【禍話リライト】つぎはぎの軽

 発端は、「シン・禍話 第二夜」(2021/03/20放送)の1:12:58~ごろの、「隙間女と窓女」についての雑談である。


 禍話のメインパーソナリティ・Fear飯の二人の大学の先輩に、ジィルさんという人が居る。
 事故物件に住んでおり、その家に出る女性の幽霊から好意のようなものを寄せられる、というかなり変わった体験をされている方で、禍話でも度々話題に上がる事がある。

 そんなジィルさんが、「隙間女と窓女」の終わり間際に、「こんなところに居られるか!」という趣旨のコメントを書き込み、他のリスナーが心配するという一幕があった。
 いったい何があったのか、かぁなっきさんは後日ジィルさんから話を聞いてみることにした。


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 その日、ジィルさんは夜のドライブに出かけ、とある道の駅の駐車場に停車して禍話を聞いていたという。
 駐車場はだだっ広く、時間も12時を回っており、停車しているのはジィルさんの車一台だけだった。

あのー、皆さんは「隙間女」ってどう思われますかって話なんですよ。

 ちょうど隙間女についての話が始まった時、一台の車が駐車場に入ってきて、そしてそのままジィルさんの車の左隣に停まった。
 他にいくらでも停める場所があるのに、わざわざ隣にぴったり付けて停めた理由がわからない。

(車内灯はついてないな……軽自動車か……)

 真横に停められては嫌でも注意が向いてしまう。ジィルさんは何度となくチラチラと左隣の車を見ていた。


 深夜過ぎの道の駅で施設も全て閉まっており、やっているのはトイレか自販機くらい。
 となればすぐに運転手か、あるいは同乗者が降りてきそうなものなのだが、全く人が降りる気配もない。
 何なんだろうといよいよ気になったジィルさんは、ようやく隣の軽自動車をはっきりと見た。


 隣に停まった軽自動車は、相当にボロボロだった。


 ここまで運転してきたのだから一応走れはするのだろうが、あちこちをぶつけてしまって車体がボコボコに凹んでおり、このまま車検に出したら一発でアウトだと確信できるほどの状態だったという。
 よくここまで来れたな、としげしげと軽自動車を見て更なる違和感に気が付いた。
 同じ車種の別の車から持ってきたのだろう、所々のパーツが本体の車体の色と違う。
 しかも、その別の車のパーツが、ダクトテープで無理やり止めてあるという状態だったそうだ。

(これじゃ車検どころか公道走ったら一発で警察に捕まるぞ……何だこの車……)

そう言うのが、まあ隙間女って話のパターンでございますね。

 放送では相変わらずかぁなっきさんの隙間女についての話が続いているが、ジィルさんは隣の異様な軽が気になって仕方がない。
 他の場所にも目線を動かすと、今度は軽自動車の後部座席が目に留まった。

 何か白いものがチラチラしている。
 なんだろうと目を凝らして見てみると、スーパーの白いビニール袋が、後部座席の至る所に、大量に吊り下げられていた。


 何だこの車!?


 そろそろ暗闇にも目が慣れてきて、車内の様子がぼんやりと見えてきたため、改めて運転席を見てみた。
 先ほど誰かがこの軽を運転してきたはずなのに、軽自動車の中には誰一人として姿が見えない。
 誰かが降りたのを見落とすほどの距離でもない。


へーって思ったのが、ミニコーナーみたいな感じで大量に情報が載ってるコーナーがあるんですけど。そこに「窓女」って載ってて。

 禍話の放送では隙間女の話から窓女の話に移っていたが、こっちはそれどころではない。

(誰も乗ってないように見えるけどこれは一体……)



 その時、ジィルさんが見つめる運転席の窓の下の方から。
 ズルズルズルズルっと、真っ白い女の顔が出てきた。
 顔は完全に正面、つまりジィルさんの車をとらえており、首だけが変に曲がっている。
 そんな真っ白な顔が窓に張り付いた。


 窓二つ挟んで、しかも夜の暗がりもあってはっきりとは言えないのだが。
 ジィルさんの目には、その女が濡れているように見えたという。
 その日は特に雨という訳でもなく、湿度が高かったという事もない。
 それなのに、女の額にベタっと髪が張り付いているように見えた。

 中年かそれよりちょっと上くらいの年齢の女性が、窓にびったりと顔を張り付けて。
 しかも、歯ぎしりをしながらこちらをじっと見つめている。

(うわっ……めっちゃキレてる…どうしよう…)


 女が今にもドアを開けてこっちの車に来そうだと思ったジィルさんは、思わずその場で身構えたが、雰囲気に反して女は降りては来なかった。
 ただひたすら無言で、真っ白い歯をむき出しにして、歯ぎしりをし続けていたそうだ。


 人間と言うのは、パニックになると意味不明な行動を取りがちである。
 さっさと車を発進させて逃げればいいものを、その時のジィルさんは何故かリクライニングシートを後ろに倒したそうだ。
 とにかく女の視線から逃れたかったのだという。


 …………

 隣の車からカサカサという音がする。
 それとともに、女の気配も後部座席に移動した。

(こいつ、俺の顔を見るために移動しやがった!?これはもうダメだ!!)

その窓女は、家のどこかに隠れて、家の住人を覗き続けると。そして三日後に、その家の人を殺してしまうそうです。

 まさにそのタイミングで、放送から窓女の話のオチが聞こえてきて、放送も怖いし隣の女も怖い!となったジィルさんは、ようやく車を発進させて、駐車場から逃げ出したそうだ。



出典
シン・禍話 第三夜 200怪記念回 19:29~

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