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アップサイクル『roop award』 ①
この度、AnotherADdress(reADdress)様主催の『roop award』に参加させていただきました。
本アワードは、サブスクの利用によって傷がついた商品や、着なくなった衣類などの回収品をアップサイクルし、新たな洋服として提案する取り組みです。
今回は、「サブスク商品:回収品=7:3」の割合で取り入れさせていただきました。
アワード自体に明確なコンセプトがある中で、さらなるコンセプトを掲げるにあたり、それはつまり言い換えると「他者との対話」を意味するのではないかと思い、以下のように提案しました。
- Voice -
3つの「声(Voice)」を紡ぐデザインを提案します。
「環境の嘆きに耳を澄ます」
環境課題への取り組みをプロジェクトの中心に置き、自然の声に耳を傾けます。「洋服との思い出に耳を寄せる」
服と人の間に刻まれた見えない「思い出」を尊重し、本来の形をできる限り活かして制作します。「時代の流れに耳を傾ける」
時代や性別を超えて、服を長く大切に着る知恵を再解釈します。例えば、袖口交換可能なピーコートや、サイズ調整可能な着物、働くデニムのリペア、幼少期のワッペンなど、歴史に散りばめられた物を長く使う工夫を取り入れました。
これらの価値観を基に、藍染、水洗い、刺繍(ハンド&マシーン)、パッチワークなどの技術を用い、新たなデザインに仕上げました。
ここに、各製品の詳細を記録していきます。
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【藍染&手刺繍の着物羽織】
「roop」という要素には、循環するという意味だけでなく、「守り続けること」という側面も感じられます。
そこで「持続」を「伝統」と捉え、和装と藍染に着目したデザインを一つのアイデアとして提案しました。
和装には多くの伝統的なルールがありますが、今回はアップサイクルと新しい解釈を通じて、楽しんでいただける形を目指しています。
もともと長襦袢だったものを一度解体し、生地に戻して藍染を施しました。
藍染は藍の栽培から蒅(すくも)づくり、染めまで一貫して行い、伝統技法「天然灰汁発酵建て」を用いる藍屋テロワールさん( @aiya.terroir )に染めていただきました。
その後、羽織に仕立て直し、コデマリやポピー、アネモネのような花を表現した手刺繍を施しました。
ビンテージドレスのような繊細な刺繍と、藍染の法被をドレスアップしたイメージを融合させた羽織です。
裄丈の相性はありますが、男女を問わず、和装・洋装のどちらにも合わせてお楽しみいただけるかと思います。
また、前紐には男性用の紐とリボン(写真のもの)の2種類を用意し、性別を問わず使いやすい仕様にしました。
伝統の世界に触れながら、新しい提案を楽しんでいただければ幸いです。
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【トリプルコンビドットドレス】
3つのアイテムを組み合わせて作られたワンピース。
ドット柄とプリーツを取り入れ、ボリューム感のあるデザインに仕上げました。
甘くなりがちなドット柄とボリューム感に対して、プリーツ加工が取れかけてしまったスカートをあえてギャザーフリルとして部分遣いに使用することで、全体的な甘さを抑えシャープな印象を与えています。
脇部分には、裏地を取り除いたシフォンプリーツスカートがウエストベルト丸ごと組み込まれています。
肩紐はリボンで結ぶデザインで、位置は自由に調整可能です。
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【ドッキングジャケットデニム】
対極の調和が環境問題にも重要ではないかと思います。
ベストジャケットとワイドサイズデニムを組み合わせて構築したワンピース。
現在では馴染みのあるスタイルですが、デニムは作業着として生まれ、ベストは貴族文化に由来するなど、起源は全く異なる背景を持っています。それが時を経て融合し、魅力的なコーディネートとして昇華されました。
レディースサイズのベストとワイドサイズだったデニムパンツ。
サイズ感のギャップも対極なものをあえて選び組み合わせています。
たとえば、デニムパンツのファスナー部分が生む無骨さや、スーツジレの裾が描くエレガントなラインなど、それぞれの個性や特性を引き立てる構成に仕立てています。
また、ウエスト部分にはほどよいゆとりを持たせているため、ベルトでウエストマークを加えると、さらに引き締まった印象を演出できます。
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【トリプルコンビコート】
3種類の異なるアウターを組み合わせて作られたユニークなコートです。
各アウターの特徴的なディテールをそのまま活かし、パーツをはめ込むようにしてデザインしました。元々のディテールを平らな生地に戻すのではなく、一つのテキスタイルとしてそのまま取り入れています。
また、アームホール部分を活用した独特のフォルムも魅力です。
仕上げにはウォッシュ加工を施し、ナチュラルで柔らかな雰囲気に仕立てました。
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【花(機械刺繍)&レースの着物羽織】
道中着(和装)
「roop」という言葉には、循環するという意味だけでなく、「守り続けること」という側面も感じられます。
そこで「持続」を「伝統」と捉え、和装と藍染に着目したデザインを提案しました。
和装には多くの伝統的なルールがありますが、今回はアップサイクルと新しい解釈を通じて、より自由に楽しんでいただける形を目指しています。
元々は夏着物だったアイテムを道中着に仕立て直し、張りのあるリネン生地に少し柔らかさを加えるためにレースを配置しました。
また、桜の花のモチーフを散りばめることで、全体に繊細な表情を加えています。
この刺繍は、桐生の刺繍屋さんでブライト糸とマット糸を組み合わせて色違いで制作されたもので、機械刺繍により丁寧に仕上げられています。
裄丈の相性はありますが、和装・洋装どちらにも合わせて楽しめるデザインです。
また、道中着の形を基調にしつつ、本来の紐部分を大ぶりのリボンにアレンジし、伝統と新しさを融合させています。
伝統に触れながら、新しい提案を感じていただければ幸いです。
2枚目の写真はモチーフの位置を確認しながら取り付けている様子です。
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【ドッキング花手刺繍ワンピース&リボンスカート】
ロングカットソーワンピースとブラックデニムパンツを組み合わせたドッキングワンピース。
ヴィンテージドレスを思わせる繊細な手刺繍を施しました。
カットソーワンピースの下部分は、別のアイテムとしてベルベットリボンをあしらい、ウォッシュをかけたスカートに仕立てました。
どことなくグランジのような雰囲気も醸し出しています。
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【ティアードブラウス】
元々はワンピース丈のアイテムでしたが、脇のポケットを活かし、ボリュームのあるティアードブラウスに仕立てました。
大切に着続けるという基本的な原点を大切にし、手を加えることは最小限に抑え、キズの部分だけを取り除いて、敢えて元の形をほとんど変えずに仕上げています。
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【ビジューベスト】
ジャケットをベストにしました。
脇は完全に開いた状態で、元々付いていた袖はウエストリボンのようにアレンジされています。
このデザインにより、ある程度のサイズ調整が可能で、さまざまなアレンジをお楽しみいただけます。
身頃の前後には、星空のようにビジューが散りばめられ、華やかさを演出しています。
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【グレンチェックジャケット】
もともとはメンズの背広を、変形フォルムのジャケットにしました。
デザインのポイントとして、まず毛芯付きの状態で丸ごとウォッシュをかけて、ファスナーの重さを考慮し、チケットポケットのみを残して削りました。また、前身頃はシェイプし、フラップポケットの内側にホースヘアを仕込むことで、フォルムが少し立つように仕立てています。
ファスナーは飾りではなく開閉が可能です。ポケットとしての機能はありませんが、ウエストのシェイプ具合をファスナーの開閉でアレンジできる仕様になっています。
さらに、袖口には手刺繍の花が溢れるように施され、カラークロスには竹ビーズをあしらっています。
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【キルティングコンビ手刺繍ジャケット】
脇には蓄熱生地を使用したキルティングを差し込みました。これにより、大きめ袖のインナーにも合わせやすく、袖周りを広げることで着用の自由度を高めています。
背面には髪の毛が引っかかりにくく、また隠れにくい位置を考慮し、フォルムに沿うように後ろから前に包み込むようなデザインで手刺繍を施しました。
近年、ビンテージ(古着)が再び注目を集めています。その「良さ」のひとつに、「儚さ」があると感じています。繊細な手仕事を取り入れることで、その儚さやイメージを感じていただければ幸いです。