【禍話リライト】こわいコンビニ

 郊外のコンビニで店員やってた人から聞いた怖い話です。


 そのコンビニって言うのが、近くに心霊スポットになってるトンネルがあるんですって。それも、なんか住宅街の中にあって今はあんまり使われてないんだとか。そういうトンネルが近くにあるからか、夏場になると行った行ってない、場所が分からなかった、さっき行ったけど怖かった、そういう客がコンビニによく来るんだそうです。

 ただね、その辺りって結構入り組んでて、案内なしに辿り着こうとしても結構難しいらしいんですよ。大抵はもうちょっと新しい、心霊スポットでもなんでもない普通のトンネルに行っちゃうんだそうです。逆に、万が一本物の方に行っちゃうとヤバいらしくて…



クラクション/外の車外

 「いやー怖かったな」っていう二人組の客が、その時もやって来たそうです。

 丁度夜勤のバイトの時間で、コンビニ店員は自分一人だけって時だったそうです。このコンビニがあるのが田舎の方らしくて、夜はそんなに客来ないみたいなんですね。

 「びっくりしたなー」「雰囲気あったね」なんて二人が話してると、車のクラクションが突然すごい鳴り始めたんだそうです。それ聞いて客がすごいビックリしてて。

 つまり、自分たちが全員降りてしまって、中には誰も居ないはずだと。その間もクラクションが、中で子供が遊びで鳴らしてるくらいの勢いで、プププププーって鳴り続けてる。

 その客、大学生くらいだったらしいんですが、店員である体験者の人に向かって、

「どうしたらいいんでしょうか…」
「いや、どうもこうもと言われても……そこでイートインコーナーがあるから、そこで時間を潰されたらどうです?」

 家の場所を聞くと結構遠かったらしくて、タクシーを呼んでやるわけにもいかない。本当は夜の間は使っちゃダメだったらしいんですが、朝までイートインコーナー開放してあげたそうです。

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 それでね、そいつらがイートインコーナーでガタガタ震えてるのを横目に、外に停まってる車見てみたら、どう見ても運転席辺りで何かゴソゴソやってるのが見える。小型犬か小さな子供か、そのぐらいの大きさの何かが、左右に動きながら鍵をガチャガチャやってるんですって。

 それでも掃除だ何だと外でやる仕事もいくつかあるわけで、仕方なくコンビニの外に出たんだそうです。位置的に一番自分が車に近くなって、今この瞬間クラクション鳴ったら人生最悪やな、と思ってたら特に何も鳴らなくて。

 良かったーって安心して思わず車の方見たら、車の外で何か揺れてると。
 多分あれ、手を振られてたんじゃないかなって。
 そんなものはっきり見たくないわけで、大慌てでコンビニに戻って、客と一緒にイートインコーナーに籠ってたそうです。

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 この体験もまあまあ怖かったらしいんですけどね。まあ車と距離があったし、遠巻きだったし、手こそ振られたかもしれないけど直接来たわけじゃないし。だからそのコンビニで体験した怖い事ランキングでは2位らしいんですよ。


つかまれた話

 この人が体験した中で一番怖かった経験っていうのが、これもまた夜の一人勤務の時の話だそうで。

 クラクションの体験を思い出して、あんな経験二度とごめんだなと思ってる傍から車が停まって、何だ?って思ってたら女二人が男の人を介抱しながら店内に入ってきた。

「トイレ借ります~」

 男の方は「いいって!いいって」って、変に強がってるのか何なのか、そんな感じの事を言っていた見たいなんですが、結局トイレに入っておえ~とえずいてるんです。トイレの外で女の子たちが心配してるのを見て、最初は山道で車酔いでもしたのかと思ったそうなんですね。

 でもどうも違いそうだと。最初にトイレに駆け込む時に、男の人が車のキーをチャラチャラとさせてたのを見たので、多分男の方が運転してきたんだろう。自分で運転してて車酔いになるって、あまり聞かないじゃないですか。

 だからこれは何かすごいヤバい物を見てしまって、気が動転して吐いてるんだろうと。

「大丈夫かな」
「変なのを見たって言ってるし」

 ちょうど女の子たちも言ってて、あーこれは本物のトンネル行っちゃったパターンかと。それだけでもう嫌だったみたいなんですが、自分から話しかけて事情を聞くわけにもいかない。

 あとでトイレ掃除しなきゃなーってぼんやり考えてたら、女の子たちが「あっ」って急に声を出して。さっきまでトイレの方見てたのに、別の何かに注意を逸らされた時の「あっ」だなと思ってふっと女の子たち見たら、案の定外の方を見てる。釣られて外を見たら、そのコンビニって駐車場が広いらしいんですけど、その駐車場に道路から入るぐらいの所に、ポツンと女の人が立ってる。

 えっ誰?ってなって。

 この話ね、肝試しですから当然夏の話なんですよ。その女性がめっちゃ着込んでて、2月の真冬の時期?ってぐらい着込んでたそうで。

 余計えっ?ってなったそうで、思わずコンビニの外に出たそうです。何この人…と話しかけに行ったと。はっきり人だと思ったから、「あの~」って。


 彼曰く、「暑い暑い暑い暑い」と繰り返し言いながら服を脱ぎつつこっちに向かって走って来た。

 脱ぎながらなのでそんなに速くはなかったらしいんですけど、「はー暑い暑い暑い暑い」って言いながらこっちに来る。いやちょっとちょっと!?と慌てて店内に戻ったんですけど、コンビニですから当然入り口は自動ドアな訳で、閉められないんですよ。

 どうしようどうしようって慌ててたら、その女が急にふっと消えた。


 駐車場に隠れられる場所もないし、さっきまで脱ぎ捨ててた服もどこにもないし。嫌だーって思ってたら、ふっと気が付いたらトイレでさっきまでえずいてた声もしなくなってたと。

 さっきまでトイレの外で見守ってた女の子たちは、恐怖のあまりか入り口の方ずっと凝視してるんですけど、今はそんな場合でもない。ちょっとすいません、お連れさんは大丈夫ですか、とトイレの中に入ってみたら、どうやらえずき終わって一息ついてただけだったみたいです。

「大丈夫ですか」
「すみません、大丈夫です。胃液がこみ上げてきたんですけど何も吐けなくて。そこまで汚してないです」
「いえ、全然お気遣いいただかなくて大丈夫です。あの~……トンネル、行かれたんですか?」
「はい……古ぼけた所で…変なもの見た気がして…それからずっと気持ち悪くて…胃を掴まれたような変な感じになって…」
「ああ、そんなに細かく説明していただかなくても結構です!」

 これ以上変な話は聞きたくなかったそうなんで、適当に切り上げさせて。

「じゃあ、まあ、とりあえずゆっくりして頂いてね。イートインコーナー開けておきますんで。運転もされてるみたいですし。お連れさんも待ってるから」

 男性見るとすごい震えてるんですよ。トンネルの体験思い出してまた怖くなったのかなと。

「だからね、お連れさんが待ってるから」
「いや俺一人で来たんすよ」
「えっ」

 今なんて言ったこいつ!?ってなって。

「いや俺一人でトンネル行って、そこで変なもの見て、気持ち悪くなって、なんか胃を掴まれた感じになって、うわーって車に戻って運転し始めたらね、車の後ろに知らない女が二人乗ってたんすよ…」

 それ聞かされて流石にゾゾ~ってなったそうで。

「そいつらがさ、この辺にコンビニあるからって、そいつらの指示でここに来たんですけど…もう怖くて怖くてそれに従うしかなくて…それで店に入ったら急に『大丈夫~?』とか言って介抱し始めて…
 俺ね、名前言ってないんすよ。なのにいつどこで見たのか、俺の名前も知ってて。名前言いながら『大丈夫?大丈夫?』とか言ってて…
 そいつら、まだ外に居ますか?」

 そんな事聞かされたら流石に外出られなくなって、そのまま45分ぐらい男二人でトイレに籠ってたそうです。もう大丈夫だろうと外出たら誰も居なかったらしいんですけど。

 流石に何なんこの体験!?ってなったらしくて、後で出勤してきた店長に防犯カメラの映像確認させてもらったそうなんですよ。そしたら、カメラ上では男しか居なくて、自分も外に出て何もない所を見て、外からうわーって戻ってきて、何もない空間を、まるで誰か居るかのように手でかき分けてた姿が映ってたと。

 これがきっかけとなって、流石にこのコンビニのバイトは辞めたそうです。


*********


 でね、この聞いた話を別の知り合いにしたら、「そいつらがビビってたって事は、そいつらの知らないお化けが付いてきたんじゃない?まあ演技かもしれんけど」って。

 それはそれで怖いですよね、お化けの鉢合わせ。曰く、「狂人を見てる感覚だったんじゃないか」と。それはそれで嫌だし、お化け全員ぐるの演技だったってのも嫌ですけど。


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 一応ね、そのコンビニはもうないそうです。不自然な潰れ方してて、ほら田舎の方だとよくあるじゃないですか、なんかコンビニあったんだろうなって跡地。そんな感じで、ぱっと見で元コンビニなのは分かるけど、何で建物取り壊さないんだろうってなってて。

 そこを夜中通ると、時々人が立ってるらしいです。深夜だからそこ通る人は疲れてて大体頭回ってないんですね。
 「ああコンビニがまたできるからその作業してるんだな」「いやこんな時間に前準備はしないでしょ」「うわーお化けー」って逃げる。
 そういう話が、今も続いてるらしいですよ。



出典
元祖!禍話 第八夜 (一時間以降は雑談です) 41:03~

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