
ケープタウン・ナミブ砂漠旅⑦ナミブ砂漠ツアー2日目/後半の消化試合感
【今回の旅程/2024年9月】準備編はこちらを見てね!
Day1・2 KIX→(SIN→JNB)→CPT(ウォーターフロント観光)→WDH
Day3 ナミブ砂漠ツアー1日目/前半・後半
Day4 ナミブ砂漠ツアー2日目/前半・後半★
Day5 ナミブ砂漠ツアー3日目
Day6 WDH→CPT(ライオンズヘッド)
Day7 喜望峰ツアー
Day8 ヘルマナスくじらツアー
Day9・10 CPT→(JNB→SIN→)KIX
砂漠の自由時間
さて二日目のランチ後、17時までは再びの自由時間である。このツアー、やたら自由時間多いっすねという声が一部から漏れていたが、確かにその通りだ。キャンプサイトを拠点に砂丘などに出かけては戻るスタイルなので、基本的にアクティビティの時間外はただただキャンプサイトで時間を潰すことになる。となると、プールか母屋のパブぐらいしか過ごせる施設はないのである(砂漠の真ん中であることを考えるとそれも贅沢な話だが)。果敢にも仮にDさんがプールに行くというので、水がスーパー冷たいぞと警告しておいた。
私はといえば、昨晩のコールドシャワーにホトホト参ったので、今日は昼間のうちにシャワーを浴びることにした。夕方にキャニオンハイキングを控えているため、本当ならその後に浴びたいところが、もうあんな地獄の冷水シャワーはごめんだったのである。
それにしても手足の乾燥が甚だしい。かかとなどはもうヤスリにかけられたようにガサガサである。これから砂漠に行く人は、保湿クリーム必携でお願いしたい。年頃の女子はアイクリームもあった方がいい。シートマスクとの合わせ技で顔面回りはなんとか水分を保てるが、手足はもうとにかくこまめにクリームを塗るしかない。
こうしてテカテカベトベトにクリームを塗りたくってテント内でお昼寝をしようとしたところ、今日は風が強く、風通しのためのメッシュシート部分から容赦なく細かい砂が入ってくるのである。そしてクリームまみれのテカテカボディに砂が張り付き、瞬く間にザラザラになっていく。なんたる。
たまらずカバーを下ろすと、テント内は一瞬で蒸し暑くなり(バカでもわかる)、とても昼寝なんかしていられない。うへえ、とかなんとか変な声が出たところで観念してテントを出た。
昼寝がダメなら読書だ。大きな木の枝が落とす日陰で、暇つぶし用に持参していた『百年の孤独』を開くが、なんといっても海外文学である。
あれ?これ誰やったっけ…⇒冒頭に戻る⇒わかったふりして戻る⇒あれ?のループに陥り物語が頭に入ってこない。こんなときはいつも、シドニィ・シェルダン本はカバーの折り返りに登場人物の紹介が書かれており親切設計であったな、海外作品はみんなマネすべきではないか、などと思う。
ところで流行りに乗って買ったこの百年の孤独、文庫本のくせにレジで請求された金額が1500円弱もして腰が抜けるほどたまげたことも記しておきたい。
つながる時代
しかし暑いのである。確かに木陰はいくらか涼しいが、暑いもんは暑い。さらに、とにかく風がすげえのである。砂漠の木陰で静かに読書する私、という自分酔いシチュエーションの効果も30分ほどで限界に達して百年の孤独もへったくれもなくなり、リフレッシュメントを求めて母屋へコーラを買いに行くこととした。
母屋に入るとツアーメイトの何人かがいるのに気づいたのだが、みな私がやってきたことには気づかない。なぜならスマホの画面を見つめているからだ。そう、ここではwi-fiが飛んでおり、みながスマホに夢中なのである。なんと現代的な光景であろうか。
とりわけ真剣な顔でスマホを見つめているCさんに声をかけてみたところ「会社からのメールに返信しないと…でも速度がめっちゃ遅くて全然送れない…」と悲壮なお答えであった。つくづく恐ろしい時代である。
日本の企業戦士の悲しみを横目に、私といえば犬を預かってくれている母に様子尋ねのメッセージを送ったが返事はなく、コーラを飲んですぐにテントに戻った。
そういえば何人かのツアーメイトはナミビアで使えるSIMカードを入れたとかで車の中でもスマホをいじっておられたし、現にその方たちは母屋にわざわざ行かずにテントサイトで過ごしておられたのはそういうことか、と合点がいった次第である。
なお、私のスマホは格安と名高い楽天モバイルなのであるが、楽天モバイルは地味にすごい。なんと設定だけしておけば、海外についたら勝手に現地の通信会社の電波と繋がってくれて、そのまま利用できるのだ(国による)。おかげで南アフリカでは小難しい設定やSIMの入れ替えなどすることなくUberが利用でき助かった。一方ナミビアはサービス対象外のためwi-fiを拾わない限りネット圏外の身である。私自身は死んでも休暇中に会社からのメールなんぞ開かないタイプなので、特に不便は感じない。
動物が来た!
そんなこんなでブラブラと砂漠の午後の時間帯を持て余していたときに事件は起きたのである。
再び木陰で百年の孤独と格闘していると、Aさんが興奮した様子で「はらいたたさん!きてる!そこ!早く!」などと叫んで私を手招きしているではないか。何を言っておるのだいったい、と視線を移すと、なんとテントサイトのすぐ横で野良オリックスがウロウロしていたのである。

わわわ、近い!でかい!角がすごい!
もう一同大興奮である。写真では遠く感じるが、ほんの数メートル先、鼻息が聞こえそうな距離である。
みんなでスマホを向けてひとしきり撮影したのち、これ以上近づいたらヤられる…しかし気になる…というギリギリのラインで、Aさん、大学生ちゃん、Bさんが横一列に並んでポカーンとオリックスを見つめているのもかわいかった。

なお、Bさん(写真奥の紳士)は初登場時以来いつでもYシャツ姿である。
今日も海外現地視察中のサラリーマンにしか見えませんねぇ、とCさんと一緒にファッションチェックをしていたところ、Bさんはニコニコしながら「私どこでもこの格好ですから!アマゾンにもこれと革靴で行きました!」とまんざらでもなさそうである。さすがにアマゾンに革靴は成田で気づいてシマッタ、と思ったそうだが、どうしようもないのでそのまま強行したらしい。柔軟性があるのかないのか。
しかしこのBさん、中身はたいそうなイケメンである。砂丘で姿の見えない大学生を探しに行ったのもそうだし、昨晩の食器洗い時には、洗い終わった食器を他人の分までキッチリと並べるBさんに対して几帳面ですねぇと声をかけた私に対し、「几帳面っていうか…あとの人が置きやすいかなと思って」などと述べるのである。またもや人としてのレベルの違いを突きつけられた瞬間であった。
キャニオンハイキング
2日目の午後イベントは、キャニオン見学である。ジョニー氏によると、アメリカのグランドキャニオンに次いで世界で二番目に大きなキャニオンはナミビアにあるらしい。今から行くのはその世界ナンバー2とは全く関係ないキャニオンなので、なぜその話が出たのかは不明であるが、ナミビアはキャニオン大国であるぞということを言いたかったのかもしれない。

岩場の上り下りなどもあり、想像していたより数倍の大変な思いをしたが、アドベンチャー感もあり、まぁまぁ楽しかった。
乾季でも干上がらぬ水場にナマズの姿が見えたり、乾季に干上がるのに雨季に水がたまった際にはどこからか魚が来る不思議の水たまりがあったりと、確かにまぁまぁ楽しかった。
なお、切り立つ崖の間を進む時にはみな口々に「ペトラ遺跡みたいだ!」「ペトラ思い出す」などと言い出したので、おそらくこのツアーメンバーのペトラ率は8割近いと思われる。

まぁまぁの楽しさのこのキャニオンであるが、正直、ツアー日程を3日間にするためのつなぎにしか感じられないのである。
というのもやはり砂丘アクティビティに比べると、パンチに欠けると言わざるを得ないのだ。ナミブ砂漠のメインの見どころは今日の昼まででおわってしまっている上に、明日はもう首都ウィントフックに帰るだけなので、みなが口々に「このキャニオン飛ばしてデッドフレイのあと帰れば一泊二日でいけた」「二泊三日いらん」などと言い出す始末であった。こんなに求められないキャニオンが少しかわいそうに感じたものの、一泊でよかったという点は同感である。
動物が来た!②

本日は中秋の名月である。
夕食はカレー風味のシチューライスであったが、食器が深皿ではなくプレートだったため、アツアツなはずのシチューが一瞬で冷めたのには少し悲しい思いをした。味はおいしかった。
この日の夜は、Bさん、Cさん、Dさんと私の4人で満月の下、そこそこ遅くまで話がはずみ楽しい時間を過ごした。とくにBさん・DさんおふたりがSEということで、業界こぼれ話をたくさん聞けて盛り上がったのである。
そんなとき、Cさんが急に私の背後を見つめ「なんかいる!なんかいる!なんか…なんか…いる!」と語彙力3%で叫びだしたのである。その壊れっぷりに若干引きつつ、Cさんの見つめる先に視線を移したところ、真っ黒な何かがテントサイトの横を移動しているところであった。
まさに「なんか」としか言いようがないほどの得体のしれない「なんか」である。ボリュームのあるボロキレを被ったような黒い物体で、かろうじて四つ足の動物であるなあということしかわからないのだ。首が長く、とても奇妙なフォルムであった。
謎生物はあんぐりと口を開けたまぬけな人間どもなぞまったく気にかける様子もなく、テッテッテッと去っていった。私以外のどなたか(たぶんDさん)が正気を取り戻して謎生物を写真におさめていたらしく、翌朝ジョニー氏に事の顛末を伝えたところでは、ハイエナとのことであったらしい。しかしハイエナを画像検索してもあの夜見た奇妙さに一致しない気がして、ますます謎なのである。
みんなでひとしきり先ほどの遭遇体験について盛り上がったのはもちろんであるが、興奮も落ち着きふたたびどうでもいい話に興じていると、今度はジャッカルがウロウロやってきたのだが、その時には「あれはジャッカルだね」「犬みたい」などと言い合う若干の余裕が生まれていた。
私たちの感覚からすると、人間が活動しているすぐとなりに野生動物がやってくるというのは大変な経験である。しかし、この辺りの野生動物にとっては、我ら人間もただのひ弱な動物なのだろうから、何も不思議なことではないのかもしれない。
動物の足跡はテント周りにたくさんあったし、シカのフンみたいなコロコロ丸いのもたっぷり転がっていたのだから遭遇は時間の問題だったわけだが、きのうは全然見かけなかったのだ。わりに今日は出現が激しい。
ナミブ砂漠でこれだけ野生動物に遭遇するとは思っていなかったので、うれしい驚きを感じつつ、良夜は更けていったのである。