MVやライブビデオなどの映像のほか、アニメーション作品、マンガ執筆、写真などを手がける。
http://fujita1980.wixsite.com/fujitayohei

※15 Parallel Shells
フィドルの柴山真人、フルートの柴山祥子によるミニマルフォークデュオ。

※16 古い蔵
東京都立川市にある登録有形文化財「中野家住宅の蔵」。




まいわいの「ビビビ結成」まで



ーーまいわいの結成は、そもそもどんな経緯だったの?

し⚫︎最初は、僕が紘良くん※17とやってるミラージュ楽団※18っていうバンドのピンチヒッターで、りっちゃんがライブのリハに来たんだよね。その前からお互いになんとなく存在は知っていたんだけど、その時がほぼ初めましてな感じで。

マ⚫︎共通の友達はいたけど、その時がほぼ初めましてだったよね。

し⚫︎それでリハの時に歌声を聞いて、ああいい声だなと思って。僕とりっちゃんがユニゾンするアレンジの曲があったんだけど、それがすごく気持ちよかった。僕はその時にはじめてそういう感覚を得ることができたから、へえ、おもしろいなと思って。歌だけじゃなくて楽器をぽろぽろ弾いたりもしてて、その音使いを聞いても音楽的な下地がすごくある人だなってピンときた。それで一緒にやりたいなって気持ちがふつふつと出てきて。それから何回かに分けて段階的に、一緒にやろうよ、一緒にやろうよって誘って(笑)。

マ⚫︎ちょこちょこそうやって突っつかれているうちに、サブリミナル効果みたいに(笑)、一緒にやるんだなと思うようになったんだよね。

ーー結成当初から「男女ユニゾンのユニット」っていうのがコンセプトとしてあったんだよね。

し⚫︎お互いの声を補完しあう二人だなと思って。けっこう僕がガラガラ声だから。

ーーマノちゃんの澄んだ声に対して、まいわいの時のしらいし君は声をあえて低く出してるのかなと思ったりした。

し⚫︎確かに音域でいうと、まいわいの場合は低めの方に集まってるかも。

マ⚫︎そうだね。私の音域に合わせて曲を作ってくれてるから。

し⚫︎自分が出しやすい音域だと、僕はちょっとキンキンする声なんだよね。だからまいわいの時は、普通の時よりも早めの段階でファルセットに切り替えてるかも。そっちの方がやわらかい音になるから。僕の声はカサカサしてて、りっちゃんはどちらかというとウェットな声だから、それがユニゾンした時にいい具合にフラットになるイメージはある。もっとハモったりも簡単にできるんだけど、それはあまりせずにユニゾンにしてる。

マ⚫︎ユニゾンって楽しいよね。ハモりも好きだけど。

し⚫︎それが結成の大きな理由だね。

マ⚫︎かずやんから正式なかたちでオファーをいただいた時、ぜんぜん夢見がちなプランじゃなくて。すっごい現実的な、「会社の企画書か」みたいな感じのメールがきたのね(笑)。この人、ゆるくふわっとな感じに見せておいて、こんな現実的なんだ、っていうところに信頼を感じて。

し⚫︎自分的には、気持ちが溢れる内容だったと思うんだけど(笑)。

マ⚫︎その時、一緒に音源も送ってくれて。ちょうど私は仕事で韓国にいたんだけど、その(旅先の)テンションもあったのかもしれない(笑)。なんていうの、海外にいるとちょっとオープンマインドになるじゃない。ホテルで曲を聴いた時、本当にそれがベストタイミングでしっくりきて。踊れるなって感じた。その感覚と、きっちりした企画書で一緒にやることを決めました。

ーー良かったね、マノちゃんが韓国にいてくれて。

マ⚫︎タイミングがすごく良かったんだよね。

し⚫︎だから基本的につきあいは短くて。ちゃんと知り会ってから3ヶ月くらいで結成した。

マ⚫︎電撃結成みたいなもんですよ。

ーービビビ結成だ。



音楽活動するのは控えようと思っていた



ーーマノちゃんは、これまで他にバンドをやっていたりしたの?

マ⚫︎私は特にやってなくって。学生の頃、クラムボンのコピーバンドをちょろっとやったりはしたんだけど。それくらいかなあ。でも習い事みたいな感じで、小さい頃から音楽はずっとやってきたものかもしれない。ピアノとか、あと幼児向けの音楽教室みたいなのがあって、そこがけっこうおもしろかったな。たぶんメソッドの名前なんだけど、オルフ※19っていう授業を受けてたの。体も使いながらいろいろな楽器も触らせてくれたりして。だから、環境的にはすごく音楽が身近にあったと思う。

ーー歌を歌ったりはしていなかったの?

マ⚫︎そんなこともなくて。高校の時の音楽の先生が声楽家で、その先生からイタリア歌曲を中心にクラシックオペラを習ってた。その前にも、小学校の時には音楽クラブだったり。

ーー歌はずっと好きだったんだね。

マ⚫︎そうだねえ、すっごく好きだったし、家でもよく歌ってた。その後、数年だけどボサノバの歌を習っていたこともあった。ボサノバも好きだったけど、ポルトガル語の発音がおもしろくて好きだったんだよね。でも、ちゃんと(音楽)活動をするのは控えようと思ってた(笑)

ーーなんでなんだろう。

マ⚫︎たぶん自分の中で、なんていうか、(音楽は)これからもずっと連れ添い続けるものだと思っていたから。下手にそれを外に出して、評価される対象にしたくないなっていう気持ちがすごいあった。引きこもっていたみたいな感じに近いかも(笑)。

ーー確かに、マノちゃんはこれまで俳優やダンサーとして活動をしてきたわけだけど、パフォーマンスという意味では共通するけど、音楽はまた別のものだもんね。

マ⚫︎そうだね。私の頭の中では、「俳優+ダンス+歌」っていうとミュージカルみたいなものしか結びつかなくて。でも、なぜかミュージカルの方には行かなかった。なんでだろ。そうじゃないんだよな、っていう感じがして。



マイクが苦手


ーー正式オファーのメールでは、1stに入っていた2曲を送ってたんだよね。

し⚫︎その方が説得力があっていいなと思って。歌詞はついてなかったんだけど。聴いて小躍りしたくなったんでしょ?

マ⚫︎そうそう。小躍りって、心のテンションだけではなくて、実際に踊ってたからね(笑)。

し⚫︎それがいつか見れるのかなーと思ってるんだけど。見れないかな。

マ⚫︎見れない見れない。

ーーそうか、まいわいではマノちゃんは踊ってないもんね。楽器もやってるし。

マ⚫︎基本はそう。

し⚫︎ただ、ちょっとジェスチャーというか、動きはしてるよね。僕はだいたい目つぶってるから見えてないんだけど。

マ⚫︎出ちゃう。やっぱり身体的な動きと連動した方が歌いやすいっていうのもあって。たぶんそういうところがあるから、さっきのレコーディングの話でもしたみたいに「せーの」で一緒に録った方が歌いやすいのかも。ヘッドフォンして歌だけ録るってなると、ひとりだし(笑)。それより、かずやんの体がちゃんと横にあって、そこから発生されるものと私の体から発生させるものを合わせる方がやりやすい。

し⚫︎一緒にミラージュ楽団で演奏していて、いわゆる音楽的なPAとかに慣れている感じじゃない部分は見えていたから、まいわいではなるべく自然体に近いかたちでやろうとは思ってて。

マ⚫︎マイクがすごい苦手だったの。さすがにここ1年は(まいわいで)付き合ってきたから少し慣れてきたけど。ミラージュの時とかは、マイクがあることに大緊張してて。クラシックだとマイクは使わないし、ここ(顔の前)にマイクがあるっていうのがすごい違和感だったの。私はこれに向かって歌ってるわけじゃないのに、なんでマイクに向かって声を出さなきゃいけないんだろう、みたいな。変な頑固が出てきてしまって(笑)。だからマイクのかたちとかもいろいろ工夫してくれたよね。

し⚫︎なるべくマイクっぽくないかたちのマイクを選んだりして(笑)。

マ⚫︎これならまだ威圧感ないでしょ、って。



この人もっと世に出ればいいのに



マ⚫︎かずやんはよく、自分のことを「アーティストだと思わない」みたいに言う時があるんだけど。そう言いながらも、音とか自分の演奏のこととかすごいこだわるし。私から見るとぜんぜんアーティストでしょって思う。

し⚫︎そうかなあ。俺、まいわいではあんまり細かいところまで詰めないようにしてるけど。

マ⚫︎抑えててあの感じだったら、実際詰めた時にはどうなるんだろう(笑)。

し⚫︎そっかー(笑)。

マ⚫︎音楽に関してだけではないけど、こだわるところはすごくしっかりしている人だから、あまりブレないなと思う。意外と優柔不断じゃない。

し⚫︎譲る部分と譲らない部分は、最初にはっきり決めてる。でも自分をアーティストだと思ったことはぜんぜんなくて、あくまでも音楽の「デザイナー」でしかないなと思ってる。

マ⚫︎じゃあ、何でまいわいで世に出ようと思ったの?

し⚫︎それは単純に……ああ、何でだろうな。りっちゃんとやったらおもしろそうだな、と思ったからかな。

マ⚫︎おお。そう、思い出した。私かずやんからオファーをもらった時に、「この人もっと世に出ればいいのに」って思ったんだ。

し⚫︎それ、逆に僕も思ってたよ。

マ⚫︎そうか。だから最初は、ちょっとずるい言い方だけど、かずやんが世に出る助けになるならやりたい、っていう気持ちもあった。もちろんそれがすべての理由じゃなくて、自分がやりたいっていう気持ちもあったけど。かずやんの手伝いができるなら、というか。

し⚫︎僕の視点から言うと、りっちゃんが歌ってくれるならやりたいと思った。

ーーおおお。何て美しい結成秘話。

マ⚫︎割とすべてはタイミングだって思うタチだから、一番しっくりくるタイミングで始められたなと思ってる。これがたとえば、私が二十歳くらいの時に出会ってたとしても組んでなかったと思うし、組んでたとしても崩壊しただろうなと思う(笑)。

し⚫︎意外とそういうタイミングって大きくて、まいわいの活動では他にもそういう巡り合わせみたいなことが多かったんだよね。



ジャッジのスピードと「ピンとくる」ポイント



ーーまいわいの練習はどうやって進めるの?

マ⚫︎事前に曲の音源をメールで渡されて、それを聴きながら「だいたいこんな感じで、りっちゃんはこのへんをこんな風に歌う」っていうメモをもらうんだけど、読んでも「わかんねえや!」って思って終わって(笑)。次に集まる時には、ほぼほぼ何もできませーん!みたいな状態なんだけど、そこから二人で構築しなおすみたいな感じかな。

し⚫︎最初はアレンジまで全部自分でやるのかなって思ってたけど、途中から二人でやった方がおもしろいなっていう気持ちになって。それからは、なるべく二人でやりながら作ってる感じかな。僕も作曲まではしてるけど、編曲とか構成は考えてなくて、一回りっちゃんにぶち当ててみてっていうプロセス。けっこうああでもない、こうでもないってやってるよね。

マ⚫︎でもかずやんはジャッジはすごく早いよね。

し⚫︎それだけは早いね。

マ⚫︎たとえば別パターンを試してみようとなった時に、かずやんの頭の中にはそのイメージが出来上がってるから「じゃあここからBパターンで」っていうのがすぐできるんだけど、私はその処理速度が遅くて。追いついてくのが大変。

し⚫︎それは気をつけます(笑)。僕の説明不足なことが多いんだよね。

マ⚫︎でも、そういう感覚的なジャッジの速さが曲に生きてると思う。私も短気だから、は? どっからだよ!みたいに半ギレしながらも(笑)。

マ⚫︎だけど僕の勝手な希望的観測としては、りっちゃんだからついてこられるというか(笑)。ミラージュでもほぼ同じようなプロセスで進めることがあるんだけど、その時は人数も違うし、僕の説明の丁寧さも違う。まいわいでは僕がりっちゃんに甘えて、「さっきので雰囲気はわかったでしょ、じゃここからもう一回」って感じになっちゃう。アイデアをすぐ試して比較したいっていうのがあって、僕としてはそのスピード感が大事なんだよね。

マ⚫︎そう、私もキレながらもそれがおもしろい。

し⚫︎無茶ばっかりさせるねえ。そこはちょっと、許してください(ニコニコ)。

マ⚫︎レベルアップできるよう精進します(笑)。先手を取れるくらいに。

し⚫︎最近は先手を取ってくることが増えたよね。僕がなんとなく弾いてみたやつに、「今のいいじゃん」って言ったり。

マ⚫︎そういうやりとりは、ちょっとずつの積み重ねの時間がものをいう部分もあるかもね。

ーーそれをアルバム一枚分やっていくのはなかなか大変だね。

し⚫︎でも、かかってる時間は他のバンドと比べると五分の一くらいだと思う。一対一っていうのもあるけど、ピンとくるポイントが割と一緒だから、まとまるのも早い。

マ⚫︎そうかもね。

し⚫︎二人の間でこれでOKっていうのが、だいたいの曲で早めに訪れるからね。


※17 齋藤紘良
しぜんの国保育園園長/作曲家。チルドレンミュージックバンドのCOINNメンバー。齋藤紘良とミラージュ楽団主宰。子どもと大人を文化でつなぐレーベル、saitocnoとしても活躍し、季刊誌『BALLAD』をプロデュース。
http://www.saitocno.com/

※18 齋藤紘良とミラージュ楽団
齋藤紘良が主宰するソロバンド。

※19 オルフ
ドイツの作曲家カール・オルフ(1895-1982)による「オルフ・メソード」等と呼ばれる音楽教育法のこと。歌や打楽器を中心とした器楽を、体の動きやダンス、言葉と深く結びつけながら教えるのが特徴。子供たちのために作られた「オルフ楽器」を使った即興演奏など、子供たちが参加しながら音楽を作り、その楽しさを体験できるメソッド。マノが学んだ音楽教室では、4歳からの授業に取り入れられいている。




まいわいの歌詞の世界



ーー最初にまいわいの歌詞を見た時の感想は?

マ⚫︎単純に、よく考えるなあって感心した。理系だなって思った。それが自分にはまったくない部分だったからすごく新鮮だったし、理系のさらっときちんと構築する感じはおもしろいなと思った。

ーー歌詞のあの雰囲気も、最初からやろうと思っていたこと?

し⚫︎結成時のコンセプトに「言葉遊び」っていうのがあったから、普通の歌詞じゃなくて、音韻を軸にした構成をやりたいと思ってて。あんまり感情的な表現は好きじゃなくて、なるべく意味がないようで、意味があるように聞こえるっていうのを目指してた。

マ⚫︎おもしろかったのは、ぱっと歌詞を見た感じでは叙情的ではないのに、実際歌うと景色が見える。その感覚がおもしろいなと思って。

ーーマノちゃんが前に「影絵みたい」って表現していたけど、まいわいの歌詞って言葉の輪郭を操ってる感じがあるんだよね。言葉の柄というか、模様みたいな。それを遠目で見ると景色になってる感じがある。幾何学的で抽象画みたいなんだけど、離れて見ると具象画になるような。一見ただの柄なのに、見方を変えると違うものが浮き上がってくるみたいな。

し⚫︎歌詞を考える時は、器を作れればいいかなっていうイメージで作ってる。輪郭だけ書いて、あとはご自由に想像してくださーいくらいの。でも、最近は前とちょっと歌詞の作り方が変わってきてる気がする。昔はもっと言葉遊びというか、完全に言葉の意味の部分を捨てていた気がするけど、今回のEPでは歌詞の意味性が強くなってきてるかも。

ーー歌詞はいつも曲と一緒に考えるの?

し⚫︎その時々によるけど、最初はだいたい曲から。でも曲の時点で、適当に口は動いてて言葉をつけてる。それを録音で聞き直して、光るフレーズがあったら覚えといて、それを軸に組み立てていく感じ。

マ⚫︎早いよね。ひとつフレーズが出てくると、あとズルズルって出てくるというか。

し⚫︎そうだね、全部連なりで出てくるから。自分の中の気持ちいい方向に漂ってるだけなんだけど。

ーーゆるく韻をふむのもまいわいの特徴だよね。歌ってて気持ちいいというのが大きい?

し⚫︎普通の言葉でも抑揚ってあるじゃない。それがメロディーとぴったり合ってないと気持ち悪いっていうのはある。「みずがうえから」の冒頭の「みずがうえから」のところとか、絶対こういうメロディーじゃないと嫌だなと思った。



演奏のたびにかたちを変える歌



ーー「みずがうえから」もそうだけど、まいわいの歌詞に水とか海とか波のイメージが多いのはどうして?

マ⚫︎かずやんの性格がウェッティだからかな。

し⚫︎無意識なんだけどね。

ーーまいわいの歌詞って、言葉が頭の中で意味の像を結ぶ前にするする逃げて追いつかなくなるというか、どんどんかたちを変えていく水みたいなイメージもある。

し⚫︎聞くたびに印象が変わる音楽を作りたいって気持ちはある。言葉の並びでも、3文字目で区切るのと2文字目で区切るのとで、ぜんぜん意味が変わってくるとか。そういうところは意識してるかも。イメージをかためないことで、普通の歌詞よりも逆に情報量が多いというか。そういう風になればいいなと願ってる。

ーー歌う側としてはどう感じる?

マ⚫︎さっき言ってたこととかぶるけど、結局エモーショナルな部分だけで作っていない、緻密な計算と裏付けがあるからこそ、逆に自由に歌えるっていうのはある。全部が全部エモーショナルに作りましたっていう歌詞だと、たぶん完成された歌詞の世界の中だけで歌う感じになるけど、まいわいの歌詞は計算されつつ、余白がある。その分自由度が高いから、自分の勝手なイメージも乗せやすいのかも。

し⚫︎りっちゃんには、歌詞のイメージの説明を絶対しないようにしてる。解釈はそれぞれにあるから、「これは水が上から落ちてくる曲で〜」とかは言わずに、はいってできたものを渡す。

ーー歌い方の演出とかもしない?

マ⚫︎滅多にない。

し⚫︎ほぼしないね。

マ⚫︎自分でもこの曲はこうやって歌おうとか、毎回そんなに決めてないかも。何となく同じ感じにはなるけど、でもきっちりは固めてない。

し⚫︎そのせいか、ライブやるごとに毎回違う印象に見えるのかもね。

マ⚫︎まいわいのキーワードに「積み木」っていうのがあるけど、歌詞だけじゃなく、音楽自体もまさに積み木みたいに「パーツはあるけどそれで何を作るかは毎回違っていい」という風にかずやんが作ってくれてる。だけどそれも、パーツがしっかりしてるからこそ組み立てるおもしろさで進められるんだよね。パーツがしっかりしてなかったら、これとこれ渡されてもどうにも……ってなると思う。



日本を静かにしたい



ーーいろいろ話が聞けておもしろかったな。では最後になるけど、今回のEPの聴きどころは?

し⚫︎編成が変なところかな。たぶんこの編成のものはあまりみなさん聴いたことがないんじゃないかな。いびつなんですよ。普段僕らがやっているような曲も、いろんな人の力を借りて増幅させて、もっと強くて興味深いものに仕上がったと思う。自分の想像を超えた音になった。

マ⚫︎予想以上に一曲一曲違った色になった感じはあるから、それを楽しんでもらえたら。普段のまいわいとはまた違った景色を見てもらえると思います。

ーーまいわいの今後のビジョンとか、ライブ以外に考えてることはある?

マ⚫︎ビジョンではないけど、活動開始して一年経ったから、二人で合わせるに当たっての謙虚さを忘れないようにしたいなって思ってる。最近、ライブする時にちょっと思ってたんだけど、(しらいしに)任せてれば安心みたいに思っちゃってるから、結構フリースタイルになりすぎることがあって。でもせっかくデュオなんだから、二人でやってることを忘れないようにしないとなと。

し⚫︎なるほど。なんとなく分業っぽくなってきてるとこともあるからね。お互いに役割が見えてきちゃってるというか。

マ⚫︎その楽しさをちゃんと掘り下げてかないとなと思ってる。初期衝動でやっているうちはビギナーズラック的にうまくいくことも多いけど、もう次の段階かなと。基本的にはゆったりした気持ちを大切にやっていきたいって思ってるけど。

し⚫︎作曲自体は次に向けてもうはじめてるし、りっちゃんが作った曲もあったりするから、それをどうするか考えなきゃな。それから、もっと開かれた場所に出ていきたいなと思ってる。

マ⚫︎開かれたっていうのは?

し⚫︎もちろん、これまでも開いた気持ちでまいわいの活動をしているんだけど、きっとまだ一部の人にしか届いてないし、見てもらえてないと思う。その間口をどんどん広くしていきたい。

マ⚫︎意外と野心があるんだよね。でもそういう野心がないとやってく意味がないから、大事にしたい。

し⚫︎今の日本の状況の中で、どう伝えていくかっていう部分は考えなければいけないなとは思ってる。受け入れられる土壌みたいなものはあるとは思ってるから、どうすれば効果的に広められるか。そのために変わってく部分もあるだろうけど、でもまいわいらしくいるためにどうすればいいかなと。今それなりに活動はしているけど、経済的に今はトントンでは済んでないから。一応、大人の人間二人が動いてるんだから、その分返ってくるようにしたいし。周りに人が関わってくれるなら、その人たちにもちゃんと返さなきゃなと思うんだけど。そのためには間口を広げる動きが必要だなと思って。まだ具体的な考えまでには思い至ってないけどね。自己満足では終わらせたくないと思ってる。

ーーせっかく世に出たまいわいだもんね。もっとたくさんの人にまいわいの音楽が広がっていけばいいなと私も思う。

し⚫︎もうひとつ、僕個人の今後の展望としては、日本を静かにできればいいなと思ってる。

ーー「静かに」っていうのは?

し⚫︎ヒットチャートには音を詰め込むアレンジの曲が多いよね。ぱっと聞いて派手な音楽が売れるっていう2000年代の音楽の流れがあるから、ヒットチャートにはどうしてもそういう音楽が多い。しかも街中でも、「無いと寂しいから」っていう理由でとりあえずのBGMを流しておく、みたいな風潮がある。僕はそうした状況があまり好きじゃなくて、音楽にはもっといろんな可能性や聴かれ方があっていいと思ってて。だから対極にあるような音楽を作ることで、現在の状況を緩和させたいなと。まいわいが世にでることで、誰かに多少なりとも影響を与えて、音楽全体の行き先が少しずつ静かな方に向かって欲しい。「BGM垂れ流し」みたいな文化自体を変えることはなかなか難しいと思うけど、音楽そのものの質を変えていくことはできる。こういう状況を変えるための音楽、挑戦する音楽という意味で、まいわいの音楽は「パンク」かもな〜って思ってる。

 日本におけるサウンドスケープ(音の風景)デザインの一つのやり方というか、僕は割と現実的なプランじゃないかなって思ってるんだけど。


2016年8月4日 新宿らんぶるにて 聞き手 市川水緒


まいわい「みずがうえから」

特設サイト
http://maiwai.wixsite.com/mizu


曲目
1. みずがうえから
2. かごめかごめ
3. かけら
4. いちねん

レーベル:mmnr( みみなり)
発売日:2016/10/31
品番:mmnr-005
仕様:変形紙ジャケット
JAN: 4582237835472
税抜:1111円

参加ミュージシャン

内田武留  パーカッション(ショピン・BURGER NUDS・あだち麗三郎クワルテッット)影山朋子  マリンバ・ヴィヴラフォン(森は生きている(ex)・ゑでぃまぁこん サポート)柴山真人  フィドル(Parallel Shells・ヒネモス)柴山祥子  木管フルート(Parallel Shells)戸井安代  クラリネット(畔)安永哲郎  エレクトロニクス(minamo)mangneng スティールパン(mangneng planet band/てぬぐいサポート) 


アニメーションPV「KAGOME KAGOME」監督・ネルノダイスキ
https://youtu.be/oXueYnx1QQo





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